特別企画

写真家 礒村浩一のPCプロデュース、第3弾は薄型実用系エントリー!

十分な現像処理能力を持ち、かつ「奥さんに怒られないPC」とは?

「写真をいっぱい撮る人向けのサクサク動くパソコンをガチで作っちゃお!」という思いつきから始まったこの企画。実は昨夏から水面下で進行させていたのだが、気がつけば冬となり更に年を越してしまった。すでにPCの販売は開始されており、年末の発売以降おかげさまで好調にオーダーをいただいているという。

すでに読者のお手元で活躍しているマシンもあることと思う。この年末年始で溜まり溜まった撮影画像をいっきにセレクト&RAW現像したという方もいらっしゃるのではないだろうか。お役に立てていればプロデューサー冥利につきるというものである。ありがたやありがたや。

ここで年末年始の休みで流れを忘れてしまったという方は、バカっ速い「マスターズモデルPC」とハイコストパフォーマンス「プレミアムモデルPC」を組み上げるまでのレポート記事を今一度ご覧いただきたい。

eX.computer PA9J-C64/T(マスターズモデル)

CPU:Intel Xeon E5-2630v3 2.4GHz 8コア
メモリ:32GB 2,133MHz DDR4 SDRAM
起動ドライブ:256GB SSD(SATAIII接続/6Gbps)
ストレージドライブ:400GB NVMe SSD(PCI-Express接続)
グラフィック カード:NVIDIA Quadro K1200

eX.computer PA7J-B64/T(プレミアムモデル)

CPU:Intel Core i7-6700 3.4GHz 4コア
メモリ:16GB 2,133MHz DDR4 SDRAM
起動ドライブ:256GB SSD(SATAIII接続/6Gbps)
ストレージドライブ:2TB HDD(SATAIII/SATA 6Gbps対応)
グラフィック カード:NVIDIA GeForce GTX 750Ti

妥協とは言わせないエントリーPCを組み上げる!

プロデュースPC第3弾では、コンパクトな筐体をセレクトするとともにコストを極力抑えることを重視した、いわば「財布に優しくリビングに置いてもジャマだと奥さんに怒られないPC」を組み上げたいと思う。もちろん今回もBTOパソコンの専門家「eX.computerのなかの人」に協力を仰がせていただいた。

前回までの2回でかなりの無茶ぶりをさせていただいたにも関わらず、きっちりと纏め上げてくれたので、今回も安心してワガママを言わせてもらった。まずはスペック一覧をどうぞ。

今回製作した「eX.computer PS5J-A64/T(エントリーモデル)」

CPU:Intel Core i5-6500 3.2GHz 4コア
メモリ:8GB 2,133MHz DDR4 SDRAM
起動ドライブ:2TB HDD(SATAIII | SATA 6Gbps対応)
グラフィック:インテル HD Graphics 530(プロセッサー内蔵)
光学ドライブ:DVDスーパーマルチドライブ(DVD±R 2層書込み対応)
電源ユニット:300W 80PLUS BRONZE対応
ケース:MicroATXスリムタワーケース(EX1/7302T/S)
OS:Windows 10 Home(64bit版)

eX.computer PS5J-A64/T(エントリーモデル)

シンプルデザインのスリムなPCケースを採用

まず第一ポイントとなるのがコンパクトな筐体のセレクトだ。最近は究極のコンパクトPCとしてスティックタイプPCというものまで登場しているが、正直あれはWindowsが「動く」というレベルのものだ。しかしデジカメ画像を保存・現像するにはそれ相応の性能が必要となる。実は性能をキープしながらサイズを抑えるというのはなかなか大変なことなのだが「リビングに置いても(たぶん)怒られない」PCを実現するにはコンパクトな筐体は欠かせない。

そこで「eX.computerのなかの人」が提案してくれた筐体が「MicroATXスリムタワーケース(EX1/7302T/S)」である。およそ幅98×奥行き380×高さ335mmという、ちょっと厚めのピザボックス程度のケースでありながら、HDDは最大2台内蔵可能(オプション時)。そして5インチの光ドライブ、3.5インチのフロントベイにメモリーカードリーダーを標準搭載という汎用性のある筐体だ。

