富士フイルム、2010年秋モデルの「FinePix」新製品発表会
FinePixの2010年秋モデル5機種 |
富士フイルムは21日、コンパクトデジタルカメラ「FinePix」シリーズ新製品の発表会を都内で開催した。
位相差AFを実現する「位相差画素」をスーパーCCDハニカムEXRに組み込んだ「FinePix F300EXR」や、上下2画面で画像検索を行なえるタッチパネル式液晶モニターを搭載した「FinePix Z800EXR」など、5機種を発表した。うち4機種は8月7日に発売し、FinePix F300EXRのみ9月4日に発売する。
なお、今回発表した各機種の詳細については「富士フイルム、位相差AF「瞬速フォーカス」搭載機などFinePix秋モデル5機種」をご覧頂きたい。
■2010年度は「反転攻勢」で世界シェア10%を目指す
取締役 常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏は、2010年度の取り組みについて話した。2009年は20%以上のコストダウンによる採算性改善などで黒字化を達成。世界市場での販売台数は900万台を超えたと話した(前年度は800万台強)。
同社取締役 常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏 | 2010年秋機種の新機能・特徴 |
2010年は新興国での販路拡大や、先進国での上位機種シェアアップで「反転攻勢」に転じる年とし、1,200万台以上の拡販を目指す。その施策として、広告宣伝や商品力の強化、開発体制の強化などを行なう。これまで仙台にあったデジタル部隊と、大宮のレンズ部隊が合体した開発体制は、今回発表の15倍ズームモデルにも活きているとのこと。
第1四半期の状況は対前年比1.5倍の順調な滑り出しで、BRICsや新興市場では対前年3倍の実績という。先進市場でのシェアアップも同時に達成した。日本でのシェアは12%から13%で推移し、特に2010年春モデルの「FinePix Z700EXR」が常に売れ筋の上位を維持してきたという。
今回発表の5機種すべてに、フォトブック作成を補助するプリント連携機能「フォトブックアシスト」を搭載。カメラ内で画像のレーティングやアルバムに使用したい画像へのタグ付けが行なえ、店頭端末での操作を減らすことができる。新機能は対応機種が発売になったタイミングですぐに利用できるようにするとアナウンスした。
フォトブックアシストの利用フロー | フォトブックの作成見本 |
フォトブック作成受付端末「オーダーキャッチャー」 | メモリーカードを端末に挿入し、カメラ内で作成したブックを選択する |
オーダーキャッチャーで表紙をデザインしているところ。タイトル、サブタイトルなどを入力可能 | 画像の順番を並び替えているところ |
なお、3Dカメラシステムの強化については別途発表するとし、さらにグレードアップした「FinePix Real 3D W1」後継機を準備中としていた。
■位相差AFで最短合焦速度0.158秒
同社電子映像事業部 商品部長の西村亨氏 |
電子映像事業部 商品部長の西村亨氏は、現在のデジタルカメラ市場には「表面スペックに飽和感」があると前置き、2010年秋モデルのFinePixにおける新技術の特徴解説と、各機種の紹介を行なった。
位相差AFで一眼レフカメラのような高速なフォーカスを実現したという「瞬速フォーカス」を2機種に搭載。原理は同社が開発した「スーパーCCDハニカムEXR」に数万個の位相差画素を組み込んだもので、AF速度は従来機種比2倍。同社調べでは最短0.158秒の合焦速度を実現した。位相差画素の組み込みは、画素混合を利用するスーパーCCDハニカムEXRと親和性が高かったという。
また、明るいシーンや望遠時は位相差AF、暗いシーンや顔検出で人物撮影を行なう場合はコントラストAFを利用するなど、自動でフォーカシングの方法を切り替えるという。位相差AFとコントラストAFを手動で切り替えることはできない。
位相差画素を組み込んだスーパーCCDハニカムEXRの仕組み | 自社開発のセンサーを使用している点も開発における強みとしていた |
会場の天井付近に、AF速度体感用の被写体を用意していた |
FinePix F300EXRが搭載するフジノン15倍ズームレンズには、「ツインシフト機構」を採用。更なる高画質化とスリム化のために、沈胴時に2群が退避する機構を開発したという。これまでも5群のうち1群を退避させるレンズ構造はあったが、5群中2群が退避する構造は世界初としていた。
ツインシフトレンズ構造の構造図 | FinePix F300EXRレンズ部のカットモデル。光学15倍ズームレンズで世界最小という |
