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浅間国際フォトフェスティバル2019が開幕
自然の中を散策しながらフォトアートに親しむ
2019年9月17日 12:28
新潟の大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭など、自然や風景とともにアートを楽しむ取り組みが日本でも増えてきている。その中でも写真に特化した「浅間国際フォトフェスティバル2019 PHOTO MIYOTA」が9月14日から開幕した。メイン会場は軽井沢に隣接した高原の町、御代田にある御代田写真美術館予定地(メルシャン美術館跡地)だ。
この美術館は大小4つの建物が遊歩道で結ばれている。途中には浅間山が眼前に広がる散策エリアもあり、そこでは屋外展示が楽しめる。通常は静かな室内で1点1点の作品を鑑賞していくが、ここでは空間を自由に回遊しながら作品と出会い、体感していく。そのアート体験はユニークで新鮮だ。
今回の展示テーマは「TRANSFORM イメージの化学」。写真家55組による728点がさまざまな視点からトランスフォーム(変容)を鑑賞者に投げかける。奈良原一高、森山大道、メイプルソープら写真の王道から、若手作家が斬新な手法を使った作品が並ぶ。
広い空間を生かした屋外展示の数々
体感する鑑賞の一つが鈴木崇の「BAU」だ。展示作品はスポンジで作ったオブジェを撮影したもので、身近な日用品がカラフルでポップなアートに変わる。
隣接した部屋では、来場者がこの作品に入り込める。ソニーが開発した画像合成技術で、背景を選ばずに撮影した被写体だけを切り取り、用意した画像と合成できる。
作品を見た時、誰もが手のひらサイズのスポンジを想像するだろうが、目の前のモニターにはスポンジと自分がほぼ同じサイズで現れる。さらに映像表示には若干のタイムラグが生じることで、今ここに居る自分とモニター内に映る自分が不意に切り離される。その時、感じる混乱、戸惑いは深く余韻として刻まれる。
入口では1877年にエドワード・マイブリッジが撮影した馬の連続写真などを展示した。肉眼で捉えられなかった馬が走る際の足さばきを、初めて静止画で記録した。当時、連写できるカメラはなく、12台のカメラを並べて撮影した。見えない瞬間を画像に定着させることも、トランスフォームの一つだ。
散策エリアでは6名の作品が並ぶ。西野壮平の「IL PO」はイタリアを横断するポー川、張克純の「The Yellow River」は中国の黄河を題材にした作品で、浅間山を借景に二つの川が向かい合う。
西野は都市をテーマに、実際にその街をスナップしたプリントをコラージュし、写真によるパノラマ地図を作る「Diorama Map」シリーズを手掛ける。
張は8×10判カメラを持ち、黄河を自転車でたどり、人の痕跡の残る場所を探し撮影した。河の理想像を求めた旅は、環境汚染が広がり、新しい生活を求める変わりゆく中国があった。
ウィージーが1940年に撮影した「Coney Island」。この年は猛暑で100万人が海水浴に押し掛けた。彼の発表舞台は新聞紙面だったが、ここでは12×9mのプリントに引伸ばし、写真から顔をのぞかせることもできるようにした。
横田大輔の「Color Photograph」は未撮影のフィルムを50〜100枚重ね熱現像した。偶然が生んだ多彩な色とフォルムに目を奪われる。
屋外の展示作品は光や水に強いUVプリントで出力。展示はキム・カンヒの「Street Errands」。
光の三原色、RGBを体験し楽しめる空間「RGB_Light」。自分の身体や、オブジェを操ることで、不思議な光の世界が広がる。
北軽井沢の「ルオムの森」では深い森の中に約40点の作品が並ぶ。木漏れ日、雨や朝露が写真にまた違う印象をもたらす。築100年の洋館内で同時期に開催中の「ラップランド―北緯66°暮らしの中の光と影―」も魅力だ。
御代田エリアにある18ヵ所の公民館などでは、水谷吉法の作品「Tokyo Parrots」が暖簾(のれん)となって展示されているほか、軽井沢プリンスホテル敷地内で開催する「PHOTO KARUIZAWA」(10月1日〜11月10日)、群馬県長野原町内2ヵ所で開催する「PHOTO KITAKARUIZAWA」を行なう。また会期中、撮影会やミニカメラバッグづくりなどのイベントも開催される。
浅間国際フォトフェスティバル2019 PHOTO MIYOTA
メイン会場
御代田写真美術館(通称:MMoP)予定地
長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1
開催期間
2019年9月14日(土)〜2019年11月10日(日)
開催時間
10時〜17時(最終入場は16時半まで)
休館
会期中無休
入場料
一般:1,500円、中学生以下無料(一部無料エリアあり)