赤城耕一の「アカギカメラ」
第134回:本気度を感じるフィルムコンパクトの新製品「Lomo MC-A」
2026年2月5日 08:00
久しぶりに筆者が手放しで褒めたいフィルムコンパクトカメラが登場しました。
これが「Lomo MC-A」なのであります。
どこが?
焦らないでください。
発売、製造メーカーはロモグラフィー。シンプルなフィルムカメラやエフェクト系のフィルムを廉価に供給しているメーカーで有名ですが、何よりも写真をお気軽に楽しむという方向で、製品作りをしています。遊びゴコロに関しては、どこにも負けない、いや唯一無二のメーカーだと思うのです。
ですが、筆者のように無駄に半世紀もカメラをいじくり回して、写真制作をしているジジイになりますと、ロモグラフィーの背景に流れるその“軽やかな写真制作思想” が時として癪に触るというか、なかなか納得できないことがあります。老害ですね。
それは機能的に物足りないカメラや機能とか、搭載されたレンズの性能が十分ではないかと考えてしまい、これではフィルム本来のポテンシャルを引き出し、美しい銀塩プリントは制作できないのではないかという硬直した概念を持っているからであります。
正直、それらの性能を引き出したところで、よい写真になるわけではないのは十分理解しているのですが、ニュートラルで品位の高い写真を制作することができる、これを知るからこそ、エフェクト系の写真や粒子が粗いものとかコントラストの高い写真の面白さが理解できるのではないかと考えるわけであります。これはデジタルカメラの画にもいえることです。
ええ、細かいこといわずに自由にやればいいじゃないかというロモグラフィーの考え方も理解はできます。うるさく細かいことをいうから老害とか言われるのでしょう。とはいえ、何と言われようが、実際にもう高齢者に突入してしまいましたので、いまさら考え方を改めるのは難しいですね。
だから、フィルムカメラを選択する場合は、AEやAFが装備されていることはもちろんかまいませんが、フルマニュアル設定に切り替えることができるカメラを選びたくなります。
それは自分なりに光の状態を読んで、それを生かした設定を行うことができるからです。また、未来予測でフィルム現像をコントロールしたり、そうして出来上がったネガでプリントを行うこともひとつの悦びになると考えているからです。繰り返しますがだからといって、良い写真ができるわけではありません。自分でその制作過程が納得できるか否かということなのです。
フルマニュアル設定できるカメラはフィルム一眼レフでは容易に見つけ出すことができますが、フィルムコンパクトカメラは古い機種でないと難しいですね。
つまりですね、最初に結論を書いてしまえば、Lomo MC-AはフォーカスをAFとMFから選択設定でき、露出をAEとマニュアルで設定することができること、つまり、基本的な写真撮影要素をフルマニュアルで設定することが可能な最近では珍しいフィルムコンパクトカメラであることを、ジジイは評価したいわけであります。しかも、これが新型カメラ、現行カメラとして登場してきたわけですから、さらにジジイは本気で喜ぶわけであります。
ただし、間違えないでください。筆者はすべての撮影をフルマニュアルで行えと言っているわけではありませんので念のため。
さて、元箱から取り出したるLomo MC-Aは想像より冷たい。そう外装は金属製でなかなかの質感を持っています。マグネシウム合金なのでしょう。意外にも手にずっしりとした重さがあり、存在感があります。お借りしたボディはブラックですが、シルバーモデルもあります。
全体に角ばっているので最近のカメラでは珍しいレトロスタイルですが、しいていえば、フィルムコンパクトのニコン35Tiとか、ペンタックスのエスピオにこんなカタチの機種があったような記憶があります。
搭載レンズはMINITAR-II 32mm F2.8とあります。5群5枚構成。なかなか珍しい焦点距離ですね。感覚的には35mmのレンズを使うつもりで撮影してみましたがさほど違和感はありませんでした。
充電タイプのCR2が同梱されているので、無駄にバッテリーを購入する必要はありませんが、大量撮影するとか内蔵フラッシュを多く使うという場合には予備のCR2を用意したほうがいいでしょう。
メインスイッチは上部シャッターボタン周りのダイヤルで設定しますが、このダイヤルはMF/AF切り替えも兼ねています。
