山岸伸の「写真のキモチ」

第66回:写真を通して深まり広がる関係性

ミステリーハンター 坂本三佳との28年

以前撮影した旅とカメラを意識した坂本三佳ちゃんの宣材写真

知り合って約28年になる山岸さんと女優・タレントの坂本三佳さん。彼女が約25年前に「日立 世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターになったとき、山岸さんはあるアドバイスを贈る。被写体としてだけでなく写真を通して築いてきたその関係性とは。(聞き手・文:近井沙妃)

写真を撮りなさい

テレビ番組「日立 世界ふしぎ発見!」が今年3月末で約38年の歴史に幕を閉じる。ミステリーハンターとして長く出演し続けた坂本三佳ちゃん。その回数は25年で合計85回(スペシャル回を除く)と歴代2位だ。3月9日放送の第1700回「新発見!ポンペイの真実」がレギュラー放送の最終回であり、彼女がミステリーハンターを務める最後となった。

三佳ちゃんとの出会いは約28年前。彼女が高校生だった頃に事務所の社長さんから水着のグラビア撮影を頼まれ、私はそのとき「いや~、やめておいた方がいいんじゃないですかね」と逆に社長さんへ進言した覚えがある。それでも「ご両親とお話しもしたし、彼女をグラビアでデビューさせたい」ということでグラビアが週刊誌に掲載されたのだが、私が心配した通りさっそく高校から呼び出しがあってご両親は厳重注意をされたということだった。今はそんなこともあったねって笑えるんだけどね。

その一件から縁が深くなり、彼女がミステリーハンターのオーディションに受かるまで写真集やグラビアを撮ったりというお付き合いをさせてもらった。次第にタレントや女優業に専念し活躍するようになりグラビアとは縁遠くなったが、ミステリーハンターとして海外取材へ行くようになった彼女に私は1つだけ素晴らしいことを言ったような気がする。「写真を撮りなさい。小さなカメラでもいいからロケに行ったら必ず写真を撮りなさい。自費や自力で行けるような海外ではなくテレビの取材でなければ行けないところが多いのだから、尚更カメラを持って時間があれば写真を撮りなさい」

彼女はそれを守ってくれて、時折その写真を見てアドバイスなどをしてきた。ある程度の年月が経ち写真を見せてもらうとびっくりするぐらい面白い写真、びっくりするぐらい私たちが見たことがないような海外の写真があった。そこで私は当時非常にお世話になっていたカメラメーカーのオリンパスへ彼女を推薦し、ギャラリーで2度ほど写真展を開催することに繋がったんだ。

私が写真展をすれば彼女が来てくれ、トークショーをするときにゲストで来てもらったり、CP+で一緒に登壇したりと、普通のタレントさんとは違うお付き合いを長くさせてもらってきた。彼女が所属する事務所の社長さんが亡くなられてフリーの状況になったときに相談があったので尊敬する西田敏行さんの事務所に推薦し、つい先ごろまでその事務所に所属し俳優業をしていた。

今回ミステリーハンター最後のロケになるということでロケに行く前に挨拶に来てくれた。最終回に坂本三佳を選んでくれた番組も素晴らしいし、それに応えられる彼女も素晴らしく誇らしい。今回はおめでとうとお疲れ様の気持ちを込めて彼女との今までを記事にしたいと思う。

写真を通して深まる広がる関係性

少し写真で振り返る。2002年に出した写真集だが、グラビアはあまり多く撮影していないので貴重な1冊になっていると思う。まだ若い頃ということもあって彼女は恥ずかしいかもしれないね。

坂本三佳写真集(コンパス・2002年)より
坂本三佳写真集(コンパス・2002年)より

私が2010年6月から毎月配信しているインターネットラジオ番組「世界に光の中で」。その第26回と第74回にも登場してもらい三佳ちゃんがミステリーハンターを通して見てきた世界について話してもらったことも。

CAPA誌面より。「世界の光の中で」はYoutube配信と連動してカメラ誌「CAPA」に毎月掲載されている

冒頭の写真も含め、何度か宣材写真を撮影させてもらっている。大切な宣材写真を任せてくれることも成長や変化が見れることもカメラマンとして嬉しく思う。

自社スタジオで撮影した宣材写真

私が2016年に日本写真協会賞作家賞を受賞したとき、三佳ちゃんがプレゼントしてくれたカメラモチーフのネクタイとカフリンクス。誕生日祝いや海外ロケでのお土産や差し入れなどを手に顔を見せに来てくれたりと気遣いがありがたいね。

