キヤノン、10コマ/秒・ISO102400の「EOS-1D Mark IV」


 キヤノンは、拡張感度ISO102400に対応したプロ向けのデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D Mark IV」を12月下旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は57万円前後の見込み。

 報道・スポーツカメラマンなど速写性能を求められるユーザーに向けた「EOS-1D Mark III」(2007年5月発売)の後継機種。画素数を増加させた上で高感度性能を向上、さらにライブビュー時のAFや、HD動画記録にも対応した。さらなるAF精度の向上も開発のポイントという。なお、本体の外観やメニュー画面の詳細については別記事を参照いただきたい。

EOS-1D Mark IV同背面

新CMOSセンサーの搭載で高感度性能が向上

 引き続き、APS-H相当のCMOSセンサーを搭載。ただし有効画素数を前モデルの1,010万画素から、約1,610万画素に引き上げている。トリミング耐性が向上したと同時に、高精細が要求される商品撮影や風景撮影などにも対応できるとしている。

 常用感度はISO100~12800。拡張感度は最高でISO102400。CMOSセンサーにさらなる微細化技術を導入し、フォトダイオードからマイクロレンズまでの距離を短縮するなど、集光効率を高めたことから、前モデルを上回る高感度・低ノイズを実現した。また、EOS-1シリーズで初めてISOオート設定を搭載する。

撮像素子ギャップレスマイクロレンズを採用
AFフレーム配置図感度は、拡張時でISO50~102400の設定が可能になった。ISOオートも使用可能

 なお、映像エンジンは前モデルのデュアルDIGIC IIIから、EOS 7Dなどと同じくデュアルDIGIC 4構成に進化した。セルフクリーニングセンサーユニットも引き続き備えている。

 AFは45点で配置は従来のEOS-1系を踏襲。ただしF2.8対応クロスセンサーが前モデルの19点から39点に増加している。AFフレーム登録機能、スポットAF、領域拡大、AIサーボAF IIなど、10月2日発売の新機種「EOS 7D」から受け継いだAF機能も持つ。AFの追従敏感度を「遅い」、「やや遅い」といった具合に、細かく設定することもできる。

 ファインダーのスペックはEOS-1D Mark IIIと同等。視野率約100%、倍率は約0.76倍。アイポイントは約20mm。アイピースシャッターを内蔵している。

ライブビューはAFに対応。フルHD動画も

 連写性能は約10コマ/秒。連続撮影枚数はRAWで約26コマ、JPEGで約85コマ。UDMA Mode 6対応のCFなら、RAW約28コマ、JPEG約121コマの記録が可能という。また、高感度撮影時のノイズ低減機能をオンにした場合(「標準」または「弱め」)でも、オフと同等の連続撮影コマ数を実現。ただし、高感度撮影時のノイズ低減機能「強い」のときは、撮影可能コマ数が減少する。

 前モデルEOS-1D Mark IIIはライブビューを搭載していたが、ライブビュー初期の2007年発売とあって、マニュアルフォーカスのみに対応していた。EOS-1D Mark IVでは、ほかの現行EOS DIGITALと同様、「ライブモード」、「顔優先ライブモード」(以上コントラスト検出式AF)、「クイックモード」(位相差検出式AF)を使い分けが可能になった。

ライブビュー時の表示動画の記録サイズおよびフレームレート設定画面

 動画機能はEOS 7Dに近く、1,920×1,080P(30fps、25fps、24fps)、1,280×720P(60fps、50fps)、640×480P(60fps、50fps)での記録が可能。圧縮形式はMPEG-4/AVC、コンテナはMOV。音声はリニアPCMで、本体にモノラルマイクを内蔵するほか、外部ステレオマイクを利用できる。

 動画記録時のマニュアル露出にも対応。ISO102400といった高感度での記録にも対応する。EOS 7Dのようなライブビュー撮影/動画撮影スイッチはないが、シャッターボタン脇のFELボタンをクイックMovieボタンに設定できる。静止画からすぐに動画撮影に切り替えられるという。

ピクチャースタイルが変化

 液晶モニターは3型約92万ドット。EOS-1D Mark IIIは3型約23万ドットだった。高精細化に加えて、EOS 7Dと同じく、保護カバーと液晶面の間に樹脂を充填した「クリアビュー液晶II」を採用する。

 EOS-1D Mark IVでは報道・スポーツでの用途を重視し、レタッチなしで利用できる絵作りを目指したという。そこで、ピクチャースタイル「スタンダード」、「風景」、「ポートレート」、「モノクロ」のシャープネスを従来より強めた。また、オートライティングオプティマイザによるコントラストの最適化により、「よりメリハリが利いた絵作りになった」という。低ノイズ化の実現により、従来より強いシャープネスにも関わらず、画質は悪化していないとしている。ピクチャースタイル「ニュートラル」、「忠実設定」は従来通り。

上面底面
側面
EF 50mm F1.2 L USMを装着したところボディはマグネシウム合金製
付属品

 最高シャッター速度は1/8,000秒。耐久回数は約30万回としている。

 記録メディアスロットはCFとSDHC/SDメモリーカードのダブルスロット。バッテリーはLP-E4で変わりなし。CIPA規格準拠の撮影可能コマ数は、常温約1,500コマ、低温約1,200コマ。ライブビューでは常温約270コマ、低温約230コマとなっている。

 本体はEOS-1D Mark III、EOS-1Ds Mark IIIと共通。ボディにはマグネシウム合金を使用し、76カ所に防塵防滴処理を施している。操作ボタン類の形状やストロークの変更も見られる。外部端子キャップはひも付きキャップになった。

 本体サイズは156×79.9×156.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,180g。


主な仕様
 EOS-1D Mark IVEOS-1D Mark IIIEOS 7D
発売時期2009年
12月下旬
2007年
5月31日
2009年
10月2日
実勢(予想)価格
※ボディのみ
57万円前後45万円前後19万円前後
撮像素子方式CMOSイメージセンサー
サイズ27.9×18.6mm28.1×18.7mm22.3×14.9mm
有効画素数約1,610万約1,010万約1,800万
有効撮影画角(焦点距離換算)約1.3倍約1.6倍
最高感度(拡張設定)ISO102400ISO6400ISO12800
センサークリーニング
映像エンジンDIGIC4×2DIGIC III×2DIGIC4×2
ライブビュー
EOSムービー最大解像度1,920×10801,920×1080
フレームレート
(最大解像度時)
30p/25p/24p30p/25p/24p
ファインダー視野率約100%
倍率約0.76倍約1.0倍
アイポイント約20mm約22mm
位相差AF測距点45点19点
シャッター最高速1/8,000秒
連続撮影速度約10コマ/秒約8コマ/秒
液晶モニターサイズ3型
ドット数約92万ドット約23万ドット約92万ドット
本体サイズ156mm148.2mm
奥行き79.9mm73.5mm
高さ156.6mm110.7mm
重量(本体のみ)約1,180g約1,155g約820g


(本誌:折本幸治)

2009/10/20 13:00