汎用性がありながらスリムなサイズのPCケース。縦横どちらにも設置できる。専用のスタンドが付属。オプションでサイドファン部に防塵フィルタを取り付けることもできる
スリムタイプPCでもやはり光学ドライブは欠かせない。DVD±R 2層書込み対応のDVDスーパーマルチドライブを搭載。またデジカメ画像の取り込みに便利なメモリーカードリーダーも用意。USB 3.0ポートx1付属
PC前面下部にはUSB 2.0ポートx2、オーディオ入出力ジャックがある
PC背面。スリム筐体ながらロープロファイル規格に対応したPCI Expressスロットを搭載しているのがわかる。スロットカバーはスクリューレスタイプ
PC背面端子部。PS/2(マウス/キーボード)ポート×1、USB 3.1ポート×2、USB 2.0ポート×4、アナログオーディオ入出力、LANポート×1。ディスプレイ出力はHDMIとアナログVGA(ミニD-Sub15)が各1つずつ搭載。HDMIとVGA同時出力によるマルチディスプレイにも対応

さてここからはPCのパフォーマンスを左右するパーツについて解説しよう。

PC内部。限られたスペースに無駄なく配置されたパーツ類。ケーブルの取り回しもとても綺麗だ

CPU:インテルCore i5-6500

PCの心臓部となるCPUには信頼性とコストパフォーマンスを両立するインテルCore i5を選択した。4コア搭載でクロック数は3.2GHz。GPU内蔵。マザーボードはインテルH110 Expressチップセット対応のMSI H110M PRO-VH(MicroATX)を採用する。

メモリ:PC4-17000 DDR4 8GB

エントリーPCといえどもパフォーマンスの良し悪しに直結するメモリーにはこだわりたい。最新のDDR4対応メモリを8GB搭載。Photoshopで枚数の多いレイヤーを扱うなどの高負荷をかけるのでなければメモリ8GBでも十分に画像処理に対応できる。

インテルCoreプロセッサー第6世代CPU「Skylake」対応マザーボードのなかでもコンパクトなMSI H110M PRO-VHを採用。メモリスロットは2つなので、16GBにアップグレードする場合はBTOでオーダーするのがオススメだ

ドライブ:2TB HDD(SATAIII接続/6Gbps)

起動ドライブには2TBのHDDを採用。読み込み書き込み速度はSSDの方が勝るが、容量に対する単価がまだまだSSDは高いため、大容量とコストパフォーマンスの両立が可能なHDDを選択した。HDDは最大で2基積むことも可能なので、BTOでストレージ用HDDを増設するのもよいだろう。

グラフィックス:インテルHD Graphics 530(CPU内蔵)

このエントリーモデルPCではCPU内蔵のグラフィックスを使用する。ただしGPUはAdobe Photoshop CCやLightroom CCには正式対応していないので、RAW現像時にエラーが出てしまった場合には、それぞれのGPU使用設定の「グラフィックプロセッサーを使用」からチェックマークを外しておこう。

これぞ妥協しないエントリーモデルの実力だ!

さてここからはこのエントリークラスPCで実際にRAW現像を行いパフォーマンスを検証しよう。まずはマスターズモデルおよびプレミアムモデルでの検証にも使用したRAWデータ500枚を一気に現像してそれにかかる時間を計測する。

使用するデータはデジタル一眼レフカメラのなかでも現在もっとも解像度の高いキヤノンEOS 5Dsで撮影されたRAWデータ500枚。これをまずは今回組み上げたPCのシステムドライブであるHDDにコピー。その後Lightroom CCで読み込み、一括書き出しでJPEGへと現像をおこない同様に計測したマスターズモデルおよびプレミアムモデルでの結果と比較する。

Lightroom CCのRAW現像画面

Photoshop Lightroom CCにてEOS 5Ds RAW500枚(およそ32GB)をJPEGに現像

eX.computer PA9J-C64/T(マスターズモデル)32分
eX.computer PA7J-B64/T(プレミアムモデル)35分
eX.computer PS5J-A64/T(今回作ったエントリーモデル)42分

有効5,060万画素を誇る超高解像度のRAWデータともなると1ファイルで70MB近くにもなる。さすがにエントリーモデルで500枚のRAWデータの一気現像は厳しいだろうと思っていたのだが、マスターズモデルおよびプレミアムモデルには敵わないまでも、42分間で500枚を処理することができた。これはなかなかのスコアと言ってもよいレベルだ。

