新製品レビュー
ソニーQX1
「レンズ交換式レンズスタイルカメラ」の使い勝手は?
桃井一至(2014/11/18 08:00)
ガジェットファンを中心に話題となったソニーQXシリーズに、またもや話題となる製品「QX1」が登場した。発売は10月10日。実勢価格は3万8,330円前後。
2013年秋、1/2.3型センサーに10倍ズームを搭載した「QX10」と1型センサーにカールツァイス28-100mm相当レンズを搭載した「QX100」の2機種が登場。異色の筒型ボディをスマートフォン(スマホ)から操作する、“レンズスタイルカメラ”という新ジャンルの登場で色めき立ったのは記憶に新しいが、今回紹介するのはそれらの最高峰QX1だ。
QX1は、レンズスタイルの基本形状はそのままに、約2,010万画素のAPS-Cサイズセンサーを搭載。さらにソニーEマウントのレンズ交換式というから驚きだ。
実はQX100と同10の登場時、担当者に冗談で「この勢いでAPSセンサーやフルサイズセンサーを搭載して出してよ!」と、なんとも無責任な発言をしていたのだが、まさか本当に出てくるとは思わなかった。
もちろん、気持ち的には出して欲しいのだが、正直なところ、奇抜なだけの製品では台数は見込めず、最初だけ盛り上がって下火になるのが通例。その半面、こんな奇抜な製品を出してくるのは、カメラメーカーの中でもソニーくらいしか期待できず、これまでのエポックメーキングな製品ブランドがあってこそ、受け入れられる基盤が整っているといえる。
そんな期待半分・冗談半分のそれがまさに現実となったわけだ。
もちろんQX登場から1年間の間にユーザーの意見を集約。たとえばQX10ユーザーから多かった、レスポンスや画質、レンズに対する要望については、高倍率モデル「QX30」を追加したり、アプリの見直しを図ったとのことだ。
カメラの基幹部はα5000と同等
QX1のカメラの基幹部は同社のミラーレスカメラ「α5000」と同等。センサーサイズはコンパクトデジタルカメラでポピュラーな1/2.3型と比べて、約13倍もの面積になるAPS-Cサイズ。約2,010万画素のExmor CMOSセンサーに、画像処理エンジンはBIONZ Xを採用する。
基本的な使い方としては、スマートフォンに専用アプリ「PlayMemoriesMobile」(無料)を予めダウンロード。簡易接続可能なNFC対応スマホであれば、QX1側面のNFCマークとスマホ側のマークを合わせるだけで、起動とペアリングが開始。さほど待つこともなく、スマホにライブビュー画面が現れる。iPhoneはWi-Fi接続を手動で行う必要がある。
シャッター操作はスマホのライブビュー画面にて行う。
AF測距点の選択は自動選択だが、ライブビュー上の任意部分を押せばタッチAFが可能。またロックオンAFにも対応している。ただしタッチAF中は他の設定操作を受け付けず、露出補正すらできない仕様だ。
画像データはカメラ本体のmicroSDカード、もしくはメモリースティックマイクロに記録。基本設定では撮影直後に確認用で200万画素程度の軽量データもスマホ側に送りつつ、記録カードにオリジナルデータが保存される。
メニュー内容も本機の性格に合わせて簡略化され、設定項目も見てもらえばわかるように至ってシンプルなもの。スイングパノラマなどお楽しみ機能も割愛されている。
スマホアプリはアップデートが容易なため、今後どのような展開をしていくのかも楽しみだ。
あえてスマホを使わずに撮影してみた
必要最小限の機能を搭載するが、使い方はユーザー次第。
小さな本体に交換レンズの自由度も増して、QXシリーズとして表現の幅は広がったものの、いかんせんWi-Fiでの一拍遅れる画像表示やシャッターレスポンスなど、一般的なデジタルカメラを知るものとしては不自由さが先にくる。動体撮影どころか、スナップで通過する人のタイミングを合わせるのですら至難の業だ。
そこで筆者の場合、割りきってスマホを捨てた。そう。構図の確認はしない!
画像確認をしなくても、本体