山岸伸の「写真のキモチ」

第41回:笑顔写真プロジェクト

笑顔を、もっといっぱい。

笑顔表情筋プランナーの北野珠誇さんとの出会いによって2015年冬に始動した「笑顔写真プロジェクト」。笑顔がもたらす効果・笑顔表情筋とは、そしてこのプロジェクトの歩みと目標について、お二人にお話しを聞きました。(聞き手・文:近井沙妃)

やっぱり笑顔なんだ

月並みな表現かもしれないが、やっぱり人を幸せな気持ちにするのはいつだって笑顔なんだ。もちろん人生には笑顔ではいられないことだってあるし、それが必ずしも悪いことではない。だけど笑顔は自分にも周りの人にもいい影響を与え、人と人をつなげてくれる。カメラマンになってから今日に至るまで、俺はたくさんの笑顔を撮り続けてきたつもり。

2013年の秋、とある写真展の会場で北野さんと知り合いになった。北野さんの肩書きは笑顔表情筋プランナー。顔の「表情筋」を鍛えると笑顔が美しくなると同時に、脳を活性化させて内面からも若返ることができる。それを多くの人に知ってもらうのが北野さんのお仕事。笑顔美人塾主宰や笑顔表情筋協会代表として、レッスンをはじめ笑顔に関する講演や取材も数多くこなしている。

(北野)私が表情筋を学び始めたのは、自分自身がほうれい線に悩んでいたからなんです。40歳になった時にほうれい線によって年齢以上に老けている自分にものすごくショックを受けて、どうにかほうれい線を薄くしたくて色々と試す中で出会ったのが表情筋でした。理論を学んで実践して顔が劇的に変化したところから「これは間違いない美容法だ!」と思い、本格的に学び始めました。

(北野)元々は歯科衛生士をしていて口元の噛み合わせなどの知識は持っていたので歯科衛生士と表情筋の知識や脳科学を組み合わせて、シワたるみだけでなく笑顔力もアップすることに特化した”笑顔表情筋”というメソッドを指導しています。

そんな北野さんとの会話の中で自然と生まれたのが「笑顔写真プロジェクト」。100人の笑顔を撮る。そしてその笑顔写真で壁一面を埋め尽くす。きちんとプロジェクトとして形にしながら続けていくために2015年の冬に商標登録を取ったんだ。

北野さんと合同で「笑顔写真プロジェクト」の商標登録を取得

このプロジェクトのモデルとして、北野さんが主宰する笑顔美人塾を通して笑顔が素敵になった生徒さんたちに参加してもらった。100人を5日間にわたって撮影したが、みなさんとは撮影当日が初対面。事前のイメージは無く、この人の魅力はどこなのか、どのように引き出し、どう撮るのか、すべてを短時間で判断する。「はい、笑って~」と言ったところで自然な笑顔が出るとは思えないので、たわいのない話をしながら撮影したり、撮影前や撮影中に北野さんから笑顔表情筋のプチレッスンやアドバイスが入った。

また、年齢を問わずに健康的で生き生きとした女性達の美しい笑顔を写真に残すことに共感いただき、美と健康を応援するハーバー研究所の協賛のもと、参加者はハーバーの化粧品を1週間使用した後での撮影が行なわれた。

(北野)生徒の皆さんは写真に写ることが苦手な方が多いんです。それは「笑顔に自信が無い」「写真だと笑顔に見えない」「笑っているつもりでも笑顔に見えない」から。そんな生徒さんたちが私のレッスンを受けて素敵な笑顔に変わっていき、その笑顔を山岸先生が写真に残してくれる。みなさんは大巨匠に撮影してもらえるということで緊張もあったかもしれませんが、現場は和気あいあいとしていて撮影データを見て更にまた笑顔が生まれていましたね。

左上:北野美誇さん(笑顔表情筋プランナー)、右上:川邉翔子さん(カラーセラピスト/ColorBlossom代表)、左下:蜷川恵美子さん(印象アッププロデューサー/美人養成塾 代表)、右下:成田育未さん(主婦)成田さんの娘さんは後にミニスカポリスのメンバーになったご縁も