ほかにも、360度のパノラマ撮影機能「ぐるっとパノラマ360」を2機種に搭載。「FinePix HS10」に搭載していた機能を発展させ、全周撮影にも対応した。画角は360度、240度、120度のなかから選択可能で、縦方向のパノラマ撮影も行なえる。
パノラマ撮影中(上方向)の様子。ガイドの黄色い線に十字を合わせながらカメラを振る | ぐるっとパノラマの撮影サンプルを展示していた |
FinePix F300EXRは、位相差AF対応のスーパーCCDハニカムEXRセンサーを搭載し、レンズに24-360mm相当の光学15倍ズームレンズを搭載する。厚さ22.9mm。発売は9月4日。店頭予想価格は4万5,000円前後の見込み。カラーはブラックのみ。
FinePix F300EXR(ブラック) |
厚さ22.9mmに光学15倍ズームレンズを搭載 | 望遠端(360mm相当)での撮影時 |
レンズや操作ダイヤルの周囲にダイヤカットを施した | 新しいジャイロセンサーを使用した「さらにブレない 新手ブレ補正」も搭載。手ブレのみならず周波数の低い体のブレなどにも対応し、動画撮影にも効果を発揮するという |
FinePix F300EXRに純正ケース「SC-D20BK」(オープンプライス)を装着 | カバーはマグネットで開閉する。カバー同士の固定はホック式 |
背面操作部 | 長さ調節可能なストラップが付属する |
FinePix Z800EXRは、位相差AF対応の薄型モデル。屈曲光学系とタッチパネルを搭載した「FinePix Z700EXR」の後継機種で、「2画面サクサク再生」などを継承している。撮像素子にはFinePix F300EXRと同じ1/2型有効1,200万画素のスーパーCCDハニカムEXRを採用。店頭予想価格は3万3,000円前後の見込み。
FinePix Z800EXR |
新たに自動追尾AFを搭載し、セルフタイマーには赤ちゃんが正面を向いた時に撮影する「ベビーオートシャッター」を新搭載した。ベビーオートシャッターは、赤ちゃんでなくても人間であれば対応するという。
ベビーオートシャッターはセルフタイマーのメニューから利用できる | 画像のレーティングを行なっているところ |
FinePix Z80は、本体にピンク、ブラウン、ミント、ラベンダーのパステルカラーを採用した薄型スタイリッシュモデル。薄さ20.4mmの本体に36-180mm相当の光学5倍ズームレンズを搭載する。店頭予想価格は2万5,000前後の見込み。
HD動画記録に対応し、動画撮影ボタンを搭載。ワンタッチでYouTubeへの画像アップロードを行なえる機能を「FinePix Z70」から継承した。撮像素子は有効1,420万画素のCCD。
FinePix Z80 |
高倍率モデルのFinePix S2800HDは、世界最小という光学18倍ズームレンズを搭載するモデル。2010年春モデルの「FinePix S2500HD」をブラッシュアップした。レンズは28-504mm相当の光学18倍ズーム。HD動画記録に対応し、2cmまでの接写が可能。店頭予想価格は3万円前後の見込み。
FinePix S2800HD |
FinePix JX280は、ぐるっとパノラマ、赤外線通信、フォトブックアシストなどを利用できるエントリーモデル。広角端28mmからの光学5倍ズームレンズを搭載する。赤外線通信にも対応した。店頭予想価格は1万5,000円前後の見込み。
FinePix JX280 |
■フォトブック販売実績は前年比1.5倍
コンシューマー営業本部長の四宮啓司氏は、新製品の国内展開について話した。2010年春に発売したモデルでは、FinePix Z700EXR、FinePix F80EXR、FinePix HS10という同社ラインナップの中核となる3機種が順調という。
コンシューマー営業本部長 四宮啓司氏 | 8月7日からFinePix Z800EXRのテレビCMを放映 |
秋モデルのプロモーションは、イメージキャラクターに引き続き佐々木希さんを起用。8月7日から放映するテレビCMでは、瞬速フォーカスと2画面サクサク再生のスピード感を「早撃ちカウガール」に扮して表現した。
また、今回発表の5機種すべてが搭載するフォトブックアシスト機能は、フォトブックの市場拡大により搭載した機能。フォトブック普及協議会の調べによると、22年度のフォトブック販売実績は300万冊で、前年比1.5倍という。
フォトブックアシスト機能のイメージ |
四宮氏は現在のデジタルカメラについて、「見たい画像を簡単に探せない『画像漂流時代』に突入した」と引き続き強調し、店頭でフォトブックを注文する際も、画像選択に時間がかかることから注文を途中で諦めるユーザーも多いとの調査結果があるという。
同社はフォトブックを注文する店頭端末のバージョンアップを行ない、8月のサービスインに備えるとしていた。
2010/7/21 18:40