特別企画

3枚玉の魅力――「トリプレットレンズ」とは何か?

 “3”を意味する接頭語「トリ」という名前からわかるように、トリプレットとは3枚構成のレンズのことを指す。H.D・テーラーが1893年に開発した3枚のガラスを使ったレンズが、トリプレットタイプの始まりである。

さまざまなトリプレットレンズの例

 テーラーが開発した初期のものには、各レンズの間隔をほとんど等間隔に配置したもの、後群を少し後ろへずらして間隔をひろげたものなど、いくつかのタイプが挙げられる。単純な構成ながら、収差を補正するための自由度の高さから、レンズコーティングやコンピューターによるシミュレーションがない時代にあっては画期的なレンズ構成だったようだ。

 ただし、トリプレットタイプは、中心部はシャープに写るのだが、周辺部の歪みが補正できず、また縦方向、横方向のピントがずれたように写る非点収差も残るため、周辺部が流れたようになり、ボケが汚いとされる欠点もある。

Continaで撮影

 テッサー、ゾナー、ヘリアーなどは改良型トリプレットとも言われ、より良好に収差を補正するレンズがこの先開発されていくこととなる。トリプレットも、絞り込んでなるべくレンズ中心部を使うようにするか、画角を狭くすることで、欠点をめだたなくすることはできるのだが……。

 ±30度の画角、もしくはそれ以下の画角にして、F値を抑えた設計が開発当初からなされていることをみると、当時の設計者も大変な苦労をされたのだと感じることができる。

Ikontaで撮影

 トリオター、ノバー、ランサー、レオマーなど、廉価な中判及び35mmカメラに多数搭載されたトリプレットタイプ。戦前から戦後1960年代後半に製造された多くのカメラでそれらのレンズを見ることができる。

 開放F値は明るくF2.8になり45mm前後の焦点距離(35mm判換算)を持つものも多く、先に述べた収差の関係上最良の性能での撮影が難しいレンズも多数ある。ただ、トリプレットでの撮影でなにを楽しむのか?

Retinette IIBで撮影

 ひとくくりにトリプレットといっても当然ながら描写は異なる。中心部から少しぼやけたようにねむいもの、隅々までシャープなように見間違うものまでさまざまだ。中心部と周辺部の明らかな描写の違い、つまり「収差」を顕著に楽しみながら撮影できる数少ないレンズなのではないだろうか。

本稿を執筆した種清豊氏のほか、平林達也氏と酒井梨恵氏が参加する「トリプレットの会」が、写真展「The view of three point's」を開催している。

  • 会場:ポートレートギャラリー(日本写真会館5階)
  • 住所:東京都新宿区四谷1-7
  • 会期:2014年6月26日木曜日〜2014年7月2日水曜日
  • 時間:10時〜18時(最終日は14時まで)
  • 休館:会期中無休
  • 入場:無料

(種清豊)