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近代インターナショナル「ニコン-EOSマウントアダプター」

キヤノンのデジタルカメラにニッコールを装着

 以前はニコンのマニュアルカメラを使っていたが、最近はデジタルカメラでの撮影がほとんどだ。使用しているのはキヤノンの「EOS Kiss Digital N」で、レンズは同社のコンパクトな標準ズームをつけている。このレンズは小型軽量でよいのだが、それだけに開放F値がF3.5-5.6と暗くなってしまうのが難点だ。

 そこで、“もっと明るいレンズが使いたい”と思っていたときに、昔使っていたレンズを思い出した。手持ちのマニュアルニッコールレンズは「Ai Nikkor 50mm F1.4S」、「同24mm F2.8S」、「同ED 180mm F2.8S」の3本で、どれも明るい。これらのレンズをマウントアダプターを介してEOS Kiss Digital Nで使用してみようと考えた。

 現在マウントアダプターは、近代インターナショナルやハンザをはじめ数社から出ているが、今回は入手も比較的容易と思われる近代インターナショナルのもので試してみることにした。

 価格は18,900円。大きさは約68×9mm(直径×厚さ)、重量は23g(ともに実測値)。EFマウント側は黒色の硬質アルマイト仕上げで、Fマウント側は真鍮にクロムメッキの仕上げになっている。外周部には滑り止めのローレット加工が施してあり、着脱しやすいように外径を大きめにしているという。内側は内面反射軽減のため、マットブラックになっている。


左側のマークがレンズおよびボディへの取り付け指標 レンズ取り付け側。ネジ6本でしっかり固定してある。 ボディ取り付け側。アルマイトの滑らかな仕上げになっている

 マウントアダプターを使う上で重要なのがフランジバックの問題だ。フランジバックとは、レンズ取り付け面からセンサー面までの距離のことで、ボディのフランジバックよりもレンズのフランジバックが長ければ問題ないのだが、これが逆だと無限遠にピントが合わなくなる。そのためアダプター内に補正レンズを内蔵しているものがあるが、焦点距離が変わってしまったり、明るさが落ちるなどの不都合が出る。

 ニコンFマウントのフランジバックは46.5mm。対して、キヤノンEFマウントのフランジバックは44mmだから、今回の場合はマウントアダプターを介して問題なく使用できる。EFマウントの44mmというフランジバックは、レンズ交換式一眼レフカメラの中では短い方であるため、マウントアダプターを使用するには好都合なのだ。

 このアダプターを装着できるカメラは、マニュアルと絞り優先モードのあるEOSシリーズとなっており、ほとんどのEOSボディで使用できる。また、装着できるレンズは基本的にAiタイプ以降のニッコールで、Ai改造ニッコールでも使用可能だ。ただし、絞りリングがないGタイプニッコールは装着はできるものの、常に最小絞りとなってしまうため実質的に利用は難しい。またAiタイプ以降であっても、レンズの後端が長いものなど一部使用できないレンズもある。

 マウントアダプターの取り付けは、取り付け指標にしたがって行なう。アダプターはレンズとボディのどちらから先に取り付けてもよいということだが、筆者が試したところでは先にアダプターをレンズに取り付けて、それからボディに装着した方がやりやすかった。着脱時は、非常に滑らかにレンズを回転させることができ、がたつきもない。高精度な加工の証拠と言えそうだ。


レンズに取り付けたところ 写真中央に見えるのがレンズロック解除ボタン

 レンズ取り外しの際は、まずボディ側を先に外さなければならない。これは、アダプターのレンズロック解除ボタンがボディ取り付け側についているためなのだ。つまり、アダプターをボディ側に残してレンズを外すことができない。こうなるとちょっと厄介なのがレンズを交換する時だ。流れとしては、「レンズをボディから外し、レンズからアダプターを外す、さらにアダプターを交換したいレンズに取り付けて、再度カメラにレンズを装着」となる。今回は3本のレンズを頻繁に交換しながら撮影したが、非常に面倒であった。ここはあえてレンズ交換をせずに、1本のレンズを付けっ放しにして撮り歩く、といった使い方もいいと思う。

 撮影は、当然マニュアルフォーカスで行なう。このとき、フォーカスエイドは機能しない。早速試写してみると、結構ピントの甘いカットが多かった。甚だ言い訳がましいが、エントリーモデルであるEOS Kiss Digital Nのファインダー倍率は、35mm判換算で0.5倍。「EOS 5D」の0.71倍などに比べると像が小さく、ピントの山を掴むのが難しいのである。そのため、ピント合わせは慎重に行なう必要がある。慣れるまでは、少しづつピント位置をずらしながら撮るなどの工夫が必要だろう。

 測光は、絞り込み測光となる。まず絞り開放でピントを合わせたあと、撮影したい絞り値まで絞り込んで撮影する。このとき、絞り優先AEが使えるので便利だが、絞り値によってはファインダーが極端に暗くなるので、ピント合わせ後に絞り込むのを忘れないように注意したい。今回絞り優先で撮影したものは、ほとんど適正露出となった。また、マニュアルでのピント合わせに自信があるなら、はじめからある程度絞り込んだ状態でピント合わせをしてもいいだろう。F4やF5.6くらいまでだったら実用になると思う。

