新製品レビュー
パナソニックLUMIX GX8(外観・機能編)
強靭さを身に付けた本格ミラーレス
Reported by 大浦タケシ(2015/8/17 08:00)
2008年に発表されたマイクロフォーサーズシステム規格。ミラーレスという新たなジャンルを創成し、今日多くの写真愛好家から支持されている。その初号モデル「LUMIX DMC-G1」を世に送り出したのがパナソニックである。現在、同社のマイクロフォーサーズのラインナップは、その名誉あるGシリーズをはじめGH、GX、GM、GFと大きく5つのシリーズにセグメントされる。
今回ピックアップした「LUMIX DMC-GX8」(以下GX8)はGXシリーズの最新モデルで、位置付け的にトップエンドであるGHシリーズの「LUMIX DMC-GH4」に次ぐものだ。本レビューではその外観および機能の詳細をお伝えする。
本稿執筆時点での量販店店頭価格は、ボディ単体が税込15万4,980円前後、「G VARIO 14-140mmF3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」の付属するレンズキットが同じく税込19万4,400円前後となっている。
ホールディング性が向上。好印象のダイヤル配置
まずボディは、先代「LUMIX DMC-GX7」(以下GX7)より一回り大きく重く立派になった。具体的にはGX7が122.6×70.7×54.6mm・402g(バッテリー、メモリーカード含む)であるのに対し、GX8は133.2×77.9×63.1mm・487g(同)。
好みの分かれるところであるが、グリップがしっかりとホールドできる形状となり、より手応えある大きさ重さによってカメラを安定して構えることができる。さらにシャッターボタンの位置も、それまでのトップカバーからグリップ上へと変更になり、これまで以上に素直に右手人さし指の指先が置けるように思える。
操作部材に目を向けると、特徴的なのがトップカバーの2段ダイヤルと、その右隣りの後ダイヤルだ。前者はひよきわ大きい露出補正ダイヤルの上にモードダイヤルが乗っかったもので、これまでの同社マイクロフォーサーズ機では見られなかったスタイルである。
露出補正ダイヤルは、カメラを構えた状態では右手の親指と人さし指の二本でつまむようにして操作するが、トップカバー右端にあるものにくらべ、操作しやすく感じられる。ダイヤルが大きくなると通常なら間の抜けたような見た目になりやすいのだが、その上に小振りなモードダイヤルを重ねているため、さほど気にならない。
一方、後者はモードダイヤルと同じぐらいの大きさだが、高さがあるためか、なかなかの自己主張っぷり。こちらは右手親指のみによる操作だが、その印象は悪くはない。中央にはファンクションボタンを備えており、こちらも操作しやすく感じられる。
機能アップしたEVF。背面モニターはバリアングルに
EVFは従来と同じチルト式を採用。上方向に90度可動する。パネルは236万ドットの0.5型有機ELとし、表示コントラストが高く、応答速度が速いのも特徴である。
GX8で目新しい部分としては、ファインダー倍率が0.77倍と0.7倍に切り換えられることだろう。ネイチャーやポートレートの場合では倍率の高い0.77倍で、風景では画面全体を引いて見られる0.7倍というような使い分けができそうである。
なお、このEVFと前述のダイヤル類をトップカバーに配置したためか、内蔵ストロボは省略されている。ファミリースナップなどで日中シンクロを多用することの多いユーザーは、不満に感じるかも知れない。
液晶モニターは従来と同じ3型104万ドットとする。タッチパネル式なのも同様だ。GX8では新たにバリアングルタイプを採用しており、上下チルト式だったこれまでと異なり、縦位置でのハイ&ローアングル撮影にも対応する。
手ブレ補正が強力に進化
GX8の注目のひとつが手ブレ補正機構「Dual I.S.」の搭載だろう。カメラ側に搭載した手ブレ補正機構と、レンズ側の手ブレ補正機構との合わせ技で6方向の補正を可能とする。
