当世プロサービス事情

Nikon Professional Service(NPS)

プロサービスと言えば、ニコンを思い起こす写真愛好家も少なくないことだろう。言うまでもなく同社のカメラや交換レンズを愛用するプロカメラマンは多く、それは世界的な規模のスポーツイベントなどを見ても分かるとおり。カメラ席には望遠/超望遠レンズがずらりと並び、首や肩から下げたプロストラップが誇らしげに見える。もちろん同社はスポーツだけでなく様々なジャンルのプロカメラマンを長年サポートし続けている。

今回、株式会社ニコンイメージングジャパン・プロサポート部ゼネラルマネージャーの冨松圭さんに「Nikon Professional Service」(以下NPS)についてお話を頂いた。

歴史と組織

プロ向けのカメラや交換レンズを古くからリリースしているニコン。だが、プロサービスの開始についてはっきりした時期は分からないとのこと。1964年の東京オリンピックを機にプロ向けサポートの必要性が高まり、マスコミ向けにサポートを行う「報道機材課」という部門が設立され、その後、個別にプロカメラマンに対応するようになり、NPSとして組織されたとみてよいだろう。

現在はニコンプラザ銀座内にプロサービスセンターを設置するなど、しっかりとしたサポート体制を組んでいることは言うまでもない。

現在の同社にとってNPSはプロカメラマンをサポートする窓口であるとともに、情報収集の場でもあると考えている。ハードな環境に置かれ、しかもシャッターを押す回数はアマチュアの比ではないからだ。また、カメラの消耗度も大きく、そのような現場の声に耳を傾けることで、よりユーザービリティに優れたカメラの開発に繋げていきたいと考えているとのことだ。

修理・点検など

NPS専用の窓口は銀座のみであるが、基本的には他のサービスセンサー(新宿、名古屋、大阪)でも修理等は受け付ける。直接窓口に伺えない会員は、電話やメールによる相談も可能で、修理については修理センターへ宅配便などで送付し依頼することになる。プロサービスセンターの窓口でのみの対応となるものもあるが、提供されるサービスは大きく5つ。NPS修理特急サービス、機材の無料点検、修理代金の割引サービス、修理時の代替機優先貸出、機材の試用貸出となる。

プロサービスセンター受付の様子。両脇にもひとつずつ机があり、同時に3名の会員の相談を受け付ける。

NPS修理特急サービスは、修理預かりの期間を短縮したNPS独自のサービス。修理料金は通常のNPS割引サービスと同じだ。対象となるカメラや交換レンズは限定されているが、代替機でなく、少しでも自分のカメラで撮影したい会員には注目のサービスと言えるだろう。

無料点検はAFや操作部材の動作確認、ファームアップなどで、センサー清掃は別途有料となる。修理代金の割引については機材によって変わってくるので、事前に確認するとよい。試用貸出については1機種原則1回で1週間の貸出し期間となる。修理時の代替機優先貸出と機材の試用貸出しについては銀座のプロサービスセンターのみで扱う。

スポーツイベントなどでのサービスデポを積極的に展開しているのもNPSの特徴。現場での機材の点検、清掃など行う。なお、海外にもNPSがあるが、それぞれの国での運営であり、受けられるサービス内容は異なってくるとのことだ。

入会条件・費用

会員になる条件としては、写真撮影を生業とする個人であること、NPS会員の入会推薦者がいることなどとなる。

ハードルが高そうに思えるのが所有機材について。ニコン製一眼レフカメラ3台、同じく交換レンズを5本以上所有していることが条件だ。しかもカメラも交換レンズも同社の修理部品保有製品一覧に掲載されているものに限られ、F5/F6/FM10/FM3Aを除くフィルム一眼レフカメラの全て、多くのMFニッコールなどが除外となる。

入会に際しては、面接を行い、そのとき過去半年以内に制作された雑誌やパンフレットなど資料3点以上を提出。免許証やパスポートなどの身分証明書のコピー、業務で使用している名刺なども持参する必要がある。NPSの入会金は5,000円(税別)、年会費が1万円(同)。

情報提供

会員にはメールマガジンで月に1回程度サービスデポなどの情報を提供している。

会員証・プロストラップ・オリジナルグッズなど

会員証はクレジットカードサイズのものが配布される。さらに条件を満たせば、プロストラップも無料で提供される。NPSのオリジナルグッズは現在カメラポーチなどを販売している。

NPSの会員証。このプロサポートに憧れを持つカメラマンも少なく無いと聞く。

人気のあるNPSの一脚パッド。主にスポーツカメラマンが買っていくという。三脚にもひとつつけておくと便利そうだ。

こちらも人気のNPSオリジナルカメラ・レンズポーチ。プロカメラマンはこのポーチから無造作にカメラを取り出すのだろうか。

Nikon Professional Service(NPS)

入会金

5,000円(税別)

年会費

1万円(税別)

主な入会条件

写真撮影を生業とする個人であること
NPS会員の入会推薦者がいること
ニコン製一眼レフカメラ3台、同じく交換レンズを5本以上所有していること

主なサービス内容

NPS修理特急サービス
機材の無料点検
修理代金の割引サービス
修理時の代替機優先貸出
機材の試用貸出
各種情報の提供

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。