次にこのエントリーモデルを購入する主なユーザー層を想定して、もう少し軽めのRAWデータの現像を行ってみる。使用する画像データはOLYMPUS OM-D E-M1で撮影されたRAWデータ500枚。これをLightroom CCで一気にRAW現像を行い、それにかかる時間を計測する。

こちらはE-M1のRAW現像画面

Photoshop Lightroom CCにてOM-D E-M1 RAW500枚(およそ7GB)をJPEGに現像

eX.computer IPA9J-C64/T(マスターズモデル)18分
eX.computer PA7J-B64/T(プレミアムモデル)19分
eX.computer PS5J-A64/T(今回作ったエントリーモデル)25分

OM-D E-M1は有効画素数1,628万画素のミラーレスカメラだ。RAWデータ1ファイルは約14MBである。このクラスのカメラであればEOS 5Dsよりは日常的に使う頻度も高いことが想定される。またポートレート撮影のように撮影枚数が多くなることも珍しくないので、RAW 500枚の現像はかなりユーザーの実情に近いテストだといえる。そのなかで約25分間で現像を完了することができるPCは、エントリーモデルといえども十分に即戦力になり得るはずだ。

さてここでもう1つ検証すべき点がある。写真のセレクト作業を行う際にストレスの原因となる要素として、画像の表示スピードが挙げられる。これは写真を取り扱うPCにはとても重要なファクターだ。

そこで実際の運用時を想定し、Lightroom CCライブラリモジュールで画像を100%表示にして状態でコマ送りしてみたところ、さすがにマスターズモデルおよびプレミアムモデルと比べると、このエントリーモデルでは画像の表示までに時間がかかってしまう。EOS 5Dsの画像で三呼吸、E-M1の画像で一呼吸半の待ち時間といったところだ。

ただしこれは100%表示のままでコマ送りをした場合の結果である。全画面表示に限ればEOS 5Ds、E-M1ともにほぼ瞬時に画像が切り替わるので、粗セレクトを行った後に100%表示で細かく画像を確認するというワークフローであればストレスは最小で済むことだろう。

エントリーモデルの価格は税別7万9,800円に決定!

最後にもう1度、今回のエントリーモデルのコンセプトを確認しよう。「財布に優しくリビングに置いてもジャマだと奥さんに怒られないPCを組み上げる」である。

まず省スペースなスリムケースを採用することで、マスターズモデルおよびプレミアムモデルと比べると大幅にスリムダウンさせることができた。それでありながら、レンズ交換式カメラの画像を取り扱うことを想定した現実的なパフォーマンスを維持したPCとして組み上げることができた。いわば羊の皮を被った(おとなし目の)オオカミといったところだろうか。

そしてこのエントリーモデルの価格は税別7万9,800円に決定。同14万9,800円(税別)のプレミアムモデルと比較してもかなりコストパフォーマンスに優れたPCといえる。ほら、本当に財布に優しい価格になったでしょ。eX.computerさん太っ腹です。

本気で写真に向かい合う貴方にこそ勧めたいPCできました

このように3回に渉り展開してきたデジカメユーザー向けPCプロジェクト。「マスターズモデル」「プレミアムモデル」「エントリーモデル」といった3つのPCのプロデュースをさせていただきそれを実際に発売しているわけだが、これらは筆者の撮影画像を処理するワークフローを基に導き出された、かなり偏りのあるPC構成となっている。

それはPCに精通された方から見ると一見無駄にも思えるパーツ選びや、不可解なこだわりに思える箇所もあるかもしれない。ただ、我々写真家がPCに求めることは、画像処理の現場でいかにストレスが少なく、かつ安定して処理を行えるかといったことなのだ。これはある意味では超ワガママなオーダーといえる。

このワガママにしっかりとした知識と技術で応えてくれた「eX.computer」は、実に心強く、また根気強いパートナーである。この信頼感こそがプロの世界では重要なファクターなのである。これら「eX.computer」から発売された3つのモデルは、本気で写真に向かい合う人にこそオススメできるPCなのである!!

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy