新製品レビュー

キヤノンEOS M3(実写編)

新開発2,420万画素センサーの実力をチェック

キヤノン「EOS M3」は、APS-Cサイズの有効2,420万画素センサーを搭載したミラーレスカメラだ。既存モデル「EOS M」と「EOS M2」からターゲットユーザーを少し上にシフトし、初級者だけでなく、趣味として写真を楽しむ中級者が使っても納得できる高機能を詰め込んでいる。

外観上の見どころは、EOS Mシリーズでは初となるチルト可動式の液晶モニターを採用したこと。ボディには、これまでは外付けだったストロボを内蔵し、グリップの大型化やダイヤルの追加、オプションのEVF対応なども図っている。画質面では、リニューアルされたセンサーとエンジンが生み出す精細な表現力に注目だ。

前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。

標準ズームで遠景描写を検証する

まずは遠景の描写を見るために、レンズキット付属の標準ズーム「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」を使って明るい屋外シーンを撮影した。絞り値を変えながら複数のカットを撮影したが、ここでは最も高解像が得られた中間絞りの写真を掲載する。

ズームの18mm側は、開放値ではややソフトな描写だが、絞り込むほどにシャープネスが高まり、F5.6〜8あたりでピークとなる。55mm側については開放値からくっきりとした写りだ。そして、すべての焦点距離でF11以上に絞り込むと、回折の影響でシャープ感が低下する。

焦点距離18mm(F5.6)
焦点距離55mm(F8)

発色の調整機能であるピクチャースタイルは、ここでは「スタンダード」を選択した。不自然さを感じない程度に彩度とコントラストがバランスよく強調されるモードだ。初期設定の「オート」の状態では、シーンによってはさらに高彩度に仕上がる場合がある。

ISO感度別の画質をチェックする

撮像素子にはAPS-Cサイズ相当の有効2,420万画素CMOSセンサーを、画像処理エンジンには「DIGIC 6」をそれぞれ搭載する。感度はISO100〜12800を1/3ステップで選択でき、拡張設定としてISO25600が用意される。

以下は、感度を変えながら撮影したJPEGデータだ。高感度ノイズ低減は、初期設定である「標準」を選択した。被写体は造花だ。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600

光が当たっている手前の花の部分は、さほどノイズは気にならないが、影になった葉っぱの部分を見るとISO3200を超えるあたりからざらつきが目立ちはじめる。解像感の低下は少なめ。結構優秀なノイズ低減処理といっていい。

5種類の仕上がりが選べるHDRモード

新機能としてHDR(ハイダイナミックレンジ)を搭載した。1回のシャッターで明るさが異なる3枚の写真を同時記録し、それを自動合成することで広階調の写真を作り出す機能だ。クリエイティブフィルターの1つとして選択でき、記録ファイル形式はJPEGのみとなる。

既存モデルのEOS MやEOS M2では、ほぼ同じ機能を「HDR逆光補正」という名称で搭載していたが、EOS M3の「HDR」機能では合成時の仕上がり効果を5種類から選べることが新しい。

以下は、仕上がり効果を変えながら電灯と人形を撮影したもの。

効果なし
ナチュラル
絵画調標準
グラフィック調
油彩調
ビンテージ調

なお既存モデルでは、付属ソフト「Digital Photo Professional」を使うことで、EOS M3のHDR機能と同じように5種類の効果を選ぶことは以前から可能だった。EOS M3の付属ソフト「Digital Photo Professional 4」には今のところHDR機能はない。

フルHD動画モードで撮影する

動画は、これまでのMOV形式からMP4形式に変更された。同社では、MP4は再生互換性に優れ、スマホやSNSとの相性がいいと述べている。最大サイズは1,920×1,080のフルHD記録で、フレームレートは30p(1,280×720では60p)となる。

動画の露出制御は、フルオートまたはマニュアルが選べる。撮影中のピント追従や手ブレ補正の使用、カメラ内での簡易編集などにも対応。プラスムービーオート機能を選択し、静止画と動画を同時記録することも可能だ。

