山岸伸の「写真のキモチ」
第65回:オンデマンド印刷に見た可能性の広がり
個人的フォトブック制作遍歴
2024年2月29日 12:00
長く商業カメラマンとして活躍する中でデジタルの普及によりオンデマンド印刷が身近になった結果、写真が個人的な方向へも広がりを見せたという山岸さん。どのようにオンデマンド印刷を取り入れ、何を思うのでしょうか。(聞き手・文:近井沙妃)
個が生きるフォトブック
私の写真がより個人的な方向でも発展を見せたのが2008年ぐらいからだと思う。デジタルになり非常に楽と言ったら失礼だが、カメラやパソコンなどの周辺機器やオンデマンド印刷のサービスも発達し、個人でフォトブックやポストカードを作ることが簡単に出来る時代に入ってきた。
私は当時から女性を撮るためにミニスカポリスというグループを自分の事務所でかかえていて、最初にミニスカポリスを作ったプロデューサーに許可をいただいて「ミニスカポリス」という名前も商標登録を取って撮影させてもらっている。長いことたくさんの女の子たちと出会い、たくさんの写真を残してきた。
現在も19代目として活動していて、ここ3~4年はアシスタントの近井が宣材写真などを撮ることが多いが、それ以前はグラビアも全盛期でメンバーにグラビアもできる子が多くいたので私はかなり撮り込んでいた。そんな中でミニスカポリスのリーダー的な女の子や近しい女の子のフォトブックを最初に作り始めたんだ。仕事でたくさんの人が関わり作り上げる写真集とはまた別で、自分主体で決める部分が多く自由度の高いフォトブックにも面白さを感じた。
アスカネットのマイブックで「ヒトリジメ」の始まり
当時アスカネットにお願いをしてマイブックというサービスで非常に格安で作っていただき、50部限定でその子のファンや私のファンに販売したんだ。少部数のみの販売で本人の直筆サインとメッセージ入りの非常にプライベート的なフォトブック。このシリーズを「ヒトリジメ」と名付け、5年間で約35冊制作した。
中には現在でも仕事をしている子が多くいて、連絡が取りやすい子もいて、また昨年と今年と一緒に仕事をしている子もいる。みんな元気で頑張ってくれているので嬉しいね。そうでない子もたまに私のところへ連絡をくれたりしてまったく縁は切れていない。
このシリーズの第1弾目はミニスカポリスの滝ありさちゃんだった。一時は私のマネジメント事務所に所属して頑張ってくれて、本当にたくさんの写真集やDVDを撮影した。私が被写体探しに困ったときは必ず滝ちゃんにモデルになってもらったりと、両者恩人のような関係だった。
復活!ミニスカポリス(14~15代目)のリーダーを務めてくれた藤井梨花ちゃん。
同じくポリスのメンバー、永瀬はるかちゃん。彼女とはロケでインドネシアへ行き、ジャカルタで大勢の人たちの前で仕事をした。この時代はレタッチをあまりしていないのでカメラに搭載されたアートフィルターなども使ってバンバン撮っていた気がする。
昨年写真集を出させていただいた華彩ななちゃんとは本当に長い付き合いになった。ななちゃんはミニスカポリスに入ってもらいたい1人だったが彼女は彼女で当時いろいろと活動していたこともあり難しく、同じ事務所の藤井梨花ちゃんがポリスのリーダーになってくれた。ななちゃんはそれ以降、1番グラビアを撮った女の子だと思う。現在も頑張って活躍してくれているので私も昨年は彼女の写真集出版と写真展ができたし、グラビアの女の子の写真展を開催することは大きな冒険だった。
広瀬玲奈ちゃんは彼女が高校生時代からお父さんと知り合いなのでよく撮影した思い出がある。この1枚は沖縄で。写真自体もなんだか若いね。こんな写真がまた撮れたらいいな。
飯田ゆかちゃん。先日お母さんと写真展に来てくれて嬉しかった。この1冊はとてもとてもかわいいヒトリジメになった。その後も何度か撮らせていただいたが最近は機会が無く、大人になった彼女ともう一度仕事をしてみたいなと思う。
秦瑞穂ちゃん、今でも精力的に活動していて私も年に1度くらい仕事をさせてもらっている。過去にDVDを何本も撮影させてもらい今年もまたリリースの予定がある。被写体として最高で、いつまでも可愛く綺麗でいつまでも頑張ってくれている秦ちゃん。もちろん私も応援しているし秦ちゃんも私を応援してくれていると思う。
今回は一部を紹介したが、このようにたくさんのヒトリジメを作らせてもらってきた。この頃は本当にアスカネットにお世話になって、アスカネットでなければこの企画は出来なかった。そして時を経て、また新しく進化したものを作りたいとも思っている。
被写体の皆さんから必ずサインとメッセージを書いていただき大切にとっているが、そこには今見返しても胸を打つような言葉がある。ある意味私のグラビアアルバムであり、思い出のアルバムだ。購入者の方へも、私のスタジオで彼女たちの個人撮影会などをしていたのでその時に目の前で書いて手渡ししたり郵送していた。きっとみんなも大切に持ってくれていると思う。
しまうまプリント
また時が経って、より手軽で安価にフォトブックができるようになった。これはしまうまプリントで作ったスタンダードなものだが、それでもデータさえしっかりしていれば皆さんの手元に届いてもクレームがつくようなものではない。左は銚子電鉄の袖山さんや銚子電鉄と企画したもの。右は18代目ミニスカポリスのフォトブックだ。
キヤノン「DreamLabo5000」
私が1番最初に作品として残したのは2016年に日本写真協会賞 作家賞を受賞したとき。キヤノンマーケティングジャパンがお祝いにと作ってくださった「賀茂別雷神社(上賀茂神社)」の写真集だ。キヤノン製DreamLabo5000というインクジェット式の業務用フォトプリンターで出力したものだが、これは本当に最高の技術を使ったオンデマンド印刷だったと思う。現在はこのプリンターが導入されているサービス会社も多いのでこれで写真集を作られている方も多いと思う。近い将来私もこのDreamLaboでまた写真集を1冊作ってみたいな。
KOMORI「インプレミアNS40」
現在、靖國神社の遊就館内ギャラリーで写真展「靖國の櫻」を開催しているが今回思い切って株式会社小森コーポレーションの水性インクジェット印刷機「インプレミアNS40」でB1サイズを50枚印刷。なんだって新しいことをするときはリスクを伴うのが当たり前。とにかく前に進むための選択をした。
興味を持っていただけたら、是非遊就館内のギャラリーへ来てその目で確かめて欲しい。受付で私の写真展を見に来たと言えば通してもらえるはずだ。
オンデマンドのメリットもデメリットもあるが、クオリティそのものが上がってきている時代。自分の写真活動の中で用途との相性の良さを感じたら柔軟に取り入れ可能性を広げていきたい。