特別企画

写真家 礒村浩一のPCプロデュース、次はプレミアムモデルだ!

RAW現像サクサク、でもコスパ最強のハイパフォーマンスマシンとは

今回のテーマは、実用性能をなるべくキープしつつ、ある程度パーツ代を抑える方向で「プレミアムモデル」を作ること!

「写真をいっぱい撮る人向けのサクサク動くパソコンが欲しい!」という切実な声から始まった「だったらいっその事つくっちゃえPCプロジェクト」。

初回は男気に溢れる「eX.computer」の協力のもと、ガチで超絶速いPCを組み上げることができた。しかもそのPCは実際に販売されることとなり、すでにeX.computerの販売サイト等から購入が可能となっている。

この顛末は前記事にてお伝えした通りだが、プロデューサーという立場をいいことに「礒村専用のとにかくバカっ速いPCを組んでください!」とかなりワガママな要望をさせていただいた。それにも関わらずちゃんとバランスの取れたPC構成として仕上がってきたのは、さすが「PC組み立てのプロ」の仕事だ。プロカメラマンの過剰とも言えるほどの要求でもしっかりと応えてくれるPCは、もはやプロ向けデジタルカメラと同様信頼できる機材といってよい。

だが、実際にはそこまでのモンスターPCを日常的に必要とする方はそう多くはいないだろうし、仕様に妥協することなく思うがままパーツを組み込んだことで、価格もそれなりの金額となってしまった。そこで今回は性能とコストのバランスを重視したPCの構成を考えていくことにする。

高性能を維持しつつコストとのベストバランスを探る

まずは前回組み上げたモンスターPCのスペックをおさらいしよう。「写真の保存と編集を快適に行なえるPC」を実現するためにCPU、メモリ、ストレージ、グラフィックスカードの四点を重点的に高速化してある。


    ●前回紹介した「eX.computer PA9J-C64/T(マスターズモデル)」
    CPU:Intel Xeon E5-2630v3 2.4GHz 8コア
    メモリ:32GB 2,133MHz DDR4 SDRAM
    起動ドライブ:256GB SSD (SATAIII接続 / 6Gbps)
    ストレージドライブ:400GB NVMe SSD (PCI-Express接続)
    グラフィック カード:NVIDIA Quadro K1200

あらためて書き記すとなんともワガママなスペックだ。仮想ライバルマシンとしていたMacProのスペックをすでに超えてしまっている。もちろんパフォーマンスには文句の付け所がない。

今回はマスターズモデルほどの最高性能は求めていないが、実用面では強力なスペックを心がけてみた。名前は「プレミアムモデル」とでもしよう。


    ●今回製作した「eX.computer PA7J-B64/T(プレミアムモデル)」
    CPU:Intel Core i7-6700 3.4GHz 4コア
    メモリ:16GB 2,133MHz DDR4 SDRAM
    起動ドライブ:256GB SSD(SATAIII接続 / 6Gbps)
    ストレージドライブ:2TB HDD(SATAIII | SATA 6Gbps対応)
    グラフィック カード:NVIDIA GeForce GTX 750Ti
    光学ドライブ:ブルーレイディスクドライブ(BD書き込み対応)
    電源ユニット:550W(定格500W)80PLUS BRONZE認証
    ケース:ATX ミドルタワーケース(EX1/598TA)
    OS:Windows 10 Home(64bit版)

eX.computer PA7J-B64/T(プレミアムモデル)を起動してみた。実際にはディスプレイ、キーボード、マウス、カメラは付属しない。

以下、各パーツを解説しよう。

CPU:Intel Core i7-6700

まずはPCの心臓部であるCPUだ。マスターズモデルではコア数を重視したIntel Xeonを採用したものを、クロック数重視のIntel Core i7に変更することで、高速処理を維持したままコストを大きく下げることができる。これはXeonが24時間365日稼働する必要のあるサーバーなどでの使用を想定して耐久性を高く設計していることと、業務で使い倒すようなプロフェッショナルユース向けに複数のタスクを並列処理できるよう複数のマルチコアを搭載しているため製造コストが高くなっているからだ。

しかしだからといってCore i7の耐久性が低いというものでは決してない。ということで、ここではコストパフォーマンスの高さからCore i7を選択する。

マザーボードに搭載されたCPU Core i7-6700には大きなクーラーが。ケース背面には排気用のファンを設置している。電源はマスターズPCと同じ550W(定格500W)モデルを選択した。

