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ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア2019年度の授賞式が開催

野生動物や自然風景を対象としたフォトコンテスト

ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア(NBPA)は、11月29日に都内で2019年度の授賞式を開催した。受賞作品を含む作品展示も同日より東京・新宿のヒルトピア アートスクエアではじまった(作品展示は愛知県立芸術文化センター 愛知県美術館ギャラリーが皮切り)。展示期間は12月8日まで。

ネイチャーズベストフォトグラフィーアジア

ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアは、1995年にスタートした自然写真を対象としたコンテスト。野生動物、風景、鳥、海など、自然の営みを対象とした部門が設けられており、Grand Prize、LUMIX Award、SIGMA Award、Wildlife、Landscapes、Oceans、Small World、Birds、Junior、Videoの各賞・部門がある。受賞作を含む作品展は日本国内のほか、アメリカにも巡回、Wonders of Wildlife 博物館 & 水族館(ミズーリ州)での展覧会開催が予定されている。

この日、ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアのCEOを務めるスティーブン・フレーリー氏は出席が叶わなかったが、ビデオメッセージを寄稿していた。ここで氏は「地球の美と多様性を人々と結びつけ、自然や環境について考えるキッカケになれば」と、同賞に集まった写真についてコメントした。

また、今回は世界31の国より、約7,700点の作品応募があり、その中より42作品が選出されたのだという。

スティーブン・フレーリー氏(ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアCEO)

静止画

2019年度のGrand Prizeは、カナダのThomas Vijayan氏に決まった。作品タイトルは「Peek A Boo」。Thomas Vijayan氏の出席はなかったものの、同賞のGrand Prize獲得について、ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアCEOのスティーブン・フレーリー氏は「主題と環境の素晴らしい組み合わせ」として、「すぐに新たに降り積もった雪から覗く目に引き付けられました」とコメントを寄せた。

被写体となったのは、マヌル猫。中央アジアの各地の山や草原で見つけることができるヤマネコなのだそうだ。撮影は極寒の風が強い日の実施。環境の悪化にともない、存続が心配されている種なのだという。

Thomas Vijayan氏作品についてのスティーブン・フレーリー氏によるコメント

LUMIX Awardは、Qiang Zhang氏(中国)の「Take Care」に決まった。被写体は四川のゴールデンモンキー(金糸猿)。場面は母猿が子猿を抱きかかえて木々の間を飛び移る瞬間だという。受賞に際してQiang Zhang氏は、撮影地は中国の秦嶺(しんれい)山脈だと紹介。1月のひじょうに冷え込んだ状況で撮影したカットだとコメント。こうした野生動物の撮影は好きだからこそ続けてくることができた、と受賞の喜びを語った。

LUMIX Award受賞作「Take Care」
Qiang Zhang氏(右)。ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアの代表理事を務める伊藤光氏(左)より楯が授与された

続けてWildlife部門では、Shin Okamoto氏(日本)に優秀賞が贈られた。作品タイトルは「Serious Looking」。被写体は蝦夷黒貂だ。一時、毛皮の獲得を目的とした乱獲により絶滅寸前にまで脅かされた種で、今また外来種により厳しい環境に置かれているのだという。受賞にあたり、Shin Okamoto氏は「地元である日本で撮った写真で賞を得られて光栄です」とコメントした。

Wildlife部門優秀賞「Serious Looking」
Shin Okamoto氏

Landscapes部門からは、Atsushi Miyazaki氏(日本)とMasahiro Kimata氏(日本)の2名が優秀賞を受賞した。

愛媛県の石鎚山で撮影した受賞作品について、Atsushi Miyazaki氏は「撮影当日は山頂を雲が覆っている状態だったものの、わずか15秒ほど雲が晴れた瞬間があった」と撮影時の状況を振り返った。作品タイトルは「Divine Mountain」。

「Divine Mountain」
Atsushi Miyazaki氏

-17度の状況で、長野県・霧ヶ峰を捉えたというMasahiro Kimata氏。受賞作の「Light and Shadow」は朝日の中でダイヤモンドダストに光が差した瞬間を捉えたものだ。

「Light and Shadow」
Masahiro Kimata氏

Oceans部門では、Reiko Takahashi氏(日本)が部門グランプリと優秀賞をダブルで受賞した。部門グランプリを獲得した作品「Dolphin Line」について、同氏は伊豆諸島・御蔵島のミナミハンドウイルカを捉えたものだと説明。「御蔵島のイルカはみな野生だけれども、とても友好的で色々なパフォーマンスを見せてくれた」と撮影時を振り返った。

