赤城耕一の「アカギカメラ」
第133回:最新・高価だけが価値ではない!「SIGMA F2.8 DN」三兄弟を堪能する
2026年1月20日 07:00
ある読者の方に言われました。「アカギさんはあんなにマイクロフォーサーズに入れ込んでいたように見えたのに、最近は何も言いませんね……」そうですか。はい、申し訳ありません。
なんといいますか、使用していないわけではありませんし、むしろ筆者の小商いではOM SYSTEM OM-1や LUMIX G9PROIIは活躍中ですし、仕事場の部屋の脇には三脚に載ったオリンパスOM-D E-M1がありまして、当サイトをはじめとする原稿のためのカメラブツ撮影には、ほぼこれのみを使用しております。だから、ほぼ毎日のように何らかのマイクロフォーサーズ機は使用しております。はい。
いずれも小型軽量であること、使用レンズの被写界深度の深さを最大限に応用しようという実用面の考え方によって使用しているものですから、趣味的な要素が低くなってしまい、私事に持ち出す頻度が減ったというわけであります。
仕事のために特定のカメラ思い切り使い出すと、その背景に流れるカメラに対する想いというのは逆に薄れてしまうのが常でありまして、口数が少なくなったりします。余裕がないというか、実用面でしか評価できなくなるからでありますね。
でも、マイクロフォーサーズ各カメラに関心が薄れていると思われてしまうのは筆者としては心外でありますから、今回はマイクロフォーサーズ機のなかでも趣味性が高く、仕事にはほぼ使わなくなったOLYMPUS PEN-Fと、現行機で現在気に入っているLUMIX G9PROIIで街に出てやろうと考えたわけです。
組み合わせたのは単焦点のシグマDNシリーズ3本、マイクロフォーサーズマウントのSIGMA 19mm F2.8 DN、30mm F2.8 DN、60mm F2.8 DNであります。
いずれもディスコンのレンズでありますが、すべて現役時代から愛用しているものです。
当時の購入動機は、気まぐれ、じゃなくて、その光沢のアルミ仕上げデザインの鏡筒と、リーズナブルな価格でありました。属性はArtラインとなっているのに、これは大したものだと思いましたよ。
デザインは今回持ち出したPEN-Fとよく似合うのですが、高級感で選んだというより、小さな茶筒みたいな雰囲気が気に入っています。
その存在は正直、地味でありますね。突出した大口径でもないし、マイクロフォーサーズマウントでは35mm判換算画角だと、それぞれ焦点距離38mm、60mm、120mm相当と多少中途半端感がありますが、そうした画角の縛りも面白がれるのは私事だからです。
マイクロフォーサーズマウントの高倍率ズームレンズはツッコミどころのない優秀なものばかりなので、あえて大口径ではない単焦点レンズを使用するという意味は薄れるのですが、ま、意味がないことをするのが私事であり、趣味でありますから、ここにツッコンでも無駄であります。
3本のレンズのうち、19mmと30mmはDP Merrillシリーズに採用されていたものと同じレンズ構成ということで、Foveonセンサーのポテンシャルを発揮させる高性能レンズという触れ込みでしたね。
3本のレンズとカメラ2台は小さなバッグに入ってしまいます。忘れ物をしてきたのではないかというほどの携行性の良さであります。
喜んで出かけたところ、今回大きな問題が起こりました。
さて、撮影しようかということで30mm F2.8 DNをカメラに装着したところ、EVFにもLCDにも何も表示されないという現象が起こりまして焦りました。通電不良みたいですね。接点を拭いても回復しないし。
そうかー、ミラーレスのレンズは故障すると、画像はなにも表示されないのね。あたりまえか。
修理に出そうと考えましたが、購入価格から考えると面倒になってしまい、中古で代わりを探すことにしました。ところが意外と中古市場ではタマ数少ないのね。
このレンズはEマウントのものもあるのですが、そちらは見つけることができますが、マイクロフォーサーズマウントは少ない。たまたまなのかもしれませんが、もしかすると現役時代はあまり数が出なかったのかもしれませんね。仕様からみると無理もないのかな。
でもね、見つけたんですよ、よく似たレンズを。でも、なんだか鏡筒デザインも異なり、ブラックでプラスチッキーな印象です。名称をみるとSIGMA 30mm EX DNとあります。