メモリ:DDR4 16GB PC4-17000

メモリはPCにおける作業のスムーズさを左右する重要なパーツだ。もちろんメモリ搭載量が大きいほど作業をスムーズに進めることができる。

ただPhotoshopやPhotoshop LightroomといったアプリケーションでRAW現像などを行う場合でも、複数のアプリケーションで同時に高負荷な処理を行うのでなければ、ほとんどの場合でメモリ16GB搭載でも十分に作業が可能だ。このことから今回はメモリは16GBとする(マスターズPCのメモリは32GB)。

ドライブ:256GB SSD(SATAIII接続 / 6Gbps)& HDD 2TB

OSを格納するシステムドライブには高速で読み書きが可能なSSDは欠かせない。 HDDとは違い物理的な駆動機構を必要としないSSDは、マシン全体の反応速度を大きく改善してくれるからだ。

そこでシステムドライブにはマスターズモデルと同じく256GB SSD(SATAIII接続 / 6Gbps)を選択。そのかわりにストレージドライブにはどうしてもコスト高となってしまう400GB NVMe SSDに替えて、2TB HDD(SATAIII | SATA 6Gbps対応)を採用することで大容量と低コストを両立させよう。

システムドライブは256GB SSD (SATAIII接続 / 6Gbps)、ストレージドライブには2TB HDD (SATAIII | SATA 6Gbps対応)を選択

グラフィックス:NVIDIA GeForce GTX 750Ti

最後に忘れてはいけないのがグラフィックスカード。PCの描画処理を高速化してくれる機能を持つため、PhotoshopやLightroomでの高速処理を行うためにもGPUに対応したカードを選択したい。

ただマスターズモデルで実現している10bitカラー出力は、まだそれを必要としないユーザーも少なくないことから、見送ることでコストを抑えることにする。

これらの条件を踏まえてグラフィックスカードにはNVIDIA GeForce GTX 750Tiをチョイス。高速なビデオカード専用メモリ2GBを搭載していることや、編集作業の効率アップに繋がるマルチディスプレイにも対応しているのもポイントが高い。

マザーボードのPCI Express 3.0にはグラフィックスカードGeForce GTX 750Tiを装着。取り付けには2スロット分を使用。
NVIDIA GeForce GTX 750Tiグラフィックスカード。派手な色使いで見た目からして速そう!
Lightroom CCでのGPU使用設定 [編集]-[環境設定]-[パフォーマンス]内「グラフィックプロセッサーを使用」にチェック。
Photoshop CCのGPU使用設定 [編集]-[環境設定]-[パフォーマンス]内「グラフィックプロセッサーを使用」にチェック。
Photoshop Bridge CCのGPU使用設定 [編集]-[Camera Raw環境設定]内「グラフィックプロセッサーを使用」にチェック。

ケース:AeroStreamミドルタワーケース

PCケースはマスターズモデルと同じくeX.computerオリジナルのAeroStreamミドルタワーケース。大きめのケースなので内部のパーツ拡張も比較的行いやすい。

マスターズモデルと共通のケースを選んだ。
ケースフロント部に設置された吸気ファン。ここから空気を吸い込みPCケース内の背面に設置された排気ファンによってケース外に効率良く排出することができる。ファンには取り外して掃除することができるダストフィルターが付属。
ケースサイドパネルには二つの大きな吸気口。取り外しての掃除が可能ダストフィルターが付属。フロントファンからの吸気と合わせてPCケース内のパーツの熱を外部へと排出する。
ケース内部。マザーボードにはASUS製Intel H170 Expressチップセットを搭載するH170-PROを採用。最新の第6世代Intel CoreプロセッサSkylakeに対応したチップセットで、次世代メモリ規格DDR4にも対応している。ストレージラックは5段用意されておりシステム用SSDとストレージ用HDDを設置。いずれもSATA 6Gbpsで接続されている。
PCケース背面。USB 3.0×2、USB 3.0×2、USB TYPE C×1、PS/2×2、LANポート×1、オーディオ入出力ジャック×3 そしてグラフィックカードに搭載されたDual Link DVI-I、Dual Link DVI-D、Mini HDMIが搭載。ディスプレイケーブルはこちらに接続する。
PC前面にはケースに搭載されたオーディオ入出力ジャックとUSB2.0ポートx2。ドライブベイにはUSB3.0ポートx1とデジタルカメラで使用する主要メモリーカードに対応したUSB3.0カードリーダーが組み込まれている。
光ディスクドライブにはブルーレイディスクドライブ (BD書込み対応)を採用。

