オリンパスPROレンズ 写真家インタビュー

徹底した観察を経て被写体と向き合う…菅原貴徳さん

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(35mm判換算600mm) / マニュアル露出(F4.0・1/1,600秒) / ISO 320

オリンパスPROレンズをお使いの写真家にお話をうかがう連載「オリンパスPROレンズ 写真家インタビュー」。

今回は菅原貴徳さんに、作品のこと、撮影のこと、そして「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」について語ってもらいました。

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菅原貴徳
すがわら たかのり:平成2年、東京都生まれ。東京海洋大学、ノルウェー北極圏への留学、名古屋大学大学院を経て、フリーの写真家に。図鑑や専門誌などに写真やエッセイを寄稿している。


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写真家になったきっかけは?

「写真家」になることだけが選択肢だったわけではないのですが、高校生の頃から「鳥に関わる職業を見つけたい」という、ぼんやりとした思いがありました。写真をはじめたのは、鳥を見始めたのと同じ頃で小学校5年生の時。大学に入る頃あたりから、それまでに撮影した作品がコンテストで入賞したり雑誌に載ったりするようになり、自分の中で写真の割合が増えていったように思います。

転機は、22歳でノルウェー北極圏へ1年間の留学に行った時。この間に撮りためた作品を野鳥専門誌「BIRDER」で大きく扱ってもらい、以降、学生と写真家の二足の草鞋を履く生活が数年続いた後、仕事が増えたのを機に2017年に26歳で正式にフリーランスの写真家になりました。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(35mm判換算600mm) / マニュアル露出(F4.0・1/1,000秒) / ISO 250

影響を受けた写真家、写真集など。

200冊近い写真集を所有していますが、もっとも繰り返し開いたのは菅原光二氏『日本フィールド博物記』(小学館、1997年4月)でしょうか。父親の本棚にあったもので、初めて開いたのは小学生の頃です。動植物から自然風景、人の営みをやさしい目線で広く切りとった本で、今でもお気に入りです。なお、同姓ですが親戚ではありません。

野鳥写真家では、中野耕志氏、戸塚学氏、中村利和氏です。専門誌に載る作品を見て、鳥の世界への興味が増していったのは間違いありません。

ここ数年は、野鳥写真家だけでなく、モンゴルを長年取材されている清水哲朗氏や世界各地のジャングルを彷徨っている佐藤岳彦氏など、ドキュメンタリー作家の取り組み方に刺激を受けています。

どのような場所でどんな被写体を撮影されているのでしょうか。

国内外問わず撮影に出かけますが、2018年は、4カ月を海外取材に費やしました。居住経験があり、土地勘があるノルウェーは今後も続けて通いたいフィールドです。そのほか、これまでに27の国を訪れましたが、どこへ行ってもその土地ならではの空気と人、そしてそこに暮らす鳥たちの姿に魅力を感じます。

まだまだ知らない世界があるので、機会があれば新しい土地へも出かけていきます。行った先で何に出会えるかワクワクしたいので、鳥に関する情報は過度に仕入れず、現地で五感を頼りに探すようにしています。その際、日頃から地元のフィールドで鍛えた観察力・経験が役に立ちます。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(35mm判換算600mm) / 絞り優先AE(F4.0・1/1,250秒・±0EV) / ISO 320

野鳥の撮影で心がけていることは?

なにより優先しているのが"鳥の生活の邪魔をしないこと"。じっくり観察して、鳥の仕草や表情を見ながら、どこまで近づいていいのかを探ります。そのため、ほかに撮影者がおらず、自分と鳥だけでじっくり向き合える場所を選ぶようにしています。

鳥の表情がいいとお褒めの言葉をいただくことが多いのですが、このような(鳥への)気づかいが反映されているのだと思います。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO +M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(35mm判換算840mm) / 絞り優先AE(F5.6・1/80秒・-1.3EV) / ISO 250

撮影機材に求めることをあげてください。

様々な状況下で、確実に写真を残してくれること。これまでにも土砂降りのスコールや吹雪など、過酷な状況下でも機材にはカバーをかけず撮影してきました。ですが、優れた防塵防滴性能のおかげで、カバーをかけずとも未だ故障の経験はありません。

機材の故障は、しばらく修理もできないような旅先では、その後の撮影に影響を及ぼすだけでなく、モチベーションも下げてしまう、という意味でも(防塵防滴性能は)重要です。

高速で動く被写体を追うコツなどはありますか?