 ここで、今回使用したレンズを簡単に紹介しておこう。3本とも1981年に発売したモデルで、MFニッコールとしては最も新しいタイプになる。Ai Nikkor 50mm F1.4S(45,150円)と、同24mm F2.8S(56,700円)は現行品。同ED 180mm F2.8S(119,700円)は最近生産を終了した。


Ai Nikkor 50mm F1.4S 同24mm F2.8S 同ED 180mm F2.8S

 これらのレンズは、“オールドレンズ”というほどではないにしても、絞り開放では高輝度の部分にパープルフリンジが出やすい。また、画面全体に“もや”がかかったようなコントラストの低い描写になる。しかし、F5.6くらいまで絞るとパープルフリンジもほとんど出なくなり、画面もくっきりしてくる。絞り開放で“ソフトフォーカス調”、少し絞って“クリアな描写”と使い分けができそうなところが面白そうだ。

※作例のリンク先ファイルは、撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出モード/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算焦点距離を表します。


 Ai 50mm F1.4Sは、フィルム時代の定番標準レンズ。Kiss Digital Nに取り付けた時の焦点距離は35mm判換算で80mmとなり、明るい中望遠レンズといった感じになる。


50mm F1.4 / 3,456×2,304 / 1/500秒 / F1.4 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 80mm
絞り開放で撮影。全体的にソフトフィルターをかけたような、やわらかい描写になる。ガードレールの部分にはパープルフリンジも若干見られる
50mm F1.4 / 3,456×2,304 / 1/30秒 / F1.4 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 80mm
絞り開放で接近して撮影すると、前後のボケはかなり大きくなる。手前の鎖にピントを合わせてみた。やはり、ソフトな表現となる

50mm F1.4 / 3,456×2,304 / 3.2秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:オート / 80mm
点光源を入れてみたが、F5.6まで絞るとパープルフリンジも発生せず、まとまった描写になる
50mm F1.4 / 3,456×2,304 / 13秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:オート / 80mm
手前の島と海面を見せるために、多めの露出を与えてみた。F5.6としたことで、点光源も破綻のない写りとなった

 Ai 24mm F2.8Sは、EOS Kiss Digital Nでは35mm判換算の焦点距離が38mmとなる。35mm判の35mmレンズに近いが、筆者の感覚としては、このくらいの画角を標準レンズとみなしてよいと感じた。


24mm F2.8 / 3,456×2,304 / 1/500秒 / F5.6 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 38mm
F5.6でくっきりと写すことができる
24mm F2.8 / 3,456×2,304 / 4秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:太陽光 / 38mm
ほぼ最短撮影距離(30cm)での撮影。ボケがなだらかで自然な感じだ

24mm F2.8 / 3,456×2,304 / 1秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:オート / 38mm
建築物もほとんど歪曲なく写るようだ
24mm F2.8 / 3,456×2,304 / 13秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:オート / 38mm
38mm相当という画角以上の広がりがある感じだ。街灯の強い光源付近にややゴーストが見られる

 Ai ED 180mm F2.8は、EDレンズを採用した大口径の望遠レンズ。焦点距離は35mm判換算で288mmになるから、35mm判で300mm F2.8を使う感覚か。手ブレには気をつけたい。


180mm F2.8 / 3,456×2,304 / 1/800秒 / F2.8 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 288mm
画面内に強い光源がなければ、絞り開放から実用になる画質だ。ボケも自然
180mm F2.8 / 3,456×2,304 / 1/400秒 / F5.6 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 288mm
F5.6に絞ると、なかなか解像感のある描写となる

180mm F2.8 / 3,456×2,304 / 1/2秒 / F5.6 / 絞り優先 / 0EV / IS0100 / WB:オート / 288mm
色のにじみや歪曲もほとんど見られない
180mm F2.8 / 3,456×2,304 / 2秒 / F5.6 / マニュアル / 0EV / IS0100 / WB:オート / 288mm
細かい部分までよく写っている。絞ったことで、パープルフリンジも押さえ込まれたようだ

 今回使用したマウントアダプターは、量販店などでは実売価格15,000円前後で入手できる。MFニッコールをすでに持っているという人で、EOSボディを使用している人は試してみるのもいいだろう。また、中古市場にはMFニッコールレンズが数多く流通しており、それらの描写を楽しむのもいいと思う。さらにコシナは、ニコンAi-Sに準拠したレンズ「Planar T* 1.4/50ZF」を発売しており、今後「同1.4/85ZF」も登場する。ニッコールレンズのみならず、こうした最新のマニュアルレンズをEOSボディで使用できるのもマウントアダプターの魅力といえる。



URL
  近代インターナショナル
  http://www.kindai-inc.co.jp/
  製品情報
  http://www.kindai-inc.co.jp/mount_nikeos.htm


( 本誌:武石 修 )
2006/05/23 02:38
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