新製品レビュー

hohem iSteady V3

着脱式のAIトラッカー&コントローラーが特徴 コンパクトに折りたためるスマホ用ジンバル

スマートフォンで動画を撮影するユーザーが増え、それに伴い手ぶれ補正機能も進化し続けている。かつては手ぶれを軽減するための機材だったスマホ用電動ジンバルだが、最近は別の方向へと進化を遂げている。

今回試用した「hohem iSteady V3」もそのひとつで、モバイル写真やビデオ撮影を次のレベルに引き上げるデバイスとして注目される製品だ。

コンパクトなデザインで持ち運びに便利

hohemというメーカー名を聞き慣れない方も多いかもしれないが、電動ジンバル業界ではコンスタントに新製品を投入しており、僕自身もこれまで多くのモデルをレビューしてきた。最大の特長は、コンパクトに折りたためる携帯性にあり、他社製品と比較しても折りたたみ時のデザインが工夫されている。

iSteady V3の重量は約420gと軽量で、折りたたみ時のサイズは98×44×160.5mmとコンパクト。バッグやポケットにも簡単に収まり、旅行中のVlog撮影や日常の記録を気軽に行いたいユーザーにとって大きな魅力となる。

スマートフォンをホルダーにセットしたらアームを展開。数秒で撮影準備が整う点も実用的だ。展開時のサイズは127×65×312mmとなり、スマートフォンをしっかりと固定しつつ、操作性を損なわないバランスが取られている。

【折りたたみから展開→スマホ装着】

優れたスタビライズ性能

iSteady V3は、パン/チルト/ロールの3軸を電子制御する「iSteady 8.0」技術を搭載。一般的な3軸電動ジンバルと同様に、撮影スタイルに応じた各種モードを備え、手元の操作ボタンで簡単に切り替えられる。

ジンバル動作モードは、標準的な「PF/PTF/POV/LOCK」の4種類と、自動回転するインセプションモードを搭載。シーンに合わせて使い分けできる。

ただしチルト軸の可動域が狭いのと、パン軸が360°回転できないことは注意が必要だ。

【ジンバル動作モード】

エクステンションロッドと三脚を内蔵

本体にはエクステンションロッドと三脚が組み込まれており、追加アクセサリーを持ち歩く必要がない。荷物を最小限に抑えたいユーザーにとって、理想的な仕様となっている。

最大205mmまで伸縮可能なエクステンションロッド(延長ロッド)は、セルフィースティックとして楽な姿勢で撮影できるだけでなく、ハイアングル/ローアングルの撮影も容易にする。旅行先で風景とともに自分をフレームに収めたり、多人数での自撮り、ペットや子供を低い位置から撮影する際にも便利だ。

また、本体底面には引き出し式のミニ三脚を内蔵。固定撮影が可能で、三脚ネジも装備しているため、一般的な三脚に取り付けて安定した撮影もできる。タイムラプスや長時間の定点撮影に適しているほか、ジョイスティックで等速にパンさせる撮影にも活用できる。パン速度は設定で変更可能。

【延長ロッドとミニ三脚を内蔵】

独立したマグネット式AIトラッカー

従来の電動ジンバルでも被写体を自動追尾するオブジェクトトラッキング機能は利用できたが、その多くは専用アプリを介したソフトウェア処理だった。最近ではハードウェアで処理するAIトラッカーを搭載するモデルが増えているが、その技術をhohemは2021年発売の「iSteady V2」で早くも採用していた。

V3では独立したマグネット式AIトラッカーを採用し、スマートフォンのカメラやアプリに依存せず人物を自動追尾してくれる。また、ジェスチャー操作でトラッキングの開始/終了や撮影の開始/停止も可能だ。

AIトラッカーはマグネット接続のリバーシブルデザインを採用しており、前面カメラと背面カメラの両方で利用可能。また、iOS・Androidを問わず、SNSやライブ配信アプリなどあらゆるプラットフォームで活用できる。自撮りレポートをする人や、1人でライブ配信を行う人にとって「専属カメラマン」のような強い味方になってくれるだろう。

従来のAIトラッカーでは被写体を中央に固定しがちだったが、本機ではハンドジェスチャーで被写体の位置を調整可能。これにより、1人でのレポート撮影でも思い通りのアングルを確保できる。

AIトラッカーで被写体の位置を固定
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またAIトラッカーには、撮影時の照明を強化するフィルライトを搭載している。色温度を2,700K(暖色)、5,000K(中間色)、6,500K(寒色)の3種から切り替えることができ、明るさは側面のホイールでリニアに調整可能。最大光量は0.5mの距離で110 luxなので、暗所での自撮りにも問題なく使用できる。

取り外し可能なコントローラー

本機の特長のひとつが、取り外し可能なコントローラー。本体の操作部がマグネットで着脱でき、文字通りリモコンとしてジンバルやカメラを遠隔操作できる。

コントローラーにはジョイスティック/モード切替ボタン/シャッターボタンなどが搭載されており、最大10mの距離からカメラアングルを調整したり、録画の開始/停止を遠隔制御可能。他社製品では専用アプリ経由での遠隔操作が一般的だが、物理リモコンによる直感的な操作は使い勝手がよく快適だ。

【取り外し可能なコントローラー】

アプリによるクリエイティブな撮影モード

AIトラッカーが標準装備されているため、さまざまなアプリでジンバルの性能を活用できるが、専用アプリ「Hohem Joy」を使用することで、パノラマ/タイムラプス/スローモーションなど、多彩な撮影モードが利用できる。「Moment」モードでは、シネマティックなテンプレートを活用し、初心者でも簡単に凝った映像表現が可能だ。

【専用アプリでトラッキング】

まとめ

価格はこのクラスの電動ジンバルとして、割と一般的な2万円弱。遠隔操作、AIトラッキング/フィルライト/エクステンションロッド/三脚の他に取り外し可能なリモコンを備えており、競合他社と比較しても使い勝手は良いと感じた。Vlogやライブ配信、旅行での動画撮影を考えている人にとって、機能性と使いやすさのバランスが取れた選択肢となるだろう。

特に1人での撮影が多いモバイルクリエイターにとって「自分専用のAIカメラマン」となる1台と言えそうだ。

わっき

デジタル・コンテンツ・デザイナー/パノラマ写真家。1999年にフリーランスとして独立。テレビ/映画/ゲームなど幅広い分野の映像制作を手がけ、現在はYouTuber、動画レポーターとしても活動中。