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薈田純一写真展「新・小説のふるさと」

(オリンパスギャラリー東京)

©薈田 純一

「新・小説のふるさと」は、平成以降のすぐれた文学作品ゆかりの地を訪ね歩いたものです。

読書や書棚についてのエッセイで著名なアン・ファディマンは、作品中の現場で読む小説のだいご味を教えてくれますが、作品に描かれた場所を撮ることも楽しいものです。"あの場面の舞台はまさしくこの場所だ"と感激する一方、想像を裏切る光景から小説の新たな魅力に気づかされたりもします。

たとえば川上弘美さんの「センセイの鞄」に出てくる干潟のイメージは、私にはどこか閑散とした海岸ぐらいのものでしかなかったのですが、撮影に訪れた盤洲干潟で潮の匂いや海水のにじみ出る逆光の中での砂のうねりが、より豊かに小説のシーンを味わせてくれたものです。

とはいえ、私の写真は"作品と全然違う"と思われる方もいらっしゃるかもしれません。が、そこはご堪忍いただいて、小説の多様な広がりの一つだと思ってください。逆にもし、まだ読まれていない小説が取り上げられていましたら、写真から自由に作品を想像してみてください。書影の写真とあいまって、あとでその本を手に取られた時、期待はますますふくらむに違いありません。

タイトルの「新・小説のふるさと」は、かつて『婦人公論』に「小説のふるさと」を連載された林忠彦先生へのオマージュによるものです。そんな「新・小説のふるさと」もまた、現在『中央公論』に不定期連載中です。

出展作品数:カラー 約50点

(写真展情報より)

 太田和徳氏(中央公論新社編集部)、池田禎子氏(中央公論新社編集部)、薈田純一氏(写真家)によるギャラリートークを3月2日15時から行なう。入場無料、要予約(定員30名)。

薈田純一写真展「新・小説のふるさと」

  • 会場:オリンパスギャラリー東京
  • 住所:東京都千代田区神田小川町1-3-1 NBF小川町ビル
  • 開催日:2013年2月28日(木)~2013年3月6日(水)
  • 時間:10時~18時(最終日は15時まで)
  • 休館:日曜・祝日

(本誌:鈴木誠)