カメラ側で大きい上下左右の角度ブレ(PitchとYawの2軸)と同じくシフト(並進)ブレ(xとyの2軸)を補正し、レンズ側で細かな上下左右の角度ブレ(PitchとYawの2軸)を補正するわけだが、無限遠からマクロ撮影までこれまで以上に強力に手ブレを抑えることができる。
また、当然のことながら手ブレ補正機構を内蔵してないレンズでも、GX8に搭載された手ブレ補正機構は有効。同社製の単焦点レンズのほかオールドレンズにも対応するので、“レンズグルメ”もGX8は注目しておきたい。
空間認識AF、3モードの4Kフォト機能がGXにも
高速化されたパワフルなAFもGX8の特徴だ。フォーカスエリアと重なった部分に迷いなく速やかに合焦する。これまでの同社ミラーレスのAFレスポンスも決して悪いものではなかったが、それを大きく上回る。
この速さを実現できたのは「空間認識AF」と銘打った技術によって一気にピント位置を移動後、コントラストAFで微調整を行うためであるという。位相差方式のAFは被写体との距離を認識しながらピントを合わせるが、機構的に空間認識AFもそれに準じたものとするので、いわゆるハイブリッドAFと同等のものと考えて差し支えないだろう。23点から49点へと増したフォーカスエリアや-4EV(ISO100換算)での測距を可能とするなど、AFから見ても最強のスナップカメラになりそうに思える。
イメージセンサーと映像エンジンも新しい。新開発の有効2,030万画素Live MOSセンサーを搭載し、より低ノイズを実現。高速な画像処理を行う新ヴィーナスエンジンにより8コマ/秒の連続撮影も楽しめる。コマ速の速いカメラは、シャッターのキレがよいものが多いが、本モデルも例外ではない。
さらに同社ならではといえるのが「4Kフォト」モードの搭載だ。4K動画機能で撮影した秒間30コマ連写のなかから決定的瞬間を抜き出すもので、動体撮影などでは重宝することが多い。筆者もこれまで幾度か4Kフォトで撮影する機会を得ているが、シャッターチャンスを見逃さないばかかりか、撮影時には気付かなかった思いも寄らぬ瞬間なども捉えることができ、この機能に一目置いている。
4Kフォトモードには、シャッターボタンを押している状態のときだけ4Kフォトで記録する「4K連写」、シャッターボタンを押すと4Kフォトでの記録を開始し、再度押すと終了する「4K連写(S/S)」、写真を撮る感覚でシャッターを押して離すと、押した瞬間の前後1秒ずつを記録する「4Kプリ連写」を用意している。
シャッターチャンスを見逃さないといえば、起動の速さもピックアップすべきだろう。カタログ値によると、電源をONにして撮影可能な状態になるまで0.5秒。同社デジタルカメラの伝統的ともいえるレバータイプの電源スイッチをONにすると、ほぼ同時に撮影体勢に入れるといっても過言ではない。より高速化されたAFや30コマ連写の4Kフォトなどとともに、シャッターチャンスを見逃すようなことはもうないはずだ。
マイクロフォーサーズに今後ますます期待
本モデルのキーワードは「ストリートフォト一眼」。たしかにそのスペックやルックスから、街を颯爽と歩き、人知れず速やかにシャッターを切るスナップシューターによく似合うカメラのように思える。
防塵防滴構造の採用も目新しい部分。同構造に対応するレンズが「LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S.」「LUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 POWER O.I.S.」の2本に限られているのはいささか寂しいが、スナップ撮影に限らず、ネイチャーや風景撮影などを楽しむユーザーにもありがたく感じられることだろう。
パナソニックLUMIX GX8は、充実した機能を満載し、完成度が格段に高まったマイクロフォーサーズ機である。同社のミラーレスはというと、盟友であるオリンパスと機能・人気とも比較されることが多いが、ますます伯仲するものになったといえる。当然ライバルはオリンパスのフラッグシップであるOM-D E-M1と目されるが、どちらも今後が楽しみである。