特別企画
公開前のOM-D E-M1新ファームウェアを試す
マクロ撮影で威力を発揮する「深度合成」など
Reported by 本誌:鈴木誠(2015/11/13 07:00)
オリンパスOM-Dシリーズの最上位機種「OLYMPUS OM-D E-M1」は、早いもので発売から2年が経過した。2013年10月に満を持して同社のフラッグシップ機として投入されたE-M1は、その完成度からミラーレスカメラの地位向上に大きく貢献した1台と言えるだろう。
そのE-M1に、新しい機能拡張ファームウェア「Ver.4.0」が提供される。公開時期は11月下旬の予定だが、一足先にそのベータ版が入ったE-M1に触れてみた。
E-M1 Ver.4.0の概要とは
E-M1では、これまでVer.2.0においてデジタルシフトの追加や、Ver.3.0ではAF追従連写のコマ速アップなどが行われてきた。こうした発売後のポジティブな機能アップデートは、他社も含め熱いファンを掴んでいるデジタルカメラに共通の特徴だろう。
今回は、新しいE-M1 Ver.4.0の機能拡張から以下に注目した。アップデート内容の全詳細はこちらをご覧いただきたい。
- 深度合成モード
- フォーカスブラケット
- OVFシミュレーションモード
- MFクラッチ機構/スナップショットフォーカス機構の無効化
E-M1のアップデートで最も特徴的なのは、新しい撮影モードである「深度合成モード」および「フォーカスブラケット」だろう。フォーカスブラケットは1回のレリーズでピント位置をずらした複数枚の画像を連続撮影する機能で、深度合成はそのフォーカスブラケット撮影の“プリセット”的な機能。8枚を電子シャッターで撮影し、画像の合成までをカメラ内でやってくれるお手軽モードだ。
大伸ばしなどを想定した緻密な仕上がりを求めるなら「フォーカスブラケットで素材撮影+PCで合成」がより適しており、サイズや用途的に問題がなければ「カメラ内での深度合成モード」と使い分けるのが、手軽で便利といえる。
ご存知の通り、深度合成はオリンパスのコンパクトデジタルカメラTGシリーズで定評のある機能で、このマクロ撮影のためにTG-4などを指名買いするユーザーは多いという。E-M1の深度合成は対応レンズが多少限られるものの、フラッグシップのレンズ交換式カメラにこの機能が本格展開してきたのが見どころだ。
「OVFシミュレーションモード」は、電子ビューファインダー(EVF)に新しい側面を持たせる機能だ。EVFはリアルタイムで色調や露出を確認しながら撮れるメリットがあるが、極端な輝度差のあるシーンでは光学ファインダーのように明部・暗部を同時に見渡すのが難しい。常にファインダー像の見え方が同じという点で、一眼レフ気分で撮れるモードとも言えるだろう。オリンパス機では、すでにE-M10 Mark IIに搭載されている。
「MFクラッチ機構/スナップショットフォーカス機構の無効化」は、オリンパスレンズの一部に採用されている、フォーカスリングをスライドさせてMFに移行したり、指定のパンフォーカス状態に移行したり、といった連動機構をオフにできる新機能だ。
デジタルカメラで動画を撮らない人は動画ボタンを無効化したいように、“MFは使わないからオフにしておきたい”、“撮影中に不意に切り替わるのが心配”といった慎重派のニーズに応えた機能追加である。
また、E-M1のメニュー項目の並び順に一部変更が加わり、より新しいE-M5 Mark IIに揃える形になった。2台を併用しても混乱がないようにとの配慮だという。
“下克上”の恐怖に福音
さて、今回のアップデートでは、E-M1 Ver.4.0と同時にE-M5 Mark II Ver.2.0も予告されている。E-M1がいわば“2015年仕様”になるのが一番大きな話だと思うが、もちろんE-M5 Mark IIユーザーにも見逃せないニュースだ。
しかし見比べると、例えば深度合成はE-M1のみの新機能だったり、後から出たE-M5 Mark IIにE-M1を上回る仕様(手ブレ補正の威力など)を見つけて羨ましく感じていたE-M1ユーザーとして、“下克上”的な気分が多少和らいだのも事実。ソフトウェア面だけでも後発機種に見劣りしないよう、こうした機能拡張アップデートを開発してくれたことは素直に喜びたい。
予告されているVer.4.0のリリース時期まで、ひと月を切った。今回の試用はあくまで新機能を理解するためのベータ版だったため、成長した本当の姿を見るまでは、まだ日がある。E-M1およびE-M5 Mark IIのユーザーは11月下旬を楽しみに待ちたい。