アップフィールドギャラリー、岡嶋和幸作品展「くろしお」


 アップフィールドギャラリーは、岡嶋和幸作品展「くろしお」を10月15日から開催する。

(c)岡嶋和幸
 海の近くでのんびり暮らしてみたいと思った。そして、家族とともに房総半島の太平洋に面する港町に移り住んだ。そこには山や川、田畑など日本の田舎らしい風景がいまでもたくさん残っている。少年時代を過ごした当時の福岡のようで懐かしい。暖流の影響で一年を通して比較的温暖な気候。南国を思わせるような海岸線が続き、太陽の光が燦々と降りそそいでいる。

 都会での生活になくて新鮮だったのは、海からの風が運んでくる波の音や潮の香り。海が目で見えなくても肌、耳、鼻でそれを感じさせてくれる「潮」の存在だ。いまでは日々の生活でいつも私の心を癒やしてくれている。写真を見た人が同じように癒やされるように、波の音や潮の香りが目で感じられるような表現をしたい。

 波折りは見ていて飽きない。ゆったりとしたリズムで上下にうねりながら押し寄せてくる波。その形は美しく、同じものはふたつとない。上陸する直前に砕け散り、砂の上に滑り込む。それらの動きをファインダーで追いながらシャッターを切る。写真では静止した形で見えてしまうが、写し込んだのは瞬間ではなく、終わりなく繰り返される潮の満ち引きである。

 今回の作品「くろしお」は、2009年に発表した「潮彩*」シリーズのモノクロ版である。日本南岸に沿って太平洋を流れる暖流で、日本海流とも呼ばれる「黒潮」にかけて、日本語のひらがなで「くろしお」と名づけた。朝夕のわずかな光によって浮き彫りになった潮の動き、つまりは潮汐や潮流をモノトーンで美しく情緒的に表現してみた。

*潮彩(しおさい) 日の出前や日の入り後に色と明るさがゆっくり変化する空。一度として同じ色になることはない。その変化の様子を映し込む海を切り取ることで、さまざまな色や形の「潮」を表現した。夜明けや日暮れの時間帯は薄暗いため必然的にスローシャッターとなる。絵筆で描いたような流れるタッチは、絵画的な表現を求めて試行錯誤を繰り返しているうちにたどり着いた。数分の1秒や数秒で写し込んだ海の光と色は、肉眼では見えない形で一枚の写真となる。(写真展情報より)
  • 名称:岡嶋和幸作品展「くろしお」
  • 会場:アップフィールドギャラリー
  • 住所:東京都千代田区三崎町3-10-5 原島第3ビル 304
  • 会期:2010年10月15日~10月31日
  • 時間:12時~19時
  • 休館日:会期中無休

(デジカメWatch編集部)

2010/10/1 15:24