写真展リアルタイムレポート
その人に寄り添い、その人生を肯定したい。「写真家・平間至の両A面」
富士フイルムフォトサロン東京で6月30日まで
2022年6月23日 09:00
この会場には忌野清志郎や安室奈美恵、Mr.Childrenといった著名なアーティストと、一般の人々のポートレートが混然一体となって並ぶ。人々の表情、出で立ち、佇まいが何かを語りかけてくる。その人が歩んできた人生の綾だったり、時代の空気であったり。そんな写真展「写真家・平間至の両A面」が富士フイルムフォトサロン東京で6月30日まで開催中だ(関連記事)。
どうしたら被写体が楽しめるか
平間さんは宮城県塩竈で2代続く写真館の家に生まれた。写真を学びながらも家業には反発。渡米し、帰国後は商業写真の道に進んだ。
1990年からフリーランスで活動を始め、ファッション誌や音楽雑誌、コマーシャルの依頼でポートレートを撮影した。約5年間で撮影した写真をまとめた写真集『Motor Drive』(1995年、光琳社刊)が注目を集めた。
自由に動く被写体を撮影者が追い、連写して捉える。その写真には自然な表情や躍動感など、それまでのポートレートにはない予想外の瞬間が写し込まれていた。
「化粧品会社の依頼で、写真を使ってコマ送りのような動きのある映像広告を制作しました。1枚ずつ撮るとどうしても連続性が生まれないので、連写したんです」
フィルムカメラの時代だから、ワンテイクは36枚。コマの途中途中に、平間さん自身の想像を超えた写真があった。
「動くことで被写体も解放されるし、撮る側の僕もそうです。ただ撮る方は結構大変で、はっきりとは覚えていませんが、続けてそう何本も撮っていないはずです」
平間さんは人を撮る時、どう撮るかよりも、どうしたら被写体が楽しめるかを一番に考えるそうだ。モデルとの「鬼ごっこ」はそうした意図もあった。
ちなみにフォーカスはマニュアル。メインはコンタックスRTS IIIなどを使っていた。
「デジタルカメラになるまで、AFは仕事でつかえませんでした」
写真を撮ることで、その人生を肯定する
2015年からは都内に平間写真館TOKYOを開き、写真館業も始めた。東日本大震災が起き、被災した人たちはかけがえのない家族の記憶が刻まれた写真を求めた。
「被災地でそうした光景を目の当たりにしました。僕は写真を撮ることで、その人に寄り添い、その人生を肯定したいという想いがあります。そうしたもろもろがあって、写真館を開くことにしました」
多くの写真館では、決まった配置で撮ることが多い。が、平間写真館ではそうした定型はない。ケースバイケースのやり方で、互いにやり取りし合う。
「気持ちをシンクロするもの、理解できる手掛かりがつかめれば撮影できます。当然、お客さんは撮影に慣れていない方なので、メディアの現場よりある意味難しいんです(笑)」
子どもはもちろん、親やオトナだって自由にしていい。
「背景にしたホリゾントの前を子どもが横切ってくれたら、大丈夫。楽しんでもらえれば結果的に良い写真になります。記念写真ですが、ドキュメントでもあり、瞬間のスナップショットの面白さもあります」
音楽と写真
平間さんは音楽好きであり、週に2日はレコードショップに行く。
「音楽はインプットで、写真はアウトプット。いろんなインタビューでそう言っているんだけど、何も言わずにレコード店に行くからアシスタントにはいつも怒られます(笑)」
今の好みは「近現代音楽と民族音楽とジャズロックの真ん中ぐらい(笑)。ジャンル分けのできないサウンドです」と言う。
平間さん好みのアルバムが入荷すると、レコード店からホットラインで連絡が来ることもある。
「そのサウンドは即興的であり、既存の音階からも外れている。枠にとらわれない自由さを感覚的に音楽から学んでいるんだと思います」
それは平間写真館での撮影にも通じる。
写真術が発明されて以来、人は人を撮影してきた。その理由がきっと実感できるはずだ。
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「写真家・平間至の両A面」~アー写(アーティストの写真)/エー写(営業写真館の写真)~
会場
FUJIFILM SQUARE 富士フイルムフォトサロン東京 スペース1・2
東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン・ウェスト1階
会期
2022年6月10日(金)~30日(木)
開催時間
10時~19時(最終日は14:00まで、入館は終了10分前まで)
休館日
会期中無休