オリンパス・ペンのAF高速化ファームウェアを試す

Reported by 本誌:折本幸治

テストに使ったE-PL1(左)とE-P1(右)

 オリンパスは22日、E-P2、E-P1、E-PL1のそれぞれについて、最新ファームウェアを公開した。主な更新内容は次の通り。

  • AF速度の向上(E-P2、E-P1、E-PL1)
  • 動画撮影時のC-AF改善(E-P2、E-P1)
  • 電子ビューファインダーVF-2装着時の機能追加(E-P2、E-P1、E-PL1)
  • アートフィルター「ラフモノクローム」使用時におけるVF-2の表示不具合が改善(E-P2)

 このうち目玉は、AF速度の向上だろう。

 E-P1の発売時(2009年7月)、「AF速度が遅い」との評価が巷に広がった。先行して発売されたパナソニックLUMIX DMC-G1のAFが高速だったことを踏まえての評価であり、その点だけをもったいなく感じているE-P1ユーザーも多いと思う。

 その後オリンパスは、2009年9月にファームウェアVer.1.1を公開。C-AF撮影時の動作を改善するもので、オリンパス製レンズのM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8とM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6についても、AF動作を目的としたファームウェアを公開するなど、過去にもAFに関するアップデートを行なっている。

 ここでは、ファームウェアアップデートの前後で、どのくらいAF速度が向上したか見てみたい。

新ソフト「デジタルカメラアップデーター」が活躍

 今回のファームウェアは本体のみ。また今回からE-P2とE-P1については、アップデートを行なうソフトとして、従来の「OLYMPUS Master 2」以外に、今春からの新ソフト「デジタルカメラアップデーター」が選べるようになった。E-PL1は「デジタルカメラアップデーター」のみ利用できる。デジタルカメラアップデーターは、2004年以降にオリンパスが発売したデジタルカメラに対応。Windows XP/Vista/7、Mac OS X 10.3〜10.6で使用できる。

 デジタルカメラアップデーターが現れた背景としては、今春からオリンパスの添付ソフトが、「OLUMPUS Master 2」から「[ib]」に代わったためと見られる。オリンパスの場合、カメラおよび交換レンズのファームウェアは、前者または「OLYMPUS Studio 2」からアップデートするのが一般的だった。しかし今春から付属する[ib]には、アップデート機能がない。そのあたりを埋めるのが、デジタルカメラアップデーターの役割だろう。

デジタルカメラアップデーターの画面例
カメラをUSBストレージクラスで接続すると、アップデート可能なファームウェアが選択可能になる
アップデート中の表示。基本的には従来の「OLYMPUS Master 2」などと同様の流れになる

 交換レンズのファームウェアアップデートも、デジタルカメラアップデーターから行なえる。現在、オリパスのM.ZUIKO DIGITALのうち、ファームウェアを更新できるのは、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8とM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6の2製品。ともにVer.1.1をオリンパスが2009年9月に公開している。

 なお、E-PL1に付属する標準ズームレンズ、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L(末尾に“L”がつく樹脂マウントタイプ。E-PL1のレンズキット用)は現在Ver.1.0が最新バージョンとなっている。ファームウェアの内容としては、末尾LなしのVer.1.1とほぼ同じと見てよいだろう。


E-P1+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8のファームウェアはVer.1.1。その状態でE-P1ボディのファームウェアをVer.1.0からVer.1.4に変更してみた。

  • サムネイルをクリックすると、別ウィンドウで動画を再生します。
E-P1(Ver.1.0)+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

E-P1(Ver.1.4)+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

 この条件だと、体感的にはほぼ変化がない。わずかにフォーカス移動距離に違いが感じられる。


E-P1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L

 今度はE-P1にM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 Lを装着して検証した。末尾に“L”がつく14-42mm F3.5-5.6とE-P1を組み合わせたレンズキットは存在しないが、参考までに掲載してみた。最新バージョンはVer.1.0。

E-P1(Ver.1.0)+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L

E-P1(Ver.1.4)+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L

 これははっきりとした違いが見られた。アップデート後の方がコンパクトなフォーカス移動となり、合焦までが高速だ。焦点距離は35mm近辺。


E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

 次は、E-PL1とM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8の組み合わせで検証。

E-PL1(Ver.1.0)+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

E-PL1(Ver.1.1)+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

 Ver.1.1の方が俊敏で若干高速に見える。ただしこの条件では、体感的にはほぼ同じに感じられた。


E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6

 E-PL1でM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 Lを試した例。E-P1と同様、はっきりと高速化が体感できた。

E-PL1(Ver.1.0)+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L(Ver.1.0)

E-PL1(Ver.1.1)+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L(Ver.1.0)

 E-P1での検証と同様、アップデート後の方が高速。新ファームウェアによる効果は高い。

 


 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8でのはっきりとした違いはあまり感じられなかったものの、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 Lでははっきりとした差が現れた。今回は屋内で近接距離という条件だったが、ほかの環境ではまた違った結果になるかもしれない。

 マイクロフォーサーズ機が採用するコントラストAFは、測距精度は高いものの、測距速度で不利な方式だ。しかし、レンズ側の進化やアルゴリズムの洗練により、高速化の余地はまだあるのかも知れない。

 パナソニックも5月10日にオリンパス製レンズのAF高速化ファームウェアを公開するとのことなので、今後もマイクロフォーサーズ製品の動向に注目していきたい。




本誌:折本幸治

2010/4/23 00:00