イベントレポート

【CP+】山岸伸さんトークイベント「Surface Book 2活用デモ」レポート

マイクロソフトブースより

右から写真家・山岸伸さん、モデルの秦瑞穂さん。

CP+2018の最終日、3月4日の締めに見学したのは、ポートレート写真の大ベテラン、山岸伸さんのステージだ。ブースにはあふれんばかりの人が押し寄せていた。

殺到する観覧者を見て、山岸さんのサービス精神が発揮された。モデルの秦瑞穂さんにマイクを渡し、即興で来場者参加の質問コーナーがスタート。「人気アニメのトレーディングカードゲームのルール改定についてどう思いますか?」という、相手が秦さんならではの? ディープな質問でステージがスタートした。

メインの話題はもちろんカードゲームではなく、山岸伸さんの撮影&レタッチのデモンストレーションだ。デモで使用されたSurface Book 2は、ノートPCの形をしているものの、画面とキーボードを切り離してタブレットとして使うこともできるのが特徴。タッチ操作も可能だ。山岸さんはこのSurface Book 2を3台持っているという。

司会を務めたのは、月刊誌「デジタルマガジン」の福島晃編集長。

福島編集長:Surface Book 2を使う理由はなんでしょう。

山岸さん:ひとつはスピードですね。カメラと直接つないでPCに転送するテザー撮影で使っています。Surface Book 2の画面をモデル側に向けて置き、接続したカメラで撮影する。すると画面にすぐ写真が表示されて、どんな風に撮っているか、モデルと共有できるんです。

会場でも撮影した写真がすぐさまモニターに表示されていた。

テザーによるスタジオ撮影中はもちろん、レタッチにもSurface Book 2は活躍しているという。

山岸さん:モデルの肌に傷がある場合は、メイクさんがファンデーションを塗ってカバーしてます。でも写真を撮ってしまうと、これがやっぱり気になってしまうんです。ファンデーションの色が合わないこともあります。そうなるともう、レタッチするしかないですね。

会場ではアシスタントの佐藤さんがレタッチを施していき、傷が消える様がみられた。特筆すべきは、タッチペンを使っていたことだろう。修正したい箇所をペンで触り、レタッチ作業ができる。Surface Book 2の直感的な操作はこういった修復作業にはもってこいだ。

次に話題になったのは、2017年6月13日から7月18日にかけて開催された山岸さんの写真展「KAO'S2」について。

KAO'S2は、写真集「KAO’S」を現在の技術でリバイバルさせた展示だった。

約25年前、米米CLUBの石井竜也さんがジェームス小野田さんの顔に作品をペイントし、それを山岸さんが大判フィルムカメラで撮影。さらにその写真を日本に2台しかなかったスーパーコンピューターを使い、石井さんがタッチペンによる加工を施して生まれた写真集が「KAO’S」だ。

KAO'S 2では、いまのPCやインクジェットプリンタを駆使して制作。KAO'Sの未発表作品も含まれており、この展示は好評をもって迎えられた。あまりの人気に、会期が約2週間延長されたほどだ。

山岸さん:今から35年くらい前、米米CLUBがデビューしたとき撮影した写真です。(KAO'Sでは使用されず)未発表のままスーパーコンピューターに保存していました。当時50枚くらい撮った中の1枚で、そのデータをSurface Book 2に入れてレタッチし直したのがこのパネルの写真です。

とても30年以上前の写真とは思えない鮮やかさと解像度だった。

山岸さん:データの復元には苦労しましたけど、35年前のフィルムカメラの写真でも、ここまで綺麗にレタッチできるんですよ。

トークイベントでは、このときのレタッチと同じ工程を前方のモニター上で再現していた。やはりペンを使った作業となり、顔に施されたパターンをコピーして取り込み、周囲に広げていく。

これが元の写真。
顔に施されたパターンを周囲にレイアウトしていく。作業は全てタッチペンだ。

かつてスーパーコンピューターで行なっていたタッチペンによる作業が、いまは個人所有のノートPCでできるようになったわけだ。

山岸さん:(今の写真家は)パソコンがないと本当に生きていけないですね。カメラマンになるなら、カメラよりも良いパソコンを選ばないとだめです(笑) レタッチしてない人はいま誰もいないですよ。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。