コストを抑えつつも快適なRAW現像が可能

さてこのようにスペックを再検討することで必要十分なパフォーマンスを得られるように組み上げたPCを使って、実際にRAW現像を行いその実力を検証してみよう。

まずは前回組み上げたマスターズモデル同様、実際に撮影したRAWデータを現像してそれにかかる時間を計測する。

使用するデータはデジタル一眼レフカメラのなかでも現在もっとも解像度の高いキヤノンEOS 5D Sで撮影されたRAWデータ500枚。これをまずは今回組み上げたPCとマスターズモデルPCそれぞれのシステムドライブであるSSDにコピー。その後Lightroom CCで読み込み、一括書き出しでJPEGへと現像をおこなった。

前回と同じく、Lightroom CCでの現像ベンチマークを敢行。その結果は?

Lightroom CCでEOS 5DsのRAW500枚をJPEG現像

eX.computer PA9J-C64/T (前回作ったマスターズモデル) 32分
eX.computer PA7J-B64/T(今回作ったプレミアムモデル)35分

おっと、この結果には正直びっくりした。Lightroom CCでのRAW現像にかかる時間が、前回組み立てたマスターズモデルとほぼ同等となってしまったからだ。これはちょっと予想以上の速さである。

そして実際の運用時を想定して大量の画像からのセレクト作業を行ったところ、Lightroom CCライブラリモジュールでは画像コマ間の切り替えも素早く行われ、さらに画像を等倍表示する際の待ち時間もごく僅かであることが判った。これなら「少し撮りすぎたかな」と思う量のRAW画像であってもストレスなくスムーズなセレクト作業を行うことができる。マスターズモデルからは極力パフォーマンスを下げずに、でも効果的なコストダウンが出来るようにとあれこれと構成を練った成果だ。

RAW現像ベンチマークの結果は……これは速いぞ!

もちろんこの結果はLightroom CCのみを動かしての計測値であるので、Lightroom CCと同時にPhotoshop CCを使用するなど複数のアプリケーションでの同時処理を行った場合はPCへの負担も増える。マスターズモデルはプロの使用を想定し、1分1秒を大事にすることを目標としているが、本モデルであっても十分な効果をもたらせてくれるだろう。

プレミアムモデルも(ほんとに)発売決定!

このようにパフォーマンスとコストのバランスを重視して組み上げたPCだが、蓋を開けてみると想像していた以上のハイパフォーマンスPCとして組み上がってしまった。我ながらなかなかの上出来だと自画自賛してしまうほどだ。もちろん前回同様、「eX.computerのなかの人」のアドバイスがあってのものである。

そこでこのPCを「eX.computerのなかの人」に販売価格を試算していただいた。その結果、前回のマスターズモデルに続きこのプレミアムモデルも14万9,800円(税別)にて販売が決定したのである!!eX.computerさん今回もありがとう!でもこれ、かなりなお得PCですよね。本当にこの価格で売っちゃっても大丈夫なんですか??(笑)

さてこのように、思うがまま高スペックを詰め込んだマスターズモデルPCと、高いスペックとコストパフォーマンスのバランスを重視したプレミアムモデルPCの2モデルの発売が決まった。

しかし、このプロジェクトを進めるにあたり、忘れてはいけないのがエントリークラスのPCを作ること。思い出して欲しいのだがこのサイトはデジカメ Watch。つまりこの記事を読んでいる方は間違いなくカメラ好きの人達である。したがってPC以外にも欲しいカメラやレンズがいっぱいあるに違いない。だが趣味に回せる総資金は限られているのが実情というものだ。

という訳で次回は「出来るだけPCにかけるお金は抑えたい。でもデジカメ画像の取り扱いは快適なPCじゃないとイヤダ!」という、ある意味究極のワガママさんに最適なPC構成を考える。ただし単なる低価格のロースペックPCにはしませんよ。デジカメユーザーのためのエントリーPCを組み上げちゃいます。さあ次回もご期待あれ!!

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy