イベントレポート

キヤノンが女子中高生向けのオフィスツアーを開催。カメラの分解体験で“技術の面白さ”を伝える

キヤノン株式会社は、下丸子(東京・大田区)にある本社オフィスで女子中高生を対象としたオフィスツアーを8月4日(月)に開催した。東京都と公益財団法人山田進太郎D&I財団が主催する「Girls Meet STEM in TOKYO」というプログラムの一環で実施したイベントだ。

「Girls Meet STEM in TOKYO」とは、STEM(科学・技術・工学・数学)分野における女性の活躍を推進することを目的としたプロジェクト。主に企業のツアー形式で行われ、女子中高生が自分がやりたいことや関心のあることを見つける機会を提供するプログラムとなっている。

キヤノンがこのプログラムに参加したのは今回が初めて。例えば女性エンジニアなど、いわゆる“理系”に進む女子生徒が日本全体でも多くないという認識を同社も持っているのだという。カメラをはじめとするイメージング技術開発の現場を体感してもらい、ものづくりへの楽しさを感じてもらいたい。そして参加者に理系分野への興味を深めてほしいという思いから、このプロジェクトへの参加を決めた。

オフィスツアーに参加した17名の中高生

会社を知る、仕事を知る

この日下丸子のオフィスに集まったのは、夏休みの期間を有効活用しようとみずからの意思で応募した17名。ふと筆者自身の学生時代を思い返し、その時間の使い方について「もっと充実させる方法があったのではないか」という思考や後悔が脳内を巡りつつ、参加者の意欲の高さに感心した。

ツアーはまずオフィスに併設されたショールームの見学からスタート。実はここ、一般には非公開のため見学できるのは非常にレアだったりする。キヤノンの歴史を彩る貴重な製品展示や、現在展開している事業内容を垣間見ることができる。

「カメラのイメージが強かったのですが、その技術を宇宙ビジネスなどに活用していることを知って、すごいなと感じました」と話してくれたのは中学2年生の参加者。自社の技術を他の事業に活用するということが、会社にとっても大事なことなのだと感じたそう。

企業にとって大事な歴史の解説。前身となる精機光学研究所時代につくられた最初のカメラの試作機を前に、企業のルーツについて聞いた
カメラの技術は「ネットワークカメラ」の事業にも生かされている。下丸子オフィス内に設置された監視カメラをコントロール体験するでは、超高倍率のズームで離れた地点を確認した。キヤノングループの高い技術により、遠く離れたものでも鮮明に見られたことに参加者はみな驚いたようだった

そしてなにやら楽しげなスポットに到着した一同。巨大なジオラマを囲うようにカメラ製品が並ぶこのエリアでは、最新モデルを含む様々な機種の撮影体験ができた。

慣れない手つきながらも、積極的にファインダーをのぞく姿が印象的だった。走る電車の模型を追いかけたりしながら、体験を楽しんだようだ。

カメラの分解体験

思わず筆者も参加したくなったのが、コンパクトデジタルカメラ「PowerShot V1」の分解体験だ。ドライバーを用いて、小さなネジを1つずつ外していく。小さなカメラの中に組み込まれたたくさんの部品を、細かく観察している様子も見られた。

PowerShot V1を分解していく

また、カメラの撮影画像から3D画像を作成するソフトウェア開発の現場も体験。実際にその場で撮影した画像から、アプリを介して3D画像を作成するという技術を目の当たりにした。

3D画像の作成体験。まずはカメラで被写体を撮影
撮影した画像はすぐにアプリで3D画像に変換。モニターのタッチ操作で画像を動かしてみた。大切なものを思い出に残す手段の一つとして、例えば学校の授業で制作したものや、お気に入りのスイーツなどを3D画像にしてみるといった活用法を提案された

最後に、実際にキヤノンで技術職として働く女性社員との座談会も行われた。進学に対する悩みであったり、学生時代の過ごし方など、何か少しでも情報を持ち帰ってほしいとの思いからこの席を用意したとのこと。

ある参加者は「いろんな好きなことを体験していくと、それが将来に繋がっていくという話をしてくれたのが印象的でした。これから自分の興味のあることに色々挑戦していきたいなと思いました」と感じたという。

座談会では、参加者から女性社員に多くの質問が寄せられているようだった
女性社員が自身の担当業務を具体的に説明している場面も

未来への選択肢のために

今回のオフィスツアーを通して、“技術の面白さ”を体感してほしいというのがキヤノンの思いだ。将来に向けて今はまだたくさんの選択肢があるなかで、イメージや先入観にとらわれず、自分がやってみたいこと、興味関心が高いことに、今後もどんどん挑戦してほしいと参加者にメッセージを送った。

参加者の中には、文系だけれどもイベントのチラシを見て興味が湧いたので応募してみたという生徒もいた。参加する前は“理系”という言葉に硬いイメージを持っていたが、カメラの分解体験や女性社員との懇談を通して、「ワクワクすることができそう」だという印象を受けたという。今後の進路を考えるにあたって、自分が文系であるという意識を取っ払ってみようかな、という感想も話してくれた。

社会には実に多種多様な職業が存在しているが、普段の生活を送っている中では、そのごくごく一部しか目に入って来ない。「世の中知らないことだらけだな」と社会で働く筆者も痛感するわけだが、前途有望な若者にとってこのような“知る機会”となるプログラムの意義は大きいだろう。

本誌:宮本義朗