レンズは沈胴タイプで、電源を入れるとすっと出てきます。レンズ前のバリアがあるわけでもないし、あまり沈胴の意味はないようにも思えるのですが、それでもフラットな状態になるのは収納時にはよいかと思います。レンズ周りには絞り環がありまして、これだけでも泣けそうです。F値設定はF2.8-16ですね。PポジションはPモード設定という考え方でしょう。
カメラ前面はファインダー部と、左上に内蔵フラッシュ(GN9 ISO100/m)があります。
発光部が思い切り見えているカメラはデザイン的に苦手な筆者でしたが、MC-Aはうまく処理されています。発光部には同梱のカラーフィルターを装着することができます。ちなみに、このクラスのカメラには珍しい、シンクロターミナルを装備しているので、外部のフラッシュを使うことができます。やろうと思えば、大型ストロボを発光させることもできます。だからこそ、アクセサリーシューがないのは痛いですね。
レンズ脇の右には、ゾーンフォーカス用のレバーがあり、0.4、0.8、1.5、3、♾️のポジションがあります。AFも最短撮影距離は0.4m。MFでも0.4m設定ができてしまうというのがけっこうミソですね。ゾーンフォーカスはアバウトなようでいて、確実に設定距離が決められるので、便利ですね。
カメラ上部にはシャッタースピードダイヤルがあることが頼もしく見えたりします。
デジタルコンパクトカメラにもシャッタースピードダイヤルが残された機種があり、ひとつの見識という考え方はありますが、実際に使用するケースはそう多くなさそうですし、多くは装飾に近いものだと思います。いや、それでも筆者はシャッタースピードダイヤルは欲しい人です。
フィルムコンパクト機で、こうしたシャッターダイヤルが上部にあるものは珍しいのです。大きなサイズではありませんが、回しやすくクリック感も適度に重く良好で、誤って回ってしまうこともないでしょう。
シャッタースピードダイヤルをAポジションにして絞り環をPポジションにすればPモードになるのですが、ならばTモード(シャッタースピード優先AE)ができるのかと思い、シャッタースピードを任意に選び、絞り環をPポジションにしてみたら絞りは開放値のままを示しています。
つまり、Lomo MC-AのAEモードは2種、P(プログラムAE)とA(絞り優先AE)からどちらかを選ぶわけです。そして、任意に絞りとシャッタースピードが設定できるM(マニュアル露出)設定ができ、これを撮影者が任意選択することができます。
シャッターダイヤルの脇には、1/2ステップで設定できる露光補正ダイヤルがあります。その上には多重露光ボタンもあります。
カメラ上部左には、LCDパネルがありまして、大きな数値でフィルムカウンターの数値を刻みます。
シャッターボタンを半押しすると、Mモードでは設定値のシャッタースピードとF値が、AE時も自動制御される数値が表示されます。
LCDパネルの下には、フラッシュ切り替え、セルフタイマー、ISO感度設定ボタンがあります。本機はDXコード装備のため対応フィルムではISO感度は自動設定されますが、任意のISO感度設定ができるので、増減感を前提とした設定も可能であります。
今回はポジフィルムを使用する時間がなく、AE精度のチェックが正確にできていませんが、ネガの濃度をみますと、AEはまずまず安定しているようです。ただ、筆者がもしポジフィルムを使う場合は、露出を確実にするため、マニュアル露出で撮影すると思います。
1/30秒以下の低速シャッターに制御される場合はファインダーにオレンジ色のLEDが点灯して、手ブレの警告をします。
装飾といえば本機はアクセサリーシューは省かれているのですが、カメラの上部になにやら筆記体の英語で「Everyday is equal. before the lens and behind it.」と書いてあります。すべての人はレンズ前でも後ろでも平等だぜ、みたいなね。インディ・ジョーンズが遺跡から発見した石板に書いてある文字みたいです。筆者はもしMC-Aを購入したら、パーマセルをここに貼って隠すんじゃないかな。ジジイには恥ずかしいので。やはりアクセサリーシューがほしいぞ。
