ニュース

DJI、産業用ドローンの新製品と市場動向を紹介

新製品MATRICE 300 RTK・ZENMUSE H20シリーズを発表

DJI JAPANは5月14日、産業用ドローンの新モデル「MATRICE 300 RTK」と新型カメラ「ZENMUSE H20シリーズ」の報道関係者向け説明会をオンラインで開催した。説明会では、ドローンパイロットらによるディスカッションも行われた。

いずれも5月8日に発表されたモデルで、5月中旬から出荷する。

MATRICE 300 RTKは鉄塔、橋梁、プラントといったインフラ設備の点検や警察、消防といった公共分野向けのドローン。参考価格は約95万円。

新たに有効飛行時間を従来の15分から36分に延ばしたほか、最大伝送距離が8km(国内の場合)になった。加えて、新たに機体の6面にビジョンセンサーと測距センサーを備え、例えば橋の裏側に近づいての撮影などが容易になっている。ルーチン作業向けの自動化機能も強化した。

一方、ドローン用カメラのZENMUSE H20シリーズは、1つのカメラユニットに高倍率ズームレンズのカメラ(2,000万画素)と広角単焦点レンズのカメラ(1,200万画素)を搭載。両方の映像を同時に確認、記録できる。またレーザー距離計も備えるほか、熱放射カメラを追加したモデルも用意する。参考価格は約45万円からとなっている。

急成長の産業用ドローン市場

ディスカッションではまず、モデレーターのインプレス総合研究所リサーチャーでドローンジャーナル編集長の河野大助さんから、国内ドローンビジネスの市場規模について説明があった。

左からインプレス総合研究所の河野大助さん、DJI JAPANの中村佳晴さん、NSi真岡の水沼和幸さん

2019年度の市場規模は前年度比51%増の1,409億円と急成長しており、2025年には6,000億円規模になるとした。従来の農薬散布といった分野から今後は公共機関などにも活用が広がることが予想されるためだ。現在はドローンの黎明期との位置づけで、右肩上がりの成長が続くとの見方を示した。

続いて新モデルの活躍分野について、ユーザーの立場からドローン運用会社 NSi真岡 代表取締役の水沼和幸さんが話した。水沼さんは、警察などの公共機関やインフラ分野に加えて、これからは保険業での査定などにも活用されるのではないかと指摘した。

災害現場での使用イメージ

また、市場規模が大きいとされる橋梁点検については、「数年前から要望が多い。橋そのものに加えて、裏側を通るケーブルや配管などの点検ニーズが高い。ただ従来機種では対応が難しく、操縦者に高い技量が求められていた。新モデルではその点が考慮されており期待できる」(水沼さん)とした。

MATRICE 300 RTKでは6面に設置されたセンサーにより衝突検知性能が向上。対象物により近づいての観測もしやすくなった。

2つのレンズで撮り間違いを防ぐ

また新型カメラについて水沼さんは、「大きく進歩した。これまでのズームレンズのみの映像では、ズームアップで見ている時にそれが全体のどこなのかがわかりづらい問題があった。今回、広角カメラの映像が同時に見られることで、全体のどこにズームしているかわかりやすく、撮影ミスが防げる」と話した。

DJI JAPAN オフィシャルパイロットの中村佳晴さんは、「レーザー距離計が入ったのも重要ですね。ズームした部分がどこなのかを正確に把握できるようになりました」と補足した。

パイロットを交代できる機能も

また今回デュアル制御に対応したのもトピック。2人のパイロットが操縦を交代できる機能となっている。

「例えば川のこちらと向こうにパイロットを待機させておいて、ドローンの移動に合わせて操縦を代わることなどが考えられます。さらに目視外飛行ともなればパイロットは不安になるもの。長年欲しかった機能です」(水沼さん)と評価した。

安全性については、「機体が落ちるというのはセンサー類のエラーであることが大半。今回はセンサーを2重化しているので、片方が故障しても帰還が可能となっています」(中村さん)とのこと。

バッテリーは2個搭載可能だが、これも1つに異常があっても安全な着陸が可能となっている。

その他水沼さんは、ドローンの動きを記憶させて自動化する機能が大幅に向上したことや、コントローラーの表示がHUD(ヘッドアップディスプレイ)のような画面で見やすくなっていることなどを現場で使いやすくなる点として挙げていた。

なおDJI JAPANでは、これら新製品の一般向けオンラインセミナーを5月19日(火)11時から開催する(無料、要事前登録)。

事前登録:https://attendee.gotowebinar.com/register/2297092402778929422?source=Press+Release

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。