2016年3月、新宿のオリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール(現OM SYSTEM PLAZA クリエイティブウォール)で写真展を開催。モデルになってくれたみなさんやご友人などたくさんの方が会場に訪れ、笑顔で溢れていた。北野さんと皆さん、そしてハーバーさんのおかげで、見る人を幸せな気持ちにする展示ができたと思う。

写真展設営風景
設営を終えて北野さんと記念写真
展示されたみなさんの笑顔、そして訪れた方たちの笑顔で溢れていた

写真を撮ると同時に、写真を通して知り合って人間関係を広げていくことが俺の写真道。結果的に100人の素敵な笑顔を撮影できて、100人の方と知り合うことができた。この写真展をもって、「笑顔写真プロジェクト」に一つの区切りがついた。

第二弾のスタート

2022年の4月から、第二弾の撮影をスタートさせた。今回も引き続き北野さんから紹介をいただきながら、自分でも知人に声をかけたり、そこからまた推薦してもらったりと参加者の枠が広がっている。

また、第二弾ではカメラはOM SYSTEM OM-1を使用、アートフィルターの「デイドリームI」にピンホール効果をつけ、アスペクト比は1:1、同じライティングで撮影することをフォーマットにしている。参加者には服装をなるべく白やパステルカラーなど明るく淡いものを着るようにお願いしていて、これは全員の写真が並んだときの雰囲気の統一と平等性を考えてのこと。撮影時には、このプロジェクトに協力しているという共通認識の意味も込めて簡単にプロフィールなどを書いてもらっている。

合意の上でプロジェクトに協力しているという共通認識を残す

嬉しい再会

協力してくれそうな自分の知人に声をかけるようになり、たくさんの再会もあった。田代さんとは20年前に九州朝日放送KBCの人気番組「Duomo(ドォーモ)」で俺が撮る写真集のモデルを公募し、その中からオーディションで決まった方たちを九州で撮影したことがきっかけで出会った。再会したのは10年ぶり。笑顔を撮って20年の時の長さを感じながら、彼女と楽しい時間を共有できた。

当時の写真集を持って記念写真も。彼女の撮影は唐津の海辺で行われた

あいちゃんは23年前に写真集を出させてもらったり、成人式のときは式の後に俺のスタジオに寄ってくれて写真を撮ったりもしたね。現在は士業の方々のサポートや経営者の方々の希望を叶える会社の代表取締役をしている。この日は友人や自分の会社の秘書も連れてきてくれた。こうやってお互い元気でいて、昔写真集を撮った人と繋がっていられることがとても嬉しい。

成人式のとき、撮影後の記念写真。お互い若いね(笑)
現在のあいちゃんは美しく、かっこいい社長さんになっていた。上段右は松﨑瞳さん。彼女も後日快く笑顔女子を紹介してくれた

俺は基本的に撮影の最後には記念写真を撮る。名前の通り記念になるのはもちろん、最後にみんなで笑顔で記念写真を撮ることによって気持ちのいい後味と記憶が残ると思うんだ。「撮らせてくれてありがとう」と思いながら自分も写っているし、記念写真を撮ることは握手以外でその気持ちを伝える行為のように感じる。

新しい繋がり

フォトグラファーの今井しのぶさんはこどもとかめらの代表取締役。自社スタジオでの撮影や出張撮影、カメラを通して子育てが楽しくなるような活動を続けている。フォトグラファーの養成スクールも開いていて、「笑顔女子を紹介してほしい」と連絡を入れてみたところ「笑顔写真、ぜひご協力できることがあればと思っていました!」と返事をくれて、ご自身の生徒さんをたくさん連れてきてくれた。

今井さんは本当に笑顔が素敵で明るいパワーがあって、彼女の周りに人が集まる理由がわかる
ある日の記念写真。今井さんはなんと合計30人もの素敵な生徒さんを紹介してくれた

第一弾にも登場した翔子ちゃんは日ごろから俺を応援し、このプロジェクトにも積極的に協力してくれている。彼女が紹介してくれた山野さと子さんはファミリーソングシンガーという肩書きで代表曲に「ドラえもん」の主題歌などがある(大杉久美子さんから引き継ぎ担当)。彼女のレーベルは俺も親交が深い日本コロムビアで、新しい出会いと繋がりにまた嬉しくなる。葉坂さんは今年のお正月に新春ヨドバシ記念撮影会に来てくれたり、わたなべなたわさんは仕事仲間を笑顔写真に推薦してくれた。

