イベントレポート

カメラが子供の憧れだったあの頃…「カメラのおもちゃ展 in 東京」

懐かしくて面白い、これぞ本物の“トイカメラ”を紹介

吉川直哉さん

「カメラのおもちゃ展 in 東京」が9月18日〜9月29日に、コミュニケーションギャラリーふげん社で開催された。

これは教育者であり、写真家もである吉川直哉さんが20年にわたって収集した「カメラのおもちゃ」約130台を展示するという一風変わった展覧会だ。

“一風変わった”というのも、写真が撮れるカメラの展覧会はしばしば催されるが、ここに展示されたものは実際には写真を撮れない「カメラ」達。こうしたおもちゃのカメラを間近で見られるそう無い機会だ。

というわけで、最終日に行われた吉川さんのトークショーの内容も含めた展示の一部を紹介する。ちなみに今回の展示は2回目。第1回目は7月に大阪で行われたのだが、その展示が好評を博したため東京での展示が実現した。

トークショーの様子

本物のカメラにはさほど興味は無いが……

吉川さんは1961年奈良県の生まれで、現在は大阪在住。大阪芸術大学写真学科を卒業後、各国の芸術祭やフォトフェスティバルで個展を開催。自らを「国際交流病」というほどの国際派だ。今は大阪芸術大学 大学院の客員教授を務めている。

吉川さんは実際のカメラ自体にはあまり興味が無く、「自分の作品を作るのに適していればそれでいい」とのこと。最新のカメラについては詳しい学生に聞くほどだが、そんな吉川さんがおもちゃのカメラに興味を持ったのは「笑えるところがあって面白い。カメラというものの違う見方もあっていい」と思ったからだそう。なんとも教育者らしい発想だ。

会場に集められた約130台のカメラのおもちゃは、コレクションのほぼ全て。その多くが国際交流で知り合った各国の人(日本も含む)からの贈りものとのこと。コレクションを公言していると、様々なところからカメラのおもちゃが集まるようになった。コレクションが10台を超えた頃から本格的に収集を始めたそうだ。

定番はファインダーに写真や絵が出るタイプ

20年ほど前、一番最初に手にしたのがこの赤いモデル。ファインダーを覗きシャッターボタンを押すと、ファインダーの中にクジャクやウサギなど動物の写真が表示される。最後に皿にのったカニが出てくるのを見て「面白い」と思ったのがコレクションのきっかけだった。

観光地で売られているものは子供向けがほとんど。昔は、カメラに子供は触るべからずといった存在だったが、それでもカメラを触りたい子供の夢のため、こうしたおもちゃができたそうだ。

展示も、シャッターボタンを押すとファインダーに次々に写真(絵)が表示されるものが多かった。動物図鑑にありそうな動物のイラストや観光地の写真、アニメのキャラクターなど図柄は様々だ。

実際のカメラよりも覗き口が小さいものが多く暗い上に、接眼レンズもチープなようで、さほど鮮明ではない。やはり本物のカメラのファインダーとはまったく違うが、雰囲気としてはよくできていると思った。

フランスのおもちゃ。作られたのは現代だが、1950年代のフランスの景色が表示される。

伊勢志摩と石垣島という別々の場所で売られていたものだが、実は同じおもちゃだった。こうした発見も収集家ならでは。

アニメなどのキャラクターの絵が表示されるタイプも多い。

マクドナルドのおもちゃ。これも絵が表示される。

ファミリーレストランで購入したもの。シャッターボタンを押すと音も出る。「5.5テラピクセル」とある。

実際にスライドを入れて写真が見られるタイプ。

カメラのおもちゃは小型のものが多いが、実際のカメラに近いサイズのものも。

子供の集まりなどで配布するためにまとまった数で売られているおもちゃ。

これらはカメラ型の水鉄砲。レンズの部分から水が出てくる。

小さな子供向けはギミック付き

乳幼児向けにもカメラ型のおもちゃがある。

ポラロイドカメラのようなおもちゃ。シャッターボタンを押すとイラストの板が出てくる仕組み。

こちらは鉛筆削りだが、シャッターボタンを押すとキャラクターが出てくる。

カプセルトイやキーホルダーなど大人向けも意外と多い

カメラのおもちゃといえばカプセルトイも最近ではよく知られている。

「カメラで撮る人」の模型。

ペーパークラフトも。

カメラをモチーフにしたアクセサリーやキーホルダーもコレクションしている。

カメラ型のライター。

100円ショップのマグネット。モチーフはクラシックカメラの「マーキュリー」だろうか?

写真などをとめておくクリップ。

動くところの無い置物。インテリア用はジャバラ型が人気のようだ。

実在するメーカーのロゴが付いたカメラ型USBメモリー。αなのかEOSなのか……。

こちらは「キャノンふう」のUSBメモリー(キヤノンの正式な表記は「ヤ」が大きい)。

キヤノンのロゴをそのまま使っているようなものまである。

こちらのα900型USBメモリーはアドビのノベルティ。

こんな形のデジカメ、ありましたよね?

Leicaではなく「Leico」と書いてある小さな置物。

これもライカ風のロゴをあしらったおもちゃ。

オリオンの「食べルンですHi」は、現在も売られているロングセラーのラムネ菓子。

実際のカメラが変わればカメラのおもちゃも変わる。これはミラーレスカメラをモデルにした“薄型”のタイプ。うしろに写真が入れられる。

ゼンマイ仕掛けで動くタイプ。

これはカメラのおもちゃではないが、観光地の写真を立体視できるお土産。覗いてみたが、なかなかリアルに見えた。

カメラ型のペンケース。レンズの部分が小物入れになっている。

古着屋さんで購入したというカメラ型のポーチ。おそらく手作りとのこと。

元ネタを探すのも面白い

カメラのおもちゃといっても実に様々なものがあり、これだけ眺めても飽きることがなかった。自分が知っているものもいくつかあったが、ほとんどは初めて見るものだった。

吉川さんも話していたが、カメラのおもちゃを見るうえで「元ネタ」を探すのはカメラ愛好家にとって楽しいことだろう。「よく作ったな」とか「これはないだろう(笑)」などと思いを馳せるのも一興である。

吉川さんは今後も機会があれば、海外を含めてこうした展示を行っていきたいとのことだった。今回見逃した人もぜひ次の機会があれば、ぜひ見て欲しい展示だと感じた。吉川さんの今後のコレクションの発展も楽しみだ。

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。