以下は、通常の動画モードでオート撮影したもの。クリアな色合いとシャープな写りが得られた。


EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM / ISOオート / 自動露出 / 記録時間18.8秒

作品集

液晶モニターのチルト可動を生かし、ローポジション&ローアングルで撮影。背景を青空だけにして単純化したうえで、赤い花をL字型に配置して、花の色とかたちをいっそう引き立たせている。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F8 / 1/400秒 / -0.7EV / 18mm

新搭載した2軸水準器を使って水平を保ちつつ、人影がバランスのいい位置にきたタイミングで撮影。ホワイトバランスは日陰を選択して、日差しの赤みを強調した。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F6.3 / 1/500秒 / ±0EV / 50mm

外部ストロボを使って、温室の花をハイスピードシンクロで撮影。絞りを絞り込みつつ、シャッター速度を速くすることで背景を暗く落とし、植物の造形を際立たせた。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F16 / 1/2,000秒 / ±0EV / 27mm

逆光によって輝く犬の毛並みとシルエットを狙った。こうした逆光条件や光量が乏しいシーンでは、AFが迷ってなかなかピントが合わない。被写体の動きを予測し、前もって狙った位置にフォーカスロックしておく、といった工夫が欠かせない。

EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM / ISO250 / F5.6 / 1/800秒 / ±0EV / 151mm

ランの花の一部分を切り取る感覚で接写した。EF-Mレンズには、今のところ専用のマクロレンズがないことが個人的にはもの足りなく感じる。キット付属の標準ズームが結構寄れることがせめてもの救いになっている。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO160 / F16 / 1/200秒 / ±0EV / 55mm

直射すると強い影が生じるため、自分が着ている白い服に外部ストロボの発光部を向け、光質をソフトにして撮影した。一方で、発色の調整機能であるピクチャースタイルはコントラストを+2に設定し、強めのメリハリ感を与えている。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO200 / F16 / 1/160秒 / ±0EV / 32mm

室内に展示された等身大の人形をクローズアップで撮影。薄暗いシーンのためシャッター速度はかなり低速になったが、オプションのEVFを使うことでしっかりとカメラを支えることができた。

EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM / ISO1600 / F6.3 / 1/25秒 / ±0EV / 175mm

外部ストロボ光を背後から当てて、スイセンの花びらを透き通るような色で表現した。「EOS Kiss X7i」や「EOS Kiss X8i」とは違って、内蔵ストロボに外部ストロボのワイヤレス制御機能がない点は少々残念だ。澄んだ色合と滑らかな階調性は気に入った。

EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F16 / 1/800秒 / ±0EV / 55mm

サブ扱いはもったいない高解像とクリアな色

今回の実写では、遠景のディテールをくっきりと描く解像感の高さと、彩度とコントラストをほどよく強調した見栄えのいい発色を確認できた。ノイズを目立たないよう低減した高感度性能も良好だ。画質に関する不満は少なく、新センサーと新エンジンが生み出すEOS M3の描写力には好印象を受けた。

もの足りない点はやはりレンズだ。EOS Mシリーズ専用となるEF-Mレンズのラインアップは、今回使った標準ズームと望遠ズームのほかに、単焦点レンズと広角ズームの計4製品。マウントアダプター経由で多彩なEFレンズとEF-Sレンズが使えることは大きな魅力だが、それにしても専用EF-Mレンズの種類は少ない。

使い勝手に関しては、前回のレビューで述べたようにAFスピードや撮影直後のレスポンスに課題がある。一方で、持ち運びに優れた小型ボディとホールドしやすいグリップ、構図のバリエーションを広げるチルト液晶、オプションのEVF対応は気に入った。

EOS M3は、これまで以上の自由度と高解像で、風景やスナップ撮影が楽しめるミラーレスカメラだ。すでにEFレンズやEF-Sレンズを所有しているユーザーが2台目や3台目として選ぶカメラにもちょうどいい。そのうえでメインカメラには一眼レフを使って欲しい、そんなキヤノンのメッセージが感じられる、サブに適した1台だ。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。