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スリック「フリーターン雲台SH-707E」

~キッチリと水平を出したい方に最適?

SH-707E。クイックシューがついているのがうれしい
 カメラをフィルムからデジタルに切り替えてから、写真をPCの大きなディスプレイで鑑賞する機会が増えた(というよりそれが当然になった)。そこでちょっと気になるのが写真の「水平」。三脚を使用した場合でも、モニターで等倍表示するとやっぱり1.5度くらい豪快に傾いている写真があるのだ。Lサイズくらいのプリントで見れば大したことはないけれど、モニター等倍表示では一目でわかる。これはまずい。何とかしなければ!


地平線が傾いた写真をPhotoshopで1.5度回転させて修正。これで中央だけを切り抜けば問題解決? いや、画素が無駄になる。もったいない!
 写真の傾き問題を解決するために、愛機キヤノンEOS 5Dのスクリーンマットと撮影者の心を入れ替えてみた。方眼マットの効果は期待通りで、写真の傾きはわずかながら軽減された。そこでさらに完璧を目指して、三脚の雲台を自由雲台から微妙な角度調整が得意な3ウェイ雲台に変える決断をした(方眼マットの格子に合わせてアングルの微調整を繰り返すには3ウェイの方が楽!)。

 ネット上に開設されたカメラ量販店のWebサイト巡りを敢行。やがて、スリックのSH-707Eという見慣れない商品に出会った。製品紹介を読んでみると「風景などじっくり構図を決めたい撮影時に最適な3ウェイ三脚です」と書いてある。価格は9,450円、店頭価格は7,000円前後。2軸水準器付なので高級感もある。本体の高さは約81mm、重量は約470gとマグネシウム製には及ばないものの軽量だ。

 製品写真を見ると、出っ張りは1本だけ突き出たパン棒しかない。これなら鉄道旅でも持ち運びが楽そうだ思って、つい「ポチっと」購入ボタンを押してしまった。それがボクとフリーターン雲台との馴れ初めだった。


SH-707Eを三脚と合体させて、カメラを載せてみた
 宅配便で自宅に届けられたSH-707Eを、さっそくコンパクトなカーボン三脚に取り付けてみた。ルックスは完ぺきだ。上下黒で統一され、三脚に2軸水準器付の緑色のアクセントを与えてくれる。とどめに、スリックが創業時に使用していたあの王冠マークが金色に輝く。所有者の撮影意欲と三脚の携帯意欲を、+1EVほど増感させてくれるオーラが感じられる。


右側面 前面 左側面

 構造は単純だ。可動軸を固定/解放する操作は、ボディ中央から伸びるパン棒と、雲台下に備え付けられた雲台レバーの2つだけで行なう。カメラは、雲台に備え付けられたクイックシューで取り付ける。

 しかし、実際に撮影を開始すると違和感はすぐに生じた。この雲台は前後と左右に回転するのに、斜めに動かないのだ。いや、正しくはパン棒の操作だけで前後・左右に回転し、さらに雲台レバーを操作すれば左右に回転する。しかし、肝心の斜め方向へだけは動かないのだ。


横位置水平で撮影 縦位置水平で撮影 天頂方向で撮影

真下方向で撮影 傾斜地で水平出しを行なうと雲台は一見不安定なポーズになる。グニャグニャしていて気分が悪いかも 斜めから見るとさらに不安定に見える。これがフリーターンの特性とも言える。風の強い日は三脚から絶対離れないように!

カメラ部を動かす可動軸の固定/解放する雲台レバーは雲台の右側面にある。レバーを押すと固定、手前に引くと解放する
 冷静になって再検証してみた。確かに可動部は3軸ある。しかし、X(横方向)、Y(縦方向)、Z(斜め方向)の3方向ではなく、X、X、Zという2方向(+α)にしか動かない。間違ってビデオカメラ用雲台を購入してしまったかと頭を抱えてしまった。

 それは杞憂であり、誤解だった。SH-707EはスリックのWebページによれば、フリーターン雲台という立派なスティールカメラ用のアクセサリーだそうだ。3ウェイ雲台とは異なる新デザインの雲台なのだ。Webページに書かれたコメントによれば、フリーターン雲台は1960年代に開発された「スリック・オリジナルの雲台」で、特徴は「カメラ台の回転、上下アングルの調整、水平パンが同時にも単独にもできる」ということになっている。

 本音を言えばSH-707Eの仕様は「思ってたのとは違う!」である。しかし、スリックのWebページを眺めていたら、フリーターンという新デザインは購入目的である「水平出し」にはベストであることに気づいた。例えば、斜面に三脚を立てるしかない状況でも、撮影アングルが横位置なら三脚が傾く方向に(または傾く方向の180度逆方向に)、パン棒を向ければ傾きが修正されるという内容の解説があるのだ。

 実際に白いボールを三脚の足の下に入れて、雲台に傾斜を付けてみた。パン棒を向ければ傾きが修正されるというテクニックを知らなくても、まったく操作に問題はなかった(多分、Webページを見なかったらパン棒と傾斜方向の相互関係に気付かなかったと思う)。


三脚の左側を白いボールで傾斜させた。傾斜した左方向にパン棒が向けられている 三脚の右側を白いボールで傾斜させた。傾斜した右方向にパン棒が向けられている

 スリックのWebページの解説の通りに操作してみると、水平を出すだけなら確かに簡単な操作だけであっけなく成功した。3ウェイ雲台や自由雲台を使って何度も微調整を繰り返すのと比べると実に素早い。ただし、取扱い方法は極めてユニーク。習うより慣れろ、または百聞は一見にしかず、というのが感想だ。

