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イカロス出版 デジタルカメラで撮るヒコーキ写真

デジカメが広げる飛行機写真の撮影領域

価格:1,600円
判形:A4変形判


 デジタル一眼レフを購入してから、飛行機の写真を撮りに行くことが飛躍的に多くなった。せっかく高い機材を買ったんだから、行かなきゃ損だ、という気持ちもあるが、やはり高速な移動体を撮影するシーンでは、一眼レフのレスポンスの良さは群を抜いているし、実際、撮影がしやすい(できあがった写真のクオリティはさておいて)。

 今回紹介する「デジタルカメラで撮るヒコーキ写真」は、こうしたデジタル一眼レフ初心者をはじめ、これまで銀塩一眼レフカメラを使っていたが、デジタルに移行してみたい、という人々をもターゲットとした一冊だ。

 一般的なカメラ雑誌やムックでも、飛行機をあつかった作例はよくみられるが、本書ではその書名が示すとおり、すべての作例が航空機。カメラのボディやレンズ選び、撮影ノウハウなどもすべて「航空機を撮影する」ことを主眼として執筆されている。ヒコーキマニアなら、写真を見ているだけでも楽しめるだろう。


 本書の冒頭を飾るのは2人の航空写真家、John Dibbs、徳永克彦の両氏だ。Dibbs氏は超音速機での飛行時間が200時間を超えるという写真家で、アメリカ海空軍、イギリス空軍公認カメラマンとしても知られる。徳永氏は国内外で活躍する航空写真家で、軍用機関連の雑誌に興味がある方なら、一度はその作品を目にしているだろう。冒頭では、この両氏のすばらしい作品をバックに、2人が銀塩一眼レフからデジタルへ移行したきっかけや、その活用方法について熱く語られている。

 Dibbs氏が初めて使用したデジタル一眼レフは、2年前に使用したというEOS-1Ds。ある日、同氏は、フィルムとデジタル(EOS-1Ds)の両方でF-16戦闘機を空撮し、フィルムでは衝突防止灯が写っているのが確認できたが、デジタルでは、その透明カバーの中にある電球までが確認でき、衝撃をうけた。それ以来、デジタル一眼レフに完全移行したという。

 徳永氏が初めて使ったデジタル一眼レフはEOS DCS-3。ただし、そのボディサイズから、航空自衛隊のT-4練習機など小型機のコクピット内での取り回しが悪く、使用しなくなったものの、デジタルならではの可能性をかいま見ることができたという。その後、D1、D1Xを経て、現在ではD2XとEOS-1Dsが主力機材であるという。

 同氏はデジタルならではの使い方として、無線機能を活用した撮影方法を紹介。ニコンのワイヤレスユニット「WT-2」を使い、カメラ本体を機体主翼下面のポッドに、後ろ向きに内蔵し、IEEE 802.11g無線LANで、コクピットのノートPCにデータを転送しながら撮影したという。通常、作例のように飛行中の機体を、前方上方から撮影するには、空中給油機の後部から撮影するなど、シチュエーションが限られるが、この方法なら応用範囲が広がる。これによって銀塩では不可能だった撮影も可能になったという。我々一般人には、なかなかまねはできないが、とても興味深い話だ。


 本書では、航空機の写真を撮る上で、まずは機材の知識を学ぶ。「デジタル一眼レフではじめるヒコーキ写真 DSLRフォト講座」では、航空機の素早い動きに対応するため、一眼レフが必須であることや、CCDやCMOSなどの基礎知識、ホワイトバランス、画像ファイル形式の種類など、フィルム時代と比較しながら丁寧に紹介。デジタルカメラを使ったことがないという人でも、一通りの知識を身につけられる。

 「デジタル一眼レフ&レンズ一挙テスト!」では、各カメラメーカーのボディ12機種、レンズ16本を紹介。航空機を撮影するという限定した目的からか、紹介されているレンズは各マウントごとに3~4種類と少ないが、それぞれ作例とともに、現場での使用感がコメントされ、説得力があるのが特徴だ。

 カメラマンの伊藤久巳氏、中野耕志氏らによるコラムも掲載。両氏が日頃使っている機材や航空機の撮影時のノウハウ、デジタルならではのメリット/デメリット、銀塩時代との違いなどが多数の作例とともに語られている。

 デジタルカメラと銀塩カメラでは、共通点もあるが、まったく概念の異なる要素も当然ながら多い。「デジタル写真のワークフロー講座」では、初めてデジタルカメラを使う人を対象に、記録メディアの扱いから、撮影画像サイズ、ホワイトバランスなど各種設定、Photoshop Elementsを使用した画像処理を経てプリンタでの印刷、データの保存まで、順を追って解説。また、その上級講座としてRAWデータの扱い方も紹介。JPEG画像との違いから現像方法までを細かく指南してくれる。

 巻末にはデジタルカメラや航空機の専門用語を扱った用語集も備えるほか、国内の主要な自衛隊基地/駐屯地や民間飛行場も紹介。図解入りの撮影スポットや所属航空機、エアバンドの周波数など掲載されている。

 本書は、露出や被写界深度の知識など、撮影技術の基礎的なものは割愛されているので、カメラに関するある程度の知識は必要だ。しかし、これまで銀塩カメラで航空機を撮影していたという人にとっては、デジタルへの移行がよりスムーズになる良書と言える。また、基本的には飛行機マニア向けの書籍ではあるが、掲載されている写真のレベルも高く、少しでも飛行機に興味があるという方なら、買って損はないだろう。




URL
  イカロス出版
  http://www.ikaros.co.jp/


( PC Watch:清宮 信志 )
2005/10/13 00:38
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