神保町写真教室の教科書「写真総合」by 岡嶋和幸先生

雨天(撮影基礎:光)

一歩進んだ“自分らしい”“伝わる”写真表現が学べる「インプレス・フォトスクール 神保町写真教室」。その分かりやすく実践的な講座内容に定評のある岡嶋和幸さんが12回にわたって本誌Web特別講座を連載。写真撮影の基本となるピント、露出、色、レンズ、光、構図、そして実践的な撮影方法の中からトピックを厳選してお届けします。(編集部)

水で潤った風景は鮮やかさが際立つ

雨上がりの風景など水を含んでしっとりとしている状態では、晴れているときとは違った深みのある鮮やかさで表情豊かに見えます。仕上がり設定のモードを変更しなくても、草木の緑など自然な鮮やかさが得られます。

濡れた景色は立体的で表情豊か

乾いた路面は平面的で味気ない感じがしますが、雨が降って濡れただけで空など周りの様子が映り込んで立体感や奥行き感が出ます。雨が上がった直後など、路面が乾きだして中途半端な濡れ具合になる前に撮影するといいでしょう。

水滴がレンズ効果で光を集める

雨の日は水滴がレンズのような働きをして周りの光を集めます。天候はくもりでもそれにより立体的な表現になって、コントラストや彩度もやや高めの傾向です。透明感を意識しながら少し明るめに仕上げるといいでしょう。

水が反射や色乗りの良さを生んで印象を変える

雨で濡れた景色はしっとりとしていて、情緒的な雰囲気の写真になります。水が光を集めたり反射したりして、同じ場所でも晴れの日やくもりの日とは違った表情を見せてくれます。

例えば舗装された道路は乾いていると平面的なグレーで味気ない感じです。でも、雨で濡れるだけでそこにたくさん光が集まって、その様子を生かすことで表情豊かに見せることができます。

道路にできた水たまりは鏡のようになって空など周りの様子を映し込みます。しっとりした感じになるだけでなく、立体感や奥行き感のある写真に仕上がります。

雨で濡れた景色は水がレンズのように光を集めるため、コントラストや彩度が高めになります。例えば水分を含んだ草木の緑や水滴が付着した赤い車などは、晴れた日とは違った深みのある鮮やかさが印象的です。

雨の日ならではの表現が可能になるので、小雨のときなど、よほど風雨が強くない限り積極的に撮影に出かけたいものです。

とはいえ、雨が降っているときはカメラやレンズが濡れるのが心配です。カメラとレンズのどちらも防塵・防滴構造であれば濡れても故障の心配はありませんが、レンズの前玉に水滴が付着してしまうと写りに影響します。

風のある日は要注意です。小雨程度で風がなければ、カメラやレンズが防塵・防滴構造でなくても傘を差して撮影することは可能でしょう。その場合は撮影後のメンテナンスが大切です。

狙い目は雨が降り止んだ直後です。雨が止んでからしばらく時間が経ってしまうと路面などが次第に乾いてきます。小雨になったときなど早めのタイミングから行動を開始するといいでしょう。

カメラやレンズの雨対策

傘を差して撮影を行うときは、視界を確保するために透明のビニール傘が最適です。カメラとレンズの両方が防塵・防滴構造であればレインウェアを着用して撮影するのもいいでしょう。

とはいえ、カメラやレンズに付着した水滴はこまめに拭いた方が良いです。レンズについては、撥水加工が施されたレンズフィルターの装着が効果的です。ブロアーで吹けば、前玉に付着した水滴を簡単に飛ばすことができます。

写真撮影の総合教科書『写真総合』を発売!

カメラの基礎から実践、作品制作、展示までを網羅的にまとめた写真撮影に関する総合教科書『写真総合』を発売。その一部を本連載で紹介しています。「インプレス・フォトスクール 神保町写真教室」の公式テキストしても採用予定です。ぜひご期待ください。(編集部)

仕様
『写真総合』岡嶋和幸 著
2017年9月15日発売/定価:本体3,680円+税
B5変型判/320ページ

内容
第1章 カメラ基礎/第2章 撮影基礎/第3章 撮影実践/第4章 写真制作/第5章 写真表現/第6章 プレゼンテーション/写真関連用語集

図版制作●村上総、吉光さおり(Kamigraph Design)
イラスト●今道千里

岡嶋和幸