 これさえあれば何でもできる“万能の雲台”なのかも知れない。自由雲台と同様に、天頂方向もカメラの付け替えなしで狙えるというスペックはさすがだ。しかし、思い通りの方向にカメラを向けるのには、スペックからは想像できない独特の操作方法を学ぶ必要がある。今までの雲台とは勝手が違うと言ってもいい。特に撮影アングルの修正や、上方向や下方向へ思い通りにカメラを向ける操作は、慣れるまでちょっと悩む。万能ではあるが万人向けではないのがミソというところか。

 念のために、フリーターン雲台と3ウェイ雲台の操作の違いを比較してみた。可動軸(間接部)の動きを見比べれば、明らかに別物であることがわかる。フリーターン雲台の操作はどちらかと言うと自由雲台に近いことがわかる。


横位置水平で撮影(左がフリーターン雲台、右が3ウェイ雲台。以下同) 縦位置水平で撮影 天頂方向で撮影

 フリーターン雲台の最大の特徴である独特な操作方法は下記の通り。
  1. カメラをクイックシューで雲台に固定する。
  2. カメラを手でしっかりと支える。
  3. パン棒と雲台レバーを緩める(支えなしでカメラが傾く状態にする)
  4. 被写体を狙ってカメラのファインダーをのぞきながら、パン棒を左右に回して調整する
  5. パン棒の調整を繰り返すと、雲台レバーを含めた複数の可動軸の曲がり具合が微妙に最適化されて水平が出る
  6. パン棒と雲台レバーを締めて、てすべての可動軸を固定させる


フリーターン雲台に2軸水準器が標準装備されているのは決してダテではない。水平が出ているかどうかは神経質なほどに確認したい
 フリーターン雲台とスティール撮影用で一般的な雲台(3ウェイ雲台と自由雲台)との機能上の最大の違いは、水平を出した後に現れる。話に登っている3種の雲台は、実は水平を出すまでの作業には大きな違いはないかも知れない。しかし、フリーターン雲台だけは水平出し後でも左右に被写体を追えるという特技があるのだ。

 その特技を可能にしているのが、カメラ本体だけを水平を維持したまま動かせる独自の回転軸だ。3ウェイ雲台で同じことをやろうした場合、三脚の足だけで水平を検出し、雲台全体を動かす必要がある。また、自由雲台ではほぼ不可能と思える。

 フリーターン雲台の存在意義は「素早い水平出し」ができるだけではなく、「水平出し後でも被写体を追える」という運用面での柔軟性にもあるようだ。


クイックシュー部分は独立した360度の回転軸を持つ。おかげで水平パンで水平を出した後も、雲台レバーをゆるめれば、カメラだけを左右に回転させられる 一度水平さえ出してしまえば、カメラを左右方向へ動かしても水平にズレはほとんど生じない

 外見が似ている3ウェイ雲台のつもりで操作してしまって、それが原因で慣れるまでに時間がかかるかも知れない。しかし、フリーターン雲台は、3ウェイ雲台や自由雲台に続く第3の選択として候補にあげる価値はある。

 最後に。SH-707Eをどうしても3ウェイ雲台風に使いたい場合は、三脚座付きレンズを選択すればいい。三脚座の回転機能を合わせればX(横方向)、Y(縦方向)、Z(斜め方向)の3方向に無理なくカメラを操作できる!


SH-707Eが、EOS 5Dを載せてE電の東北線沿いの某有名鉄道撮影地にデビュー。三脚が乱立しているというのに、まわりを見回しても同系の雲台が見当たらない孤高の存在である フリーターン雲台は傾斜地だけでなく、ボコボコの不整地でも水平出しに威力を発揮する。剛性もバッチリで長時間放置してもアングルがズレないのがグー!

SH-707Eを使用して撮影


  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 例下の撮影データは、使用ボディ/記録解像度(ピクセル)/絞り値/露出時間/露出モード/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


もっと長い列車編成を予定していたのでカメラを右側向けてにセットしてあった。だが予定外の寝台夜行列車カシオペアがやって来たので、カメラをやや左に動かして短い編成に対応した。雲台のおかげで水平位置にズレはなかった
EOS 5D / 4,368×2,912 / F6.3 / 1/1,000秒 / マニュアル / 0EV / ISO160 / WB:オート / 115mm
水平は出たけど、予定していたSLの煙が出なかったので右側に隙がある写真になった。無念
EOS 5D / 4,368×2,912 / F6.3 / 1/1,000秒 / マニュアル / 0EV / ISO160 / WB:オート /200mm

崖の斜面に三脚を立てて撮影。不安定な場所でキッチリ水平を出せた。レンズの三脚座を利用して縦位置を出している。プライバシー保護のために一部修正を施した
EOS 5D / 2,912×4,368 / F7.1 / 1/800秒 / シャッター優先AE / -0.67EV / ISO160 / WB:オート / 280mm
線路は勾配区間なので水平検出には役に立たない。歪曲の大きなレンズを使いながら遠くの背景に合わせてカメラの角度を微調整するのにSH-707Eは強い味方となった
EOS 5D / 4,368×2,912 / F4 / 1/800秒 / シャッターAE / 0EV / ISO160 / WB:オート / 35mm


URL
  スリック
  http://www.slik.co.jp/
  フリーターン雲台
  http://www.slik.com/free.html


( 本誌:織原 博貴 )
2007/05/10 00:27
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