イベントレポート
「写真甲子園2017」本戦レポート
優勝校の作品24点を撮影データ付きで掲載
2017年8月3日 08:38
「写真甲子園2017」(第24回全国高等学校写真選手権大会)の本戦が7月25日~7月28日に開催された。ここではその模様をお伝えする。
写真甲子園は、主に高校写真部が写真の腕を競う全国大会で、今回は526校の応募があった。その中から予選を勝ち抜いた18校が1校3名1組で写真の腕を競う。競技となる撮影は、北海道東川町および近隣で行われる。主催は写真甲子園実行委員会。
既報の通り、優勝は和歌山県立神島高等学校(近畿ブロック代表)、準優勝は北海道岩見沢高等養護学校(北海道ブロック代表)だった。
EOS 9000Dで「心・技・眼」を競う
写真甲子園の撮影は、各校が公平になるよう、決められた機材での撮影となる。機材は特別協賛のキヤノン/キヤノンマーケティングジャパンが用意し、今回のカメラはEOS 9000Dだった。その他下記のレンズやストロボを使うことができる。
- EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM
- EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM
- EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM
- EF-S60mm F2.8 Macro USM
- EF50mm F1.8 STM
- スピードライト430EX II
撮影は3日間に分けて行われ、各日とも「撮影」→「セレクト会議」→「公開審査会」という流れを繰り返す。撮影場所は前日の夜に発表されるため、選手にとっては“ぶっつけ本番”ということになる。
また監督(顧問の先生)は選手に同行するが、撮影中に選手のカメラに触れたり、撮影画像を確認したりすることは禁止されている。また監督がモデルに指示を出すなど、撮影に参加することもできないルールだ。
公開審査会に提出する作品は、8枚からなる組み写真。審査のポイントは「心・技・眼」の3つ。心はテーマ性や着想力、技は技術力や構成力、眼は表現力や独創力で、審査員がこれらを点数化して順位を決める。
撮影初日:テーマ「自然」
撮影日毎にテーマが決められ、選手はそれに沿って撮影を行う。撮影の初日となった7月26日のテーマは「自然」。撮影場所は風景写真の撮影スポットとして知られる「美瑛・白金温泉」と「上富良野町」。
美瑛・白金温泉では白ひげの滝近くの橋の上や、青い池の周辺で撮影が行われた。この辺りは木々が生い茂るエリアで、自然というテーマにはうってつけの場所だ。
1つのエリアが終わると記録メディアが回収される。回収の締め切り時間に遅れると1分ごとに減点される。
続いて選手は上富良野町にバスで移動。収穫が終わった麦畑の丘が広がる場所で、牧草ロールが点在していた。こちらも風景写真でよく目にする場所だ。
選手らは農家の人に許可を得て畑近くの農道からシャッターを切り、夏の北海道の象徴的な光景をカメラに収めていた。
撮影終了後は、各チームともセレクト会議で作品となる8枚を選択。その後、公開審査会に臨んだ。
公開審査会では、5人の審査委員に加えて審査委員長の立木義浩さんから講評を受ける。選手は最初にプレゼンを行い作品の狙いなどを説明。審査委員からも質問が投げかけられ、こうしたやり取りを経て点数が決定する。
撮影2日目:テーマ「くらし」
2日目はまず、「東神楽町・忠栄地区周辺」(上川郡)に移動。水田や畑が広がるエリアで、農家が点在している。選手らは農作業をしている人に声をかけて撮影したり倉庫の農機具などにカメラを向けていた。
続いての撮影地は「旭川市・北彩都あさひかわ」。これまでののどかな場所とはうって変わって、JR旭川駅周辺の繁華街が舞台となった。選手らは戸惑いながらも、街の人に声をかけたり商店に入るなどして撮影を続けた。
撮影最終日:テーマ「ひと」
最終日は「東川町・キトウシ」の1エリアでの撮影となった。1エリアといっても撮影できる場所は広大。田畑のある場所から商店街のような場所まであり、時間も限られていることから、どの場所で撮るのかも作品作りの上でポイントになったようだ。
比較的撮影がしやすかったのか、豆腐店やうどん店といった商店で撮影したチームも少なくなかった。
この日行われた最後の公開審査会の結果を踏まえて、優勝校が決定した。
同日の閉会式で立木さんは、「写真とは、現在を写しているつもりでも、撮った瞬間から過去になるもの。それをプリントにすると新しい現実として現れてくる。これが、他のジャンルにはない表現方法。それを噛みしめてやっているうちに、『わるくないね』ということがわかってくると思う。卒業しても写真をやめないで続けると、きっといいことがあるでしょう」と締めくくった。
キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役会長の村瀬治男さんは、「皆さんの作品を見ていると、本当によく工夫をして撮影して選んでいると感心した。写真を撮ることだけではなく、こういう場を通じての交流がとても大事と思う。この交流を続けていきながら、また審査員の話を思い出しながら発展させていくことが写真を続けていくことの要になる」と結んだ。
優勝校には副賞として、EOS 7D Mark IIとPIXUS PRO-10Sが贈られた。
優勝した神島高校の作品を振り返る
初日の作品:「育む」
ボケや逆光を活かしたり、広角で人物を煽って撮るなど、写真の基本テクニックを効果的に取り入れていた。また、初日の作品で人物の顔をアップで捉えたのは同校が唯一で、審査委員から好意的な意見があった。
2日目の作品:「Station」
初日のカラーから一転、モノクロに。「みんなが行かないところ」を選び、JR旭川駅で時間いっぱいの2時間粘って撮影した。審査委員からは構成力の高さなどが評価された。
また立木さんは「これを2時間で撮ったのは、天才に近いものがある」と話し、特に1枚目の列車の窓の作品について「ギリギリで顔を切る絶妙な構図が面白い」と絶賛した。
最終日の作品:「やさしい時間」
最後もモノクロで挑戦。いくつかの家庭を訪問して撮影したという。立木さんは「2日目のほうが数段良かった」としたものの、「こうして人を撮るのは写真甲子園だからできること。大勢の人に出会って素敵な写真を撮ったことは素晴らしい。よくやった」と評した。
◇ ◇
ところで、2016年から制作が行われている本大会を題材にした映画「写真甲子園 0.5秒の夏」が11月にいよいよ公開される。
監督は「ぼくらの七日間戦争」などを手がけた菅原浩志さん。主題歌は大黒摩季さんの書き下ろし楽曲となっている。
審査委員役として立木義浩さん本人も出演。その様子は実際の公開審査会さながらだ。映画の「写真甲子園」もぜひチェックしたい。
制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社