思えばこれまでロモグラフィーから発売されたフィルムコンパクトカメラはMFですから、今回のLomo MC-AではAFを搭載したことで、かなりの機能的進化ということになります。今さら、と思われるかもしれませんが、個人的には使用していて、よくやったという思いのほうが強くなりました。
通常の撮影ではAFを使用するのが普通でしょう。必要に応じて、MFに切り替え、ゾーンフォーカスによる設定ができるという考え方がすばらしいわけであります。
先に述べたカメラ上部のLCDにはシャッターボタン半押しでAF測距した距離が表示され、MF時はゾーンフォーカス設定での距離数値が表示されます。親切な仕様で、測距のエラーがあっても事前に確認することができます。
さて、フィルムを装填してみます。ボディ脇のキーを回して裏蓋を開いて、パトローネを入れて、リーダー部をスプールの溝に挟むのですが、これ、軽くコツが必要ですね。このあたりは装填がラクなPENTAX 17にはかなわないなー。フィルムカメラって、最大の難関がフィルム装填だと思うのですが、仮にトラブルが発生するとしたら、MC-Aも同じことになるでしょう。
フィルム巻き上げはレバーによる手巻きですが、トルクは軽いほうでしょう。フィルムの空送り時に、レバーの動きに合わせて、フィルム巻き上げクランクの中央部を見て、回転していることを確認します。
シャッターボタン半押しと同時にレンズはAFの測距開始します。AFはLiDARセンサーを使用。つまりレーザー測距で、なかなか正確です。エラー時にはファインダー内の青色LEDが点滅します。
LCD表示に測距距離が表示されるから確認はできるものの、どうしてもフォーカスが心配な場合はMFに切り替えて、押さえを撮っておくなどの方法も考えたいところですね。ただ、特性上、ガラス越しの被写体などには正確にAFが動作しないことがあります。
AF動作中は「ジッ、ジッ」と小さなレンズ駆動音がします。これはMFでも同様の音がするのはヘリコイドではなく、レンズ駆動はアクチュエーターによるものだからでしょう。シャッター音は小さくてありがたいですね。
搭載レンズはなかなか優秀です。ただし針を突くような細かな描写をするわけではなく、少し線の太い感じですね。絞り設定でも若干の描写の変化があります。このあたりが気になる人はAモード設定で、絞り設定の違いによるレンズの描写を楽しまれるといいかもしれません。逆光も強いわけではないのですが、それもまた味わいという考え方でしょう。周辺光量は全ての絞りで条件によって、光量低下が目立ちます。時として画面周囲を焼き込んだくらいになるのです。もっともロモグラフィーのカメラのレンズで開口効率が優秀なレンズは逆に評価されないでしょう(笑)。個性的でいいと思います。
本機のいちばんの弱点はファインダーの見え方かもしれません。
ファインダー倍率が小さいことに加えて、ファインダー像の距離とフレームの距離が離れているためかフレームが大きくぼやけて見えるのです。若い人なら大丈夫なのでしょうか。
慣れてしまえばどうということはありません。また、視野率は少々低いですね。デジタルカメラの場合はLCDを確認すれば視野率100パーセントですが、本機ではフレームを信じると余計なものが写ります。思い切ってフレームを無視してさらに近寄って撮影するなどして、写る範囲の予想をして楽しんでおりました。これもロモグラフィー精神であります。
あと、気になるのはコマ間のバラつきと、コマ間にパーフォレーションがかかってしまうこと。自家現像をしていると、コマ間にハサミを入れる時パーフォレーションが破断するのが面白くないんですよね。ネガケースに入れづらいし。
細かいことですし、ジジイの戯言ではあるのですが、フィルムカメラの品格に繋がるところがありますから、これは改善を望んでおきたいところです。
とにかく細かいことを言わずに楽しむことが、ロモグラフィーの思想だそうですから、筆者もそれまでのロモカメラでは細かいことを気にせず、ツッコミをすることなく撮影してきました。こちらもトイカメラ的な軽い扱いをしていたこともあるのでしょう。
しかし、ロモMC-Aはフィルムコンパクトカメラとして、本気度を感じるモデルですし、撮影者の工夫が出来上がる写真に反映できるカメラになっています。だからこそ、細かいところまで気になるのでしょう。これで7万円を下回る価格というのは驚きです。
































