新宿ニコンサロン、三栖幸生写真展「時景」(ときけい)


(c) 三栖幸生

 新宿ニコンサロンは、第16回酒田市土門拳文化賞受賞作品展として、三栖幸生氏の「時景」(ときけい)を5月18日から開催する。

 作者が身の回りの景色を撮るようになったのは、懐かしい景色が変わっていくことへの郷愁と残しておかなければとの小さな使命感だった。

 撮り始めた頃は、日本全体が生活のリズムを無視したかのように激しく動いていたときである。東京近郊の作者の住む町も、日々に変化していた。建物が壊されて空き地が目立ちはじめ、次々に新しい建物や道路がつくられていった。バブルに踊らされ、そしてはじけた時代背景の中、変化する瞬間、懐かしい風景、気になった景色にレンズを向け続けた。

 更地になった空地をみると、そこにどんな建物があったのか思い出せないことが多い。見慣れていたはずの景色は、時間の経過とともに作者の記憶の外に流れ去って、変化してしまった景色が以前からの変わらぬ景色に映ってしまう。時間の流れの中で見つめてきたものを忘れてしまわないために、記録と記憶に留めるために作者は地域を見つめた。その景色はその時代に確かにそこにあった。

 撮影期間は1990年から2008年までの19年間で、撮影地は神奈川県県央地区(厚木市、大和市、海老名市、伊勢原市、綾瀬市、愛川町、清川村、相模原市城山町)と隣接する町田市、横浜市、川崎市、茅ヶ崎市、寒川町、松田町である。モノクロ30点。(写真展資料より)

 酒田市土門拳文化賞は、秋田県酒田市が写真文化・写真芸術の振興を目的として開催するもの。同市出身の写真家・土門拳氏の功績を記念し、土門拳記念館開館10周年を機に酒田市が創設した。第16回の選考委員は、江成常夫氏、大西みつぐ氏、藤森武氏。

  • 名称:第16回酒田市土門拳文化賞受賞作品展 三栖幸生「時景」(ときけい)
  • 会場:新宿ニコンサロン
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • 会期:5月18日〜5月31日
  • 時間:10時〜19時
  • 休館日:会期中無休


(本誌:折本幸治)

2010/5/12 13:28