お値段はここに書くのも憚られるような激安な設定価格で、昨晩の焼き鳥屋さんの支払いよりも安いのです。ところが見たところ、未使用品的な印象でした。このレンズはDNレンズの前身で、レンズ構成は同じという。だから写りも同じですね。当時筆者はノーマークでしたねえ。存在を気にしておりませんでした。すみませんねえ。
ということで気を取り直し、本レンズを代わりに加えて街に出撃することになりました。
SIGMA 19mm F2.8 DNは光学系は2013年登場。レンズ構成はグラスモールド非球面レンズ3枚を含む6群8枚構成。フィルター径は46mm。最短撮影距離は0.2m。
それにしても、もう13年も経つのかー。鏡筒デザインを新しくして、メカ設計を見直して、Artラインに昇格させたというわけですね。
うちにあるのはシルバー鏡筒で、これだけテカテカのシルバー感が強調されたレンズって他には少ないのではないかと。
高齢者になってから、とくにカメラもレンズもシルバーが好きになった筆者ですが、それでも、PEN-Fに装着して街を歩くには、お爺さんには恥ずかしい輝きです。
発売時から長く使用していたこともあり、鏡筒のテカりが鈍くなってきたようで、これはこれでよい経年変化であります。でも細かいスリキズが目立つのは少し気になるかなあ。
AFの駆動はリニアモーターによるもので、動作は静粛でAFも速いのですが、単体ではカタカタと音がしますね。カメラに装着して電源を入れると音はしなくなります。携行している時は壊れたんじゃないかと不安になります。このシリーズに共通するいちばん気になる点ではありますね。ま、そのうち忘れるんですけどね。
開放から問題ない実用性がありますが、写りはいずれの絞りでも、味気ない言い方をしてしまうとシャープというひとことで終了してしまいそうです。
よく言われる軟らかいという言い方とは異なるように思うわけです。単体レンズなのでヌケ感はかなり良いですが、ストレートな描写特性です。昨今の黄砂などによる大気の汚れを素直に表してしまいそうです。
開放絞りでもコントラストは良好です。画面中央と周辺域ではわずかな画質差があるように見えますが、少し絞ると改善されます。
絞りが若干は効くわけですが、普通に写真鑑賞するぶんには神経質になる必要はないでしょう。周辺光量は余裕があります。もっと低下していい(笑)のに。
実焦点距離からみると、ボケ味云々を細かいことをいうレンズではありませんが、クセもありませんね。とても優れたレンズだと思います。
先に述べましたが、 30mm F2.8 DNが突然お亡くなりになられたので、探してみたら、前身となるモデルの30mm F2.8 EX DNを見つけました。
35mm判換算で60mmの画角は、昔のニコンのマイクロニッコールとか、ライカのマクロエルマリートとかありましたね。標準レンズの代わりには少し窮屈な印象ですが、筆者はわりと好きな画角ですね。
鏡筒はプラスチッキーなブラック仕上げであります。DNシリーズとは異なり、フォーカスリングにはローレットがありますから、MFでの使用感も悪くはないけど、本レンズを使用してMFでフォーカスを追い込むとか面倒ですよね。
作りは外観からみて、かなりお安い感じです。筆者は機材のデザインにはうるさいほうなのですが、じつは、お安い機材も好きなのです。晩酌代よりもお安く入手したので、カッコ悪かろうが、文句はありません。
フードは別売りでねじ込みのものが存在しているようですが、今日まで発見することができず。ちなみにDNに昇格した同スペックレンズのフードはバヨネットです。プラスチックだけど。
フィルターアタッチメントは46mmなので、純正フード探しをしたのですが、ロクなデザインがない、んじゃない気に入ったものが見つからず。見つけたサードパーティ製のものを装着したら、ひょっとこの口みたいな感じになり。どなたかカッコいいフードを紹介してください。ただし、スリットのないものでお願いいたします。
グラスモールド非球面レンズ2枚を含む、レンズ構成は5群7枚です。最短撮影距離は0.3m。絞りは円形の7枚絞り。質量は130g。開放からコントラスト良好、合焦点はばっちり鮮鋭なよい描写です。見た目のお安い感じを裏切りますね。このギャップがうれしい筆者であります。
実焦点距離は30mmですから被写界深度はそれなりに深いのですが、レンズ性能が高いためでしょうか、レンズのポテンシャルを最大限に生かしたい場合には、AFエリアのサイズを考えるなどして合焦の位置はしっかり確認したほうがいいでしょう。
このレンズもすばらしく線の細い描写をしますねえ。感激です。絞り込みは間違いなく画質に効いてきますし、線が細い描写なので、ポートレートにもイケそうです。