「Dolphin Line」。下の1列は大人のイルカで、上の列は生後1〜2カ月ほどの子どもだろう、とReiko Takahashi氏は説明した
Reiko Takahashi氏

優秀賞を受賞した作品「Look at me」について同氏は、攻撃的な性格のクマノミが「こちらをじっと見つめていたのが印象的だった」と振り返った。夏に訪れた際には水温が上昇しており、イソギンチャクなどに白化がみられたものの、作品を撮影した冬には水温が下がってイソギンチャクが復活したと撮影地の状況を振り返った同氏は「このような自然環境の変化が見られて良かった」ともコメントした。

Small World部門からは、Kousuke Kitajima氏(日本)が優秀賞を獲得した。作品タイトルは「Color World」。色あざやかな秋の情景を背景に女郎グモを捉えた作品だ。

「Color World」
Kousuke Kitajima氏

Junior部門は、Kodai Saito氏(日本)が優秀賞を獲得した。作品は早朝のオオワシを捉えたもの。タイトルは「Azure」だ。撮影時の状況について、同氏は撮影が許可された日の早朝に撮影した1枚だと説明した。

動画

ネイチャーズベストフォトグラフィーアジアでは、静止画のほか、動画部門も設けられている。同部門の優秀作品賞には2名の日本人作家が選出された。1人目はMakoto Ando氏(日本)。作品タイトルは「WinterPassion」だ。作品は北海道・鶴居村で撮影したというタンチョウを被写体にしたものだ。

作品について、同氏は“鳥を鳥として捉えていないこと”がポイントだと説明。先住のアイヌ民族への敬意をもって、鳥を“神”として捉えているとコメント。3分間の映像に物語と哲学をこめてつくりあげた、と説明した。

「WinterPassion」の一場面
Makoto Ando氏

2人目は、Akira Bingo氏(日本)。作品はフィリピンのパラワン、ブスアンガ島周辺に生息しているジュゴンを捉えたもの。作品タイトルは「Eye Contact」だ。撮影をおこなった海は決して透明度が高い場所ではないとコメント。1回ごとのダイビングは時間が限られているため、撮影は3回かよっておこなったのだという。

「Eye Contact」の一場面
Akira Bingo氏

過去の受賞者も登壇

今回は2019年度の授賞式であったが、過去に受賞経験をもち現在も写真活動を続けているという3名の作家が登壇した。

1人目は、Shinichi Morita氏。2013年の受賞者で、水中カメラマンとして活動している。2人目は、TAKASHI氏。2017年と2018年の受賞者で、同賞の受賞は自身の作品について自信を得るものとなったのと同時に写真展の開催にもつながるものだったと振り返った。

3人目は、Tatsuya Okuda氏。2017年の受賞者で同賞受賞は世界からの反響を聞くことにもつながっているとコメント。現在、東南アジアの霊長類を撮影する中で、その大多数が絶滅危惧種となっていること、また環境問題との関係を伝えるために活動しているとした。

Shinichi Morita氏
TAKASHI氏
Tatsuya Okuda氏

展示構成

今回の受賞作品は愛知県の県立芸術文化センターでの展示を皮切りとして、巡回展がはじまっている。取材では東京都・新宿のヒルトンホテル地下にあるアートスペース「ヒルトピア アートスクエア」を訪問した。

展示室は全部で3室の構成となっており、授賞式の模様よりお伝えした作品のほか、世界各国の受賞者の作品も展示されている。

中央がGrand Prizeに輝いた「Peek A Boo」(Thomas Vijayan氏)。右がLUMIX Award賞の「Take Care」(Qiang Zhang氏)、左がSIGMA Awardの「Consonance」(Jiang Zhizhou氏)
Grand Prizeなどが展示されている部屋の隣には、Junior部門優秀賞を獲得した「Azure」(Kodai Saito氏)の作品などが飾られている
2つの展示室の向かいにも作品展示室がある。展示は全部で3室にわかれている

展示概要

展示期間

2019年11月29日(金)~12月8日(日)

会場

ヒルトピア アートスクエア
東京新宿区西新宿6-6-2 ヒルトン東京 B1階(ヒルトピアショッピングアーケード内)

開場時間

10時00分~19時00分

観覧料金

一般:500円
高校生以下:無料

本誌:宮澤孝周