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ニコン「Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5」
~国産標準ズームの元祖をデジタル一眼レフで使ってみる
バックナンバー
少し前に、親戚の家で面白いレンズを見つけたので借りてみた。それがズームニッコール43-86mm F3.5、通称「ヨンサンハチロク」だった。
ニコンで初めての標準ズームだという。このレンズは、1960年代の初めのレンズ固定式一眼レフ、「ニコレックスズーム」に付いていたものだが、その後、ニコンFマウントの交換レンズとして売り出された。借りたレンズは1977年以降のAiタイプに対応した仕様のレンズである。
知り合いの雑誌編集者と、デジタル一眼レフに変わったレンズを付けて見せ合う、という遊びをしていたが、このヨンサンハチロク付きのD100を見せたところ、デジタル一眼レフに一番合わないレンズを付けていますね、といわれた。変わったレンズに詳しい彼によると、ヨンサンハチロクには3つのバージョンがあるのだという。生産時期が長いレンズだけに光学系にもいくつか変遷があるらしい。
D100に付けてみた。フィルター径52mmと細身のため、大変コンパクトだ。AFのズームレンズの場合、ズームリングとフォーカスリングの2つのリングが付くが、ヨンサンハチロクはひとつのリングでフォーカシングとズーミングを行なう
絞りのF値と直進ズーム時の被写界深度表示をうまく表示している。実用性はともかく、カラフルで楽しい
ニコンのレンズは古くても、不変のニコンFマウントだから、現行のデジタル一眼レフに装着できる。ただし、1977年以前のAiタイプに対応する前のレンズは、取り付けると不具合が生じる。以前のレンズでもAiタイプに改造されているものなら大丈夫だということだが、ニコンでのAi改造受け付けは、かなり前に終わっている。
ただし、不変のニコンFマウントとはいっても、ニコンのデジタル一眼レフは、高級機(D1シリーズ、D2シリーズ)と普及機(D70s、D50、D100、D70)では古いレンズへの対応が異なる。普及機では露出計が全く働かないのだ。
今回の撮影は、富士写真フイルムの「FinePix S2 Pro」を使ったが、F80ベース機で露出計が働かないのは同じ。フィルム一眼で培った“露出の勘”をもとに露出を決めてみる。
カラーフィルムのパッケージに簡易露出表が書いてあったのを覚えておられるだろうか? ISO100のフィルムでは、シャッタースピードを1/125秒とすると、快晴ではF22、晴れではF16、曇りではF5.6というものだ。
これをベースにシャッターを切ってみて、モニターで画像をチェック、ヒストグラムを見てみて露出の過不足を調整していけばいい。
※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値(F)/ISO感度です。
中学生の頃「写真工業」という雑誌で、ヨンサンハチロクは歪曲収差がすごく出る、という記事を読んだのを思い出して、ブロック塀を撮ってみた。ワイドで樽型、望遠で糸巻き型とあったと思うが、86mmで撮るとこの糸巻き型の歪曲。APS-Cフォーマットで端を切ってもこの歪曲。当時としてはしかたがなかったのだろうが……。
4,256×2,848 / 1/15(秒) / マニュアル / 100
ワイド端43mm域にて、車庫で休む流山電鉄の電車を撮ってみた。柱に樽型の歪曲が見られる。日陰なのでF5.6を基準に段階露光。1/60秒のカットが適正となった
4,256×2,848 / 1/60(秒) / マニュアル / 100
比較対照として、フォクトレンダーの40mm F2でも撮ってみた。焦点距離3mm違いでこんなに画角が違うの? というくらい広い範囲が写る。43-86mmの実際の焦点距離はどのくらいなのだろうか?
4,256×2,848 / 1/60(秒) / マニュアル / 100
ヨンサンハチロクに時代を感じるのは、レンズの最短撮影距離が1.5mであるというところ。86mmにセットし、最短撮影距離1.5mでトマトを撮影。撮影倍率は1:10くらいだろうか?
4,256×2,848 / 1/90(秒) / マニュアル / 100
今回、ヨンサンハチロクを使ってみて、デジタルカメラには最新のレンズでなければならない、ということはなく、昔のレンズでも楽しめることを再認識した。ただ、カメラの露出計が動かないのは仕方がないところ。露出の勘を養って、是非チャレンジしてみてほしい。
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URL
ニコン
http://www.nikon.co.jp/
ニッコール千夜一夜物語 第四夜「Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5」
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/nikkor/n04j.htm
( 木村 英夫 )
2005/12/20 00:50
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