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生成AI「Adobe Firefly」がSubstance 3Dに統合…3Dオブジェクトのテクスチャ生成が可能に
Adobe Fireflyは発表から1周年
2024年3月21日 18:38
アドビは3月21日(木)、同社が提供する生成AI「Adobe Firefly」(以下、Firefly)の機能をSubstance 3D SamplerおよびSubstance 3D Stagerに統合したと発表した。工業デザイナーやゲーム開発者などに向けて、3D制作のワークフローを効率化する機能になっているという。
今回の統合にあわせて、各アプリケーションで利用できる機能が新たに搭載されている。
Substance 3D Samplerでは、「テキストからテクスチャ生成」機能が追加された。テキストプロンプトから3Dオブジェクトの表面のテクスチャを生成できるというもので、フォトリアリスティックな表現から、スタイル化された表現にまで対応するという。この機能により、物理的なプロトタイプの作成やストック画像の選定、実際に写真撮影するといったワークフローが不要になるとしている。
Substance 3D Stagerには「背景を生成」機能が追加された。テキストプロンプトから精緻な背景画像を作成するという機能だが、遠近法やライティングなどを調整して、状況に応じたオブジェクトがシームレスに合成されるという。
これらの機能を利用して生成したデータには、制作の過程で生成AIを使用したことを示すコンテンツクレデンシャルが付与される。
FireflyのSubstance 3Dへの統合について同社は、「単なる制作プロセスの効率化だけではありません。人間の想像力を代替えするのではなく、解き放つための新たな生成ワークフローによって、未踏の領域へとクリエイティブの可能性を切り開きます」とコメントしている。
Adobe Fireflyは発表から1周年に
Fireflyは、3月21日(木。日本時間)に発表から1周年を迎える。それに合わせて、同社は“Adobe Fireflyの1年間”を振り返った。
説明の場に立ったのは、同社常務執行役員兼Chief Digital Officerの西山正一氏。同氏はまず、アドビの生成AIへの取り組みにおける理念について語った。
同社がFirefly開発の前提としているのが、大きく分けて次の4点だ。「商用利用できるということ」「既存の同社サービスのワークフローで利用できるということ」「企業向けのカスタムトレーニングに対応すること」「コンテンツの信頼性を確保すること」。
上記の理念に基づき、発表から1年をかけて各種クリエイティブ系のアプリで「テキストから画像生成」「生成塗りつぶし」「テキスト効果」「生成再配色」といった機能を順次展開していった。
一方で、同社の生成AI技術における展開については、クリエイティブツールに限らないと西山氏は強調した。1つは、Acrobatへの活用だ。鋭意開発中という「AI Assistant」(英語版。現在はベータ版)は、企業や団体が過去に蓄積してきたPDFから、プロンプトに応じてサマリを抽出してくれる機能などを実現するという。
また、同じく開発中のプロジェクトとして「Dubbing&Lip Sync」についても紹介。これは動画内で発言している人の口の動きを読んで、任意の言語に翻訳するという機能になっている。
そのほか、プロンプトによって曲調を変えるといったことなどが可能になる、音楽の生成AI「Project Music GenAI Contorol」も鋭意開発中としている。
同社が主導するコンテンツ認証イニシアチブ(以下、CAI)にも動きがあったという。今年2月には、CAIで使う規格を開発する、コンテンツ来歴および信頼性のための標準化団体「Coalition for Content Provenance and Authenticity」(以下、C2PA)にMeta社とGoogle社が参加した。
加えて、3月12日(火)にはNHKがCAIへの加入を発表。日本のメディアでは初めてのCAIへの参画となる。
同社は、Fireflyの日本における普及活動として、今後もビジネスパートナーとともに、各種セミナーや勉強会を通して商用利用の理解促進を図っていくという。
また、CAIについては日本オフィスを置き、メディアや各企業に理解を促しつつ、加入の促進も行っていく。
これらの活動を通して、同社は今後もFireflyの開発および普及促進に注力していくとしている。