鳥の動作を予測することです。例えば、鳥は種類によっても、何をしているかによって飛び方が異なります。街中にいる鳥を見ても、ハトは高速で羽ばたいてまっすぐに飛びますし、ハシブトガラスは羽ばたきと滑空を交えてふわふわ飛びます。

冬に水辺にやって来るユリカモメは、採餌の時はホバリングや急降下を織り交ぜながらトリッキーな飛び方をしますし、移動の際にはあまり上下動は交えず、まっすぐに飛びます。

このような違いをしっかり把握することが大事で、そのためには日頃から"よく観察すること"に尽きます。こうした蓄積は、ファインダー越しに被写体を追う際の参考になるだけでなく、AFエリアの広さやC-AFの追従感度設定、シャッタースピードなどを決めるときにも役立ちます。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(35mm判換算600mm) / 絞り優先AE(F4.0・1/250秒・+0.7EV) / ISO 250

オリンパスの機材と野鳥撮影の相性は?

非常によいと感じます。例えば静音シャッター。鳥は音に敏感で、気持ちよさそうにさえずっている時でも、聞きなれないシャッター音がすると、嫌がって鳴き止んでしまうことがあるほどです。

また、小型・軽量であるということも、撮影の動作を小さくできる点で有利です。これら機材の特徴のおかげで、鳥に与えるプレッシャーを軽減できているように感じます。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(35mm判換算600mm) / 絞り優先AE(F4.0・1/400秒・+0.3EV) / ISO 250

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROの印象は?

AF性能が高く、ちょうど振り回しやすいサイズ感であることもあり、飛翔撮影の成功率が高いです。

また、小型・軽量であることで、これまで超望遠撮影が難しかった場面でも使えるようになりました。例えば船の上からの撮影。揺れが大きく、バランスを崩す危険を伴う状況ですが、機材が小型・軽量であれば、撮影に意識を集中できます。この夏の海鳥の撮影でも役立ってくれました。

手ブレ補正性能には驚きしかありません。テレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」を併用した時の焦点距離は840mm相当になりますが、1/8秒の低速シャッターでも、木の幹によりかかるだけでブレのない写真が撮れたので。

おかげで三脚を使うには不便な森の中でも、手ブレを心配せずに手持ちで小鳥が追えます。

手ブレの補正効果は「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」の高画質を活かすのにも一役買っています。総じて満足度は高く、私の標準レンズです。

撮影:菅原貴徳
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO +M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(35mm判換算840mm) / 絞り優先AE(F5.6・1/10秒・-0.7EV) / ISO 1000

BIRDER × OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II写真展「Wild Bird」開催

菅原貴徳さんはじめ、中野耕志さん、中村利和さん、水中伸浩さんの4名の野鳥写真が展示される写真展「Wild Bird」がオリンパスプラザ東京にて10月26日〜10月31日にかけて開催されています。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIで撮影した作品が大きくプリントされ、ギャラリーを飾りますのでぜひご覧ください。東京会場の次は、オリンパスプラザ大阪(11月16日〜11月22日)に巡回します。

トークイベントも予定しています。オリンパスプラザ東京分は10月27日に終了していますが、オリンパスプラザ大阪でも11月17日の開催予定です。

オリンパスプラザ東京

会期:2018年10月26日(金)~10月31日(水)
所在地:東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビルB1階
開館時間:11時00分〜19時00分(最終日は15時00分まで)
休廊日:木曜日
トークイベント:2018年10月27日(土)※終了しました

オリンパスプラザ大阪

会期:2018年11月16日(金)~11月22日(木)
所在地:大阪府大阪市西区阿波座1-6-1 MID西本町ビル
開館時間:10時00分〜18時00分(最終日は15時00分まで)
休廊日:日・祝日
トークイベント:2018年11月17日(土)
時間・登壇者:13時00分~14時00分・中村利和×菅原貴徳 / 14時30分~15時30分・水中伸浩×菅原貴徳
入場・参加費無料

デジタルカメラマガジンにも菅原貴徳さんが登場!

デジタルカメラマガジン2018年11月号の連載「PRO's SIGHT—PROが見た風景—」には、菅原貴徳さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROの解説が掲載されています。あわせてご覧ください。

制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部