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Phase One、"645フルサイズ"で1億5,000万画素の「XF IQ4 150MP」を展示

USB Type-C、XQD/CFexpressなど、将来を見据える新プラットフォーム

Phase One IQ4 150MP

フェーズワンジャパン株式会社は1月28日、「XF IQ4」カメラシステムの製品発表会を博報堂プロダクツEN studio(東京都江東区)で開催した。

53.4×40mmのCMOSセンサーを採用する製品。XFカメラボディ、XFプリズムビューファインダー、有効1億5,100万画素のIQ4 150MPデジタルバックで構成される「XF IQ4 150MP」の希望小売価格は税別559万9,000円。

IQ4が採用する53.4×40mmのイメージセンサーは、既存の中判デジタルカメラで多く採用されている約44×33mmより大きく、フィルム645判の有効サイズである56×41.5mmに近い点を"645フルサイズ"と表現している。

背面モニター。各項目をタッチすることで設定画面に直接移行する。
ステータスモニターはカラー表示で、タッチパネル式。
側面端子部。XQD、SD、Ethernet、USB Type-Cのほか、HDMIやシンクロ端子が備わる。
ファインダーは着脱式。

XF IQ4シリーズには他にも、モノクロ専用の「IQ4 150MPアクロマティック」、ソニーとの協業で開発した独自のベイヤーカラーフィルターによる1億100万画素機「IQ4 100MPトリクロマティック」の全3モデルを用意している。

新プラットフォームに飛躍したIQ4

IQ4を支える「インフィニティ・プラットフォーム」と呼ぶ新しい仕組み。

Phase Oneのカメラ作りの特徴は、レンズ、カメラ、ソフトの全てを手がけ、イメージセンサーもソニーと協業で開発していることだと開発責任者は語る。また、それらが統合されており順番に開発が進むことで、「システム作りが輪のように動いている」とのこと。こうした新プラットフォームの採用によるIQ3からIQ4への進歩は、これまでのXFカメラシステムにおいてもとりわけ大きな一歩だという。

交換レンズ群。

完全に新規のプラットフォームに切り替えた理由のひとつには、もちろん1億5,100万画素というイメージセンサーを搭載している点が大きい。画素数は従来の1億画素から50%増えたが、「画素数が50%増えたから処理能力は2倍にする」ということではなく、将来に備えてIQ3比で10倍の処理能力を持たせようとした。撮影のみに限らず、データの読み出し、RAWデータの編集(JPEG保存)、レンダリング、テザー撮影でのデータ転送、接続性の担保など、カメラシステムに機能を追加するにはそれだけのキャパが必要だからだという。

これまでのIQシリーズは10年前に作ったOSを使ってきたが、IQ4では柔軟性のあるLinuxを採用。様々なインターネットサーバーに使われる実績があり強力な基盤になるとともに、ストレージなどとの接続性も担保できると判断された。ハードウェア側面はFPGA(プログラマブルな集積回路)の採用で将来のアップデートに備える。

多くの他社製カメラが「要求スペックを定めてからハードウェアを開発する」とした上で、Phase OneのIQ4は「他より重かったり大きかったり、電力を食ったりするかもしれないが、1か月後、1年後、2年後と新機能を追加して長く愛用できるカメラ作りをしている」と説明。「外観はIQ3と同じように見えるが、中身は全く違う」と述べた。

左が開発初期の状態。やがて中央→右の状態に開発が進み、見慣れた箱型のデジタルバックに収まる。

そのIQ4の特徴のひとつに「Capture One Inside」がある。あえて例えるなら一般的なデジタルカメラの「RAW+JPEG同時記録」に近い機能で、コンピューター上のCapture Oneで現像するのとほぼ同じJPEG画像がカメラ内で得られるという。これにより、業務ニーズに合わせて「SDカードをすぐに画像セレクトへ回す」といったことが可能になる。

Capture One Insideで適用される「IQ Style」は、包括的な絵作りセッティング。プリセットに加えて3つのユーザープリセットをカメラに転送・保存しておける。

いわゆるRAW+JPEG記録と異なるのは、XF IQ4デジタルバックがXQDカード内のRAWデータをバックグラウンドで展開・現像処理を行い(撮影レスポンスには影響しないという)、SDカードに順次記録していくという点。現在はJPEGの記録サイズを変更できないが、将来のアップデートで変更可能になる予定だという。また、現像時のパラメーター変更は現状カメラ単体では不可能なため、いわゆる「カメラ内RAW現像」とも使い勝手は異なる。

クラス初の裏面照射型センサーを採用

XF IQ4 150MPのイメージセンサーは、クラス初という裏面照射型(BSI)を採用。特に1画素の小さい携帯電話のカメラなどから広まり、現在は35mmフルサイズのカメラでも採用例がある。従来方式に比べて光のロスやノイズが少ない点が構造上のメリットとして知られている。これによりノイズレベルは従来比1.5段分の低減になるという。

ダイナミックレンジは1億画素の100MP(15段)に比べて若干狭まる(14.5段)そうだが、「実感としてのダイナミックレンジはむしろ広がった」と説明。今後、15段以上のダイナミックレンジを得られるように開発中だそうだ。色味もIQ3で初ラインナップされたカラーフィルター「トリクロマティック」に負けないレベルで、違いを感じないほどに仕上がったとしている。

ダイナミックレンジは通常撮影で14.5段分、読み出しをゆっくりにするローノイズモードで15段分。開発中のフレームアベレージングモードでは15段を超えるという。

1億5,100万画素という解像度には「多すぎるのでは?」という声もある。しかし、横位置で撮ったものを駅構内のサイネージに合わせて縦長で使いたいといった注文や、約3,200万画素の8Kモニターが普及してくることも見据えると極端に多いこともなく、現時点では思いつかないような使い方が今後出てくるかもしれないと話していた。

なお、1億5,100万画素の高解像が不要なシーンや、よりレスポンスよく多くの枚数を撮影したいというニーズに向け、3,770万画素で記録するSensor+モードもある。

XF IQ4 150MPによる撮影写真を全体表示したところ。西新宿から埼玉方面を見る。
赤丸の部分を等倍表示した。これは池袋の豊島清掃工場。
同じく等倍表示で、埼玉スタジアム2002。撮影地点から28kmだという。

USB Type-CやWi-Fiに対応。CFexpressも

コンピューター上の「Capture One」ソフトウェアと連携する接続方法には、未来を見据えたという3つの方法を用意した。この接続によりテザー撮影などが可能になる。

画像記録の詳細設定。保存先ごとにオンオフできる。Host Storageはテザー接続しているコンピューターへの保存。
SDカードの設定。「JPEG only」にすると、XQDへのRAW記録に加え、Capture One Insideで現像されたJPEG画像がSDカードに記録される。

まず、FireWireに代わってUSB Type-C端子を採用。簡便かつカメラへの電力供給も可能で、ケーブルを接続すれば細かな設定は不要。使用可能なケーブルの長さが3〜4mに限られるため、撮影時に動き回る自由度が低くなるのが弱点だという。転送速度はこれが最も速い。

より自由度の高い有線接続としてEthernet(有線LANケーブル)接続も用意した。こちらは200mもの長さでも使用可能で、PoE(Power over Ethernet)による電力供給も可能だという。Ethernetケーブルを使う最大のメリットは、ケーブルを踏むなどして破損しても入手性がよく、長いケーブルも安価であること。

Wi-Fiの無線通信も、新たにCapture Oneへ直接接続が可能になった。従来はiPadからカメラ内の撮影画像を閲覧したり、レーティングを付けることに限られていた。通信速度は上記の有線に劣るが、バックグランドで撮影画像を転送させておくなど、バックアップ的にも利用できるメリットがあるという。

記録メディアはCFではなくXQD(CFexpressも対応)とし、SDカードのスロットも1つ用意した。SDカードは将来に向けた高速ストレージではないものの、どこでも入手でき、誰でもデータを取り込む環境を持っている点がメリットとしている。

撮影時の画面。
画面下端から上にスワイプすると、画面切り換えのメニューが出てくる。左下はライブビュー撮影を開始するボタン。
再生画像のヒストグラム表示。再生画面を左端からスワイプすると、レーティングと色温度取得が可能。右端からスワイプすると、ヒストグラム、詳細データ、白飛び/黒潰れ警告表示、グリッド表示を呼び出せる。
グリッド表示は複数パターンを用意。

イベント会場での関連展示

DJIドローンと組み合わせた空撮セット。
2つのプロポ(コントローラー)でドローンとカメラのそれぞれを制御する。
レンズ側面に電動フォローフォーカスを取り付け。
上の電動フォローフォーカスのリモコン。離陸前にピントを決めなくてもリモート操作できる。
ALPAとの協業によるAシリーズ。

本誌:鈴木誠