三佳ちゃんがお祝いにプレゼントしてくれたネクタイとカフリンクス

2016年と2018年にオリンパスギャラリー(現・OM SYSTEM GALLERY)で開催された三佳ちゃんの写真展。写真を選ぶ際に相談に乗ったり、物販用のポストカードを制作したり、トークイベントを一緒にしたりとプロデュースをさせてもらった。

他の人がなかなか行けない場所で写真を撮ってこれる。ただ行くだけじゃなくて取材をしているから深みがある。それって本当に大変で特別なことなんだ。テレビのカメラがどう映しているか、自分もどう映っているか、自分はどう写真に写すか、自然と鍛えられる部分もあったんじゃないかな。

(上)坂本三佳写真展「坂本三佳の世界旅」2016年
(下)坂本三佳写真展「Present」2018年 いずれもオリンパスギャラリー東京・大阪にて
(左)写真展開催に合わせて制作したポストカードと山岸伸写真事務所からのお花
(右)三佳ちゃんが当時所属していた事務所の西田敏行さんからもお花が届いていた
写真展にてトークイベントやオープニングの様子
なんと三佳ちゃんの写真展には写真家の加納典明さんの姿まで!

2017年のCP+ではオリンパス(現 OM SYSTEM)のブースで一緒に登壇して大勢のお客さんの前で旅の記憶を写真で伝えることをテーマに話をした。

CP+2017 オリンパスブースにて

同じくオリンパスのステージに登壇した写真家の清水哲朗さんと茶目っ気たっぷりの記念写真。哲朗さんにも掲載許可を取ると、どうぞどうぞと喜んでくれた。

写真家の清水哲朗さん、三佳ちゃん、私で記念写真

時には一緒に銚子電鉄へ行ってお手伝いをしてもらったり、とかち帯広に同行してばんえい競馬や今話題のジュエリーアイスを撮りに行ったりと楽しい思い出がたくさん。彼女が撮った写真を見るのも面白いが一緒にカメラを持って歩くとまた違う発見がある。数多くの世界を見てきた彼女だからこそ違いや共通点を見つけたり、着眼点にハッとすることもあってこちらも楽しいんだ。

2021年12月末 銚子電鉄にて
電車に乗り犬吠埼や終点の外川駅などでも撮影をした
2021年12月末 銚子電鉄にて
2022年1月上旬 とかち帯広にて、私が到着していつも1番最初に行くラーメン屋 大光の前で
続いて幸福駅でお互いスナップを撮影したり
ばんえい競馬 朝調教の撮影へ
ジュエリーアイスの撮影へ。ジュエリーアイスの名付け親である浦島久さん、お世話になっている十勝観光連盟の梅村さんと
冬の海に輝くジュエリーアイス

このロケでの繋がりや帯広市と彼女の出生地である静岡県松崎町が開拓姉妹都市だったことから2022年より私と同じとかち観光大使に任命され現在に至っている。

私たちのとかち観光大使としての名刺とその報告にお土産を持って来てくれた三佳ちゃん

以前ゲストとして登場してもらった「世界の光の中で」だが、最近は進行として三佳ちゃんにも時々出演してもらっている。こうしてたくさんの写真と映像の世界を味わい、なにか肥やしになって更にいい写真を撮っていければ楽しいよね。

(上)ゲストの善本喜一郎さんと
(下)ゲストの片岡英統さんと

写真展会場での記念写真の一部。長い間、私が写真展を開催する度に彼女も足を運び私の写真をしっかりと見続けてくれている。

(左上)写真展「End of summer」にて
(右上)写真展「瞬間の顔Vol.12」にて (下)写真展「KAO」にて

最後に現在靖國神社の遊就館内のギャラリーにて開催中の「靖國の櫻」に来てくれた時の記念写真。ロケを終え元気に帰ってきた三佳ちゃんと。

写真展「靖國の櫻」にて

また、写真を通じて

高校1年生の三佳ちゃんと出会い、大きく成長してお互いに写真の話が出来るようになった今。写真の繋がりでとても有意義な28年になったと思う。

また時間があれば十勝へ一緒に行って写真を撮ったり、写真の旅をしたり撮り合ったり、トークショーをしたり、三佳ちゃんが撮った写真を見ながらみんなで楽しく集まることができればいいな。そしていつか”坂本三佳が世界ふしぎ発見!のロケで行った写真集”が出来たらとても素晴らしいな、なんて思っている。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。