周辺域画質は絞り設定で多少変化向上するようですが、画質向上を意識して絞りを設定するのは無用かと思います。ボケ味も自然ですが、至近距離撮影以外では期待ほどボケは大きくなりません。画質評価を一言でいえばと問われたら言いましょう「余裕」ですね。このシリアスな画質を見ると、ドキュメンタリーの仕事にも向いているのではないでしょうか。
3本のレンズは画質重視の特性とアナウンスされていますが、そういうストイックな考え方でみますと、数値性能面だけで見た場合、いちばん優れているのはこの60mm F2.8 DNではないかなあと筆者としては判断しております。ただMTFとか確認しておりませんが、実写の画像から感激する画質です。
鏡筒のデザイン仕上げは他のDNと同じです。焦点距離的にすこし長めになるのは仕方ないですが、十分コンパクトです。質量は190g。
画角的には35mm判の換算画角で120mm相当になるわけですから、中望遠レンズの仲間でありますね。筆者は3本の中でいちばん描写は好きかも。でも常用するのかといえば話は別になります。非球面レンズとSLDガラスを含みまして、レンズ構成は6群8枚です。絞りは7枚の円形。最短撮影距離は0.5mですから、画角からみるとそこそこに寄れる印象であります。
このレンズのレビューをカメラ雑誌で最初にしたときのことですが、35mmフルサイズで撮影した写真を、アカギが間違えて送ってきたと編集者は思ったそうです。それくらい総合的な画質に優れていたという裏づけになりました。
おそらく、当時の実勢価格から考えるに、こんなに高性能なわけがない、描写がよいはずがないという刷り込みが筆者自身にも、担当編集者にもあったのでしょうね。
本レンズは今回の3本のレンズの中でも、いちばん線が細く写る印象を持っております。もう開放から、ソリッドな描写が期待できます。
絞り設定を変えても被写界深度以外は描写は変わらないですね。ある意味、変化が小さいために面白くはないかもしれませんが、信頼のできるレンズだと思います。
画角からみてしまうと、筆者の好みとはかなり異なりますが、ある意味では基準のレンズとして頼りになります。特性を積極的に生かせる被写体を探してみたり、もっとも鮮鋭に描写したから写真の格が上がるわけじゃないのですが、どこか夢をみたくなります。なんとなくポートレートではないんだよね、という印象は持っています。
と、いうわけで、マイクロフォーサーズ機材は現在も続けて活躍中です。他のフォーマットの機材より、比較的リーズナブルな価格設定なのはうれしい点であります。中古だと今回紹介したレンズのように、数回呑みに行くのを我慢すれば入手できるもののあります。
昨今のカメラ、レンズの値上がりは非常に厳しいものがあり、新型が出ましたよ、はいそうですか、では購入しますね。とはなかなかまいりません。これは日本だけの問題なのでしょうか。
筆者の立場からすれば、新しい機材を導入することができないのは一連のギャラが上がらないから、と文句をいうのはたやすいですね。
けれど、年寄り写真家としては「気に入ったモノを大切に長く使う」という大義名分のもとに、機材は可能なかぎり長く使うのが道理なのではないかとも考えております。ちなみにカメラとレンズはその昔、耐久消費財に属していたはず。
現代のカメラは最先端技術、機能の塊です。撮影分野にもよりますが、実際の写真作品に大きな影響を及ぼす機能的な要素はそう多くはありません。多少古くなったお安い機材でもこれは今もイケるぜ、というものは、世の中にたくさんあります。
とくに交換レンズは資産と考え、数値性能だけでは評価できないことは、長く続いているオールドレンズ人気が証明しております。購入価格や製品の格とも関係ありません。
現在も高価に販売されている中古機材の一部は、現役当時には売れずに販売数が少なかったなどの理由から、いまになって希少価値があると判断されているものも少なくありません。つまり必ずしも性能が評価されたので高価になったわけではありません。
廉価な機材を軽くみてしまうのは、マニアの悪いクセです。多少古くても不人気でも、お安い機材で高画質かつ撮影者自身が気に入った写真ができると、高価で人気のある機材を使用して撮影した写真よりも嬉しくないですか?少々貧乏くさい考え方でしょうか(笑)。
今後もみなさまに廉価でかつ、高性能な機材をみつけてご報告したいと考えているわけであります。












































