オリンパスZUIKOレンズ 写真家インタビュー
心に響いてくる美しさの核を切りとる…高橋智裕さん
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
2019年11月20日 12:00
オリンパスのZUIKOレンズを使う写真家に、作品表現でのポイントや使い勝手をお聞きしていく本企画。
今回は写真家の高橋智裕さんに、写真を撮るとき気をつけていることや、撮影機材で重視していることなどを聞きました。レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」で撮影された作品も紹介します。
高橋智裕
たかはし ともひろ
1973年福島県いわき市生まれ、石川県金沢市在住。内閣官房・内閣府主催伊勢志摩サミットフォトコンテスト優秀賞受賞、官邸で表彰を受ける。2011年、小名浜港を取材中に津波に流されるが海保職員に救助され一命を取り留める。ドキュメンタリー・自然風景・スナップ・ポートレート・スポーツなど多岐に渡り撮影に携わり、様々な媒体に作品を提供している。また、災害防災アドバイザーとしての一面も持ち、テレビのコメンテーターをはじめ、多くの番組にも出演。講演の依頼も多く、生きることをテーマに活動している。協同組合日本写真家ユニオン(JPU)会員、日本風景写真家協会(JSPA)会員。
現在、どのような作品を撮られていますか?
メインは自然風景の中にある、私たち人間との共存や自然が持つ私たちに訴えかけてくる情景的なものをテーマとした撮影と、災害などの現場取材です。また、スポーツイベントやコンサートなどのオフィシャルカメラマンを務めさせていただくこともあったり、宗派問わず寺院の撮影なども行なっています。
東北から金沢へ移住されたとのことですが、お仕事や撮影内容、被写体との向き合い方に変化はありましたか?
金沢に移ってからなのか、ちょうど移ったのがその時期だったのかは自分でもわからないのですが、“自然との共存”という想いを強く持って撮影するようになりました。東日本大震災が転機だったような気がします。
その後も多くの自然災害を経験してきた私たちですが、やはり、自然の中に生かされていて、私たちは自然から恩恵も受けています。しかし、その自然が牙をむき、私たちに襲いかかってきます。自然から距離を置くのは難しく、自然の美しく優しい面と、敵意を剥き出しにして襲いかかってくる面を合わせて理解して生きていかなければならない、と思えたのがきっかけなのではないかと思います。
だから私は自然という被写体に向かい合う時は、優しさはより優しく、厳しさはより厳しく撮るようになったのかもしれません。
撮影時に心がけていることはありますか?
私が感じた想いを作品を観ていただける方に共有してもらえるように心がけています。
また、私は(写真家として)活動を開始した頃からずっと忘れてはいけない芯というか、強い軸というものを持って撮影を行っています。それは、「写真は写心」ということです。
どうしても自身の心ひとつで、作品に影響を与えたり、被写体の見え方が違って来るからです。だから撮影に入る場合は、雑念を捨て心をフラットにしてから被写体に向き合うようにしています。
スナップ撮影ながらマクロレンズを使用されていますが、以前からこのようなスタイルだったのでしょうか。
このレンズだけでスナップ撮影をしているわけではもちろんありませんが、美しいから、その美しさの中にある、最も心に響いてくる部分を切り取る撮影が好きなんですよね。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroは、35mm判換算で120mm相当ながらF2.8という明るさのレンズで、しかもご存知の通りものすごくコンパクト。マクロレンズだから寄れるは当たり前ですが、引きの撮影にもしっかり反応してくれます。
しかも、名機と言われ続けているようにキレるしボケる! ピントが合っている場所の“カチッ”とした合焦と、それを引き立たせる“とろーん”としたボケ味。一番見せたい場所を本当に素晴らしく浮き上がらせてくれます。
スナップでマクロレンズを使うコツがあれば、もう少し詳しく教えていただけますか?
マクロレンズは、その名前でマクロ撮影でしか登場させない人が多くいます。まず、そうした先入観を忘れて120mm相当の明るい中望遠系の単焦点レンズという考え方で使ってみるのがおすすめです。被写界深度が薄い分、ピント合わせをしっかりすると劇的なボケ具合を味わうことが出来ますし、絞りF8くらいで撮影すると、キレの良い望遠レンズとして風景などを収めることが出来ます。
一番見せたい場所をしっかりと描き出してくれること。これはマクロ撮影だけでしか引っ張り出さないなんてもったいないと思っているわけです。
気軽にスナップ撮影のお供に1本、バックに忍ばせておけば、ちょっと切り取りたいというシーンに遭遇した時でも気軽に取り出して望遠スナップが出来ますよ。
交換レンズに求める性能とは?
当たり前ですが、意図した部分にしっかり合焦してくれることが一番ですね。その他には、簡単に持ち出せるようなコンパクトさ。そして、堅牢さが欲しいです。私はよく現場でレンズを落としてしまうことがあるので(笑)。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの使用感や描写について、ご感想をお聞かせください。
ピントリングの操作性が好きです。軽すぎず重すぎずで、私にはとてもマッチしています。AFの動作はマクロレンズ特有のものがありますけれども、ストレスなくしっかり合焦しますし、ピントの合ったところのキレが本当に素晴らしいです。絞り開放時のボケ感は、トロッとした嫌味のないボケで、とても気に入っています。
オリンパスのカメラで気に入っている機能は?
せっかく持っている機材が、重くて持ち出すのが億劫になってしまっては、いくら名機と言われていても何の役にも立ちません。軽いって、コンパクトって、やっぱりとても大切なことです。オリンパスの機材全般になってしまいますが、やはり軽いは正義ですね。
こうしたコンパクトさはもちろん、防塵防滴・手ぶれ補正機能も秀逸です。スナップ撮影時だけでなく、災害現場などでも特にこの3つの性能は役立っています。
例えば風の強い日で、埃が舞っているような状況ですと、カメラに埃が侵入するのを不安になって、つい出すのを躊躇してしまいますし、雨の日などでは、防水のためにビニールなどで覆ったりしなければならないのが億劫になってしまって、撮影する以前に面倒になってしまいますよね。でもオリンパス機ではその憂いが全くありません。
手ぶれ補正機能については、これまでだとどうしてもISO感度を上げざるを得なかった撮影でも、ISO 200のまま手持ちで撮れる場面が増えました。スナップ撮影でもこれまで表現出来なかったことが出来るようになりました。マクロ撮影もそのひとつです。酸欠するくらい息を止めて行っていた撮影が、スマホでパシャッと撮るような気軽さで、絞り開放でマクロ撮影が出来るようになりました。
デジタルカメラマガジンにも高橋智裕さんが登場!
デジタルカメラマガジン2019年12月号の連載「日本列島 ZUIKO LENSの旅」で、高橋智裕さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの解説が掲載されています。
本連載は47人の写真家が47の都道府県を巡るというもの。今回、高橋さんは石川県を巡っています。ぜひ、あわせてご覧ください。
制作協力:オリンパス株式会社