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セコニック 「スタジオデラックスIII L-398A」

環境対応で生まれ変わった露出計のシーラカンス

 構図やシャッターチャンスなどと並んで、写真を作品とするための要素の1つに“露出”がある。ほとんどのデジタルカメラには露出計が組み込まれており、自動で露出が決まるが、フィルムカメラでは露出計が組み込まれていないカメラも存在した。

 フィルムの外箱に天候による露出の目安が書かれていて、これを参考値として撮影することもあったが、一般には単体露出計を使って露出の数値を求めていた。私の父も露出計が組み込まれていない「ニコン F」を使っていたので、セコニックの反射光式単体露出計(L-IIIというモデル)を使っていた。

 今回取り上げる「セコニック スタジオデラックスIII(L-397A)」(31,500円)は入射光式の露出計として長い歴史を持つ「スタジオデラックス」の最新モデル。もともとスタジオデラックスは、セレン光電池を使用した電池の要らない露出計として有名なモデルだ。

 セレン光電池は、光を受けることで発電してメーターの針を動かす構造のため、電池を使わずに露出を測ることができるのだ。今では、露出計にはあまり使われていないが、スタジオデラックスだけは長期間作り続けられてきた。

【お詫びと訂正】記事初出時、セレン光電池が「光を受けてからの反応速度が他の受光素子よりも遅い」と記述しましたが、誤っておりました。セレン光電池よりも遅い受光素子も存在します。お詫びして訂正させていただきます。

 しかし、環境問題からセレン光電池を使うことができなくなった現在、アモルファス光電池を使用して今までと全く違わない使用感を実現したのが「スタジオデラックスIII」だ。

 セコニックの他の露出計(電池が必要なデジタル表示タイプ)と大きく異なるのは、アナログ式の指針によって光量を示し、その数値をダイヤルで合わせてやると、その場の光量に応じた露出をシャッタースピードと絞りの組み合わせで示してくれるという点だ。デジタル表示で一目で数値をつかむ製品に対して一手間かかるものの、露出とはシャッターと絞りの組み合わせで成り立っていることを改めて学ぶことができる。

 スタジオデラックスIIIのサイズは、入射光式の単機能モデルとほぼ同等。スポットメーターなどを持つ多機能タイプのモデルに比べればコンパクトだ。

 背面には、高輝度時にセンサー部に差し込む「HIGH」と書かれたスライドプレートと、メーターのゼロ位置を合わせるための調節部がある。スタジオデラックスIIIの操作箇所は、メーター指針を動かすダイヤル中心部のボタンと、露出値を求めるダイヤルの2カ所。ボタンを押すと測光し、離すとその場で指針が止まる。ボタンを押しながら回すと押しっぱなしの状態で固定され、指針が常に動く状態でも使用できる。


私が普段使っているL-318B(電池が必要なデジタル表示タイプ、左)とスタジオデラックスIII セットの内容。ストラップ、ケースと受光部のアダプターが付属する

スタジオデラックスIIIの背面 使う前にISO感度を合わせておく

針を動きっぱなしにするか、固定するか選べる

 スタジオデラックスIIIは入射光式の露出計であり、カメラに組み込まれている反射光式の露出計と大きな違いがある。反射光での露出測定は、被写体の反射によって光量が変わる。白い被写体は反射する光量が多く、黒い被写体は反射する光量が少ないことになる。しかしカメラの露出計は反射する光量を反射率18%のグレーとして測光するため、適正露出との差違が生まれる。その結果、白い被写体も黒い被写体もグレーに描写されるという問題が起こる。そのため、カメラの露出計を使って測光する場合は露出補正や段階露出といった技が必要となる。

 この問題を根本から解決するには、今回取り上げたスタジオデラックスIIIのように入射光式の露出計を使うのが1つの方法だ。入射光式露出計は、被写体の反射に関わらず、被写体に当たる光を測定することで適正露出を導き出すことができるのがメリット。

 受光部が半球状としてあるのは、被写体に当たる光を立体的に受けるためだ。受光部のアダプターを平板と交換すれば平面の被写体でも測光が可能である。実際に白い被写体と黒い被写体を撮影し、カメラ内蔵の露出計との違いを比べてみた。


カメラの内蔵露出計によるオート露出で撮影 被写体の前に露出計をかざして測光する

針が320と640の中間点を指している 目盛りを320と640の中間に合わせると、露出値がわかる

表示された露出値に合わせて撮影。本来の白さが表現できた

カメラの内蔵露出計によるオートで撮影 入射光式による撮影。黒を表現できた

 ただし、入射光式露出計は“黒を黒”、“白を白”に表現できるメリットはあるものの、反射率が高すぎたり、低すぎたりすることによる白トビや黒ツブレを防ぐことはできない。ハイライト部、やシャドー部の再現を気にするなら、さらにデジタルカメラのヒストグラムを気にする必要も出てくる。

 スタジオデラックスIIIの受光部はバヨネット式になっており、付属の平板や反射光式の受光部との交換も可能。18%グレー反射板を使ったり、あるいは似た反射率の手の甲を使えば、反射光式として測るのも1つの方法だ。

 また、2方向からの反射をそれぞれ測ってバランスを取るなら平板の受光部を使うと良い。今回は、障子を通した光と、金屏風の反射光を使ってダルマを撮影した。障子からの光の露出値に対し、金屏風からの反射光での露出値を1段アンダー程度になるよう、被写体と金屏風、障子との距離を調節した。スタジオデラックスIIIの受光部を平板とすることで、それぞれの光源からの露出値をつかむことが可能だ。


受光部は付属の平板や反射光用に交換することができ 反射光式に受光部を付け替えて使用。手の甲の色がちょうど18%グレーに近い

平板で窓から来る光を測光 金屏風を使った反射光を平板で測光

露出計の測光データを元にして、露出を決定した

 スタジオデラックスIIIは、クラシックな外観と使用感がそのまま残された、入射光式露出計のスタンダードだ。正確な露出をつかんで狙い通りの再現をするのに是非持っておきたいアクセサリーの1つだろう。指針による表示のため、ショックに弱いので、持ち歩くときは必ずストラップを手に通しておきたい。



URL
  セコニック
  http://www.sekonic.co.jp/
  製品情報
  http://www.sekonic.co.jp/seihin/meter/lineup.html#3


( 木村 英夫 )
2006/06/27 01:12
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