左上:川邉翔子さん(カラーセラピスト/ColorBlossom代表)、右上:山野さと子さん(ファミリーソングシンガー)、左下:葉坂さん、右下:わたなべなたわさん(女優/フリーアナウンサー)
左下から時計回りに、山野さと子さん、わたなべなたわさん、山田リイコさん(歌手・音楽家)、川邉翔子さん
(写真左)左から葉坂さん、奈良さん、川邉翔子さん、大牟田さん。(写真右)左から寺尾さん、峯岸さん、川邉翔子さん、眞木さん

このように、参加してくれたみなさんがそれぞれ自分の友人・知人に声をかけてくれてどんどん新しくつながっていく。笑顔が広がっていく。日々撮影を重ねるごとにそう感じる。

そして引き続き共にプロジェクトを進めている北野さん。今回は友人を中心に紹介してくれているのだが、北野さんもこの業界で長年経験を積まれて彼女の周りには俺が普段なかなか出会わない様々な職業の方が集まっている。

みなさんそれぞれ会社の代表取締役や団体の主宰としてバリバリ活躍されている上に美しい。その美しさは活躍されているが故であり、「美」を意識した会社を経営していたり交友関係がある相乗効果なのだと思う。俺も今まで知らなかった世界が垣間見えて多くの発見があることが、この撮影の楽しみのひとつになっている。

左から長谷川暢子さん(ヒーリングサロン・ルブラン主宰)、土谷愛さん(マーケティングコンサルタント・プロモーション代⾏/mideal inc. 代表取締役)、北野美誇さん、吉村直子さん(イメージコンサルタント/Neopression代表取締役)

先ほどお話しした通り、参加者のみなさんに服装はなるべく白やパステルカラーでとお願いしているが、中には連絡が間に合わないケースもある。中山かすみさんは遠方からお越しいただいて、彼女が撮影の詳細を聞いたのはこちらに向かった後だった。決してひとりだけ派手にしようとしたのではなく、わざわざ遠くから来ていただいたのでそのまま撮影したんだ。彼女は俺と会う前に俺の手の調子が悪いことを知って心配してくれて、健康手袋を持って来てくれた。そんな気遣いにも本当に感動したね。

北野さんが紹介してくれた、ピンクがよくお似合いの中山かすみさん(ハート・ウェル 代表)

フィールドが近づいた

北野さんは活動を続けていく中で、最近は2022 MISS JAPANのビューティキャンプで笑顔表情筋セミナーの講師を務めた。MISS JAPANは俺もファイナリストのプロフィール写真などをオフィシャルで撮らせてもらっていてるので、だんだん近いところで仕事をできるようになってきて嬉しい。

2022 MISS JAPANビューティキャンプでの様子と記念写真

もっと笑顔を、もっとたくさん

(北野)少し前に北野美穂子から北野珠誇(みほ)に改名して、すごく調子がいいんです。表情筋をより深く学び、今まで17年間で2,000人の方へ指導しましたが、もっともっと日本全国に笑顔美人を増やすことが私の夢です。第一弾の撮影時には大学生だった娘のともかも、今はパーソナル&メンタルトレーナーとして活躍しています。私の仕事を尊敬し協力してくれることもあり、親としてとても幸せですね。

(北野)私も過去と見比べると第一弾のときは口を閉じた笑顔でしたが、今回は歯の見える笑顔。今の笑顔の方が好きです。娘は「ともか先生」という名前で活動中、ぜひInstagramやTikTokで検索してください

撮影した写真で俺が「笑顔写真プロジェクト」に使用しないアザーカットはみなさんにプレゼントしていて、写真を喜んでSNSへの投稿やプロフィール写真に使ってくれている。その写真を見た人が笑顔を褒めてくれたり、このプロジェクトを知って興味を持ってくれて、笑顔がもたらす効果を感じている。さらに規模が大きくなって「笑顔写真」でみんなが幸せになっていけることが俺の目標。第二弾の参加者は現状100名を超えたが、年内に200人達成を目指しながらどのような形で発表するかを日々考えている。

もっと笑顔を、もっとたくさん撮り続けたい。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。