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長野県阿智村に「日本一の星空 浪合パーク」がオープン

気兼ねなく三脚を立てられる「星空デッキ」を用意

浪合パーク、オフィス棟の外観。

7月7日、長野県下伊那郡阿智村にある星空観測施設「日本一の星空 浪合パーク」(以下浪合パーク)がグランドオープンした。

「星空を鑑賞する」ことに特化し、イベントを主軸に展開する施設。前身は治部坂温泉の入浴施設「宿り木の湯」で、2017年に地方創生拠点整備交付金を受け改修した。敷地面積は1万850平方m。オフィス棟は618平方m。

主なイベントは、毎日開催の「星空鑑賞会」、プラネタリウム解説者の星兄(ほしにい)さんによる「星兄爆笑星空解説」、専門写真家による「星景写真講座・撮影会」を実施。パーク内広場のほか、オフィス設備を有し、ロッカールームおよび休憩スペースを完備。大小2つのホールおよびプライベートスペース「星空デッキ」(全10棟)の貸し出しも行なっている。

貸出スペース、星空デッキの内部。
中央の床板は石の板になっており、三脚などが立てられる。設置時に水平を取っているという。
カメラを据えた三脚を立てたところ。
電源が取れるコンセントも完備。
各スペースには星の名前がついている。
星空デッキの利用料金。

阿智村は、標高約1,200mの山間部に位置する山間の村。環境省による「全国星空継続観察」(スターウォッチング・ネットワーク)において、2006年に「日本一星が見える」(夜空の明るさが最も暗い)場所として選ばれた実績があり、浪合パークの正式名称に含まれる「日本一の星空」はこれに由来する。

7日に開催された発表会では、浪合パークの概要と、目指していく方向性について説明した。阿智村では地域振興の一環として「星空を見る」主旨のイベントを高原展望施設などで継続的に実施しており、一例としては「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」などがある。これは星に興味がなくても「美しいもの」、「感動できるもの」を楽しむ主旨で実施しており、同村の観光局ではこれを「星空のエントランス」と位置づける。

浪合パークは、そこから一歩踏み込んで、本格的な天体観測や天体写真、星景写真の撮影に向き合う顧客を主な対象とする。夜間における「星空デッキ」の貸出や写真教室の実習などを通して「一晩使って星を見る」体験を提供するという。

浪合パークの連携協定企業として、望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが名を連ねている。発表会で登壇した新妻和重代表取締役社長は、2015年に阿智村と地域振興に関する連携協定を締結。構想段階から、阿智村へのアドバイザーとして参加しており、地域振興のテーマとして「観光」「環境」「教育」のバランスを掲げ、浪合パークはこのうち「教育」の役割を担うと話した。

株式会社ビクセンの新妻和重代表取締役社長

「星空の知識や天体の不思議を子どもたちだけでなく、新しく星空に興味を持った大人の方にも上手く提案ができればいいなと思っています。ただ、天体観測あるいは星景写真などを撮影するにあたって、いくつか留意すべき点があります。ひとつは『マナー』の問題。天体望遠鏡で星の写真を撮る時、通常は駐車場なり、暗い場所に行って撮るのですが、その場所の管理体制次第では、トラブルが起きる可能性もあります」

「もう一つは『日本初の施設』であること。天文台やプラネタリウムは数多いですが、浪合パークはエンターテイメントとアカデミックの両面から星空に向き合い、星空が好きな人達とフレンドリーに語れる施設です。これはおそらく日本初でしょう。浪合がフロントランナーであることは、大事にしていかなくてはなりません」

オフィス棟には大小2つのホールがある。写真は大ホールの一部。
各ホールのレンタル料金。オフィス棟はセミナーや会合などが可能。
ロッカールームには天体望遠鏡も置けるようにしている。

天体撮影時のマナーに関しては、撮影者は「できるだけ暗い環境をつくりたい」点に着目し、管理された土地で専有枠を使うことで、暗所での事故や撮影者間トラブルなどの発生を抑える方向性。波合はもともと星空を見るのに良いロケーションであり、場所の問題さえ解決すれば、問題なく撮影を行なえることから「星空デッキ」の設置に至ったという。

占有スペースを利用できることで、トラブルの発生を抑えている

星景写真講座や撮影会の講師を務める写真家の宮坂雅博さんは、浪合パークが擁する設備面での利便性について言及した。

「私の作品は構図の中に『花と星』を入れる写真なのですが、こういった写真をどのようにして撮るか、という講習会などを行なっております。そのようなテーマで講習を行なう場合、どうしても込み入った内容になるのですが、複数台設置されているプロジェクターや、広いホールが利用できる専門施設ということで、今後は講習内容もよりわかりやすくできるのではないかと期待しています」

「また、参加者の方には、講習が終わった後に、すぐ外に出て星空を撮っていただいていますが、多くの方が『天の川を撮りたい』と仰ります。これは季節によっては天の川が空に出るまで自家用車内などで時間を調整していただく必要があるのですが、浪合パークには休憩室もあるので、例えば講習が終わった後に少し休んでいただいて、そこから撮影ができる流れも作れるので、そういった点でも便利です。初めて星を撮る人にとっても、良い環境になのではないでしょうか」

写真家の宮坂雅博さん。

浪合パークの「星空デッキ」は、利用の1カ月前から予約が可能。グランドオープンから1週間経過時点の予約状況をお聞きしたところ、概ね1週間前に予約すれば利用できるそうだが、時期によってはすでに予約で埋まっているタイミングもあるとのことで、なるべく早めに問い合わせてほしいとのことだ。

大ホール窓側の4面に映像を投影可能。
4基備え付けられたプロジェクター。
4面繋げて横長映像の投影にも対応している。
ショップスペース。ニコンやビクセンの機材レンタルも行なっている。
記録メディアなどちょっとした撮影用品がある。
雨具なども取り揃える。
ビクセンが貸し出す天体望遠鏡のアイピース。
星空関連の書籍も用意している。

星空デッキ利用料金・申し込み(全棟予約制)

デッキ数

10棟

利用料金

1棟 5,000円

利用可能人数

1棟当たりの利用可能人数は1~4名様

利用可能時間

18時00分~翌朝7時00分まで

受付可能時間

18時00分~22時00分まで

受付場所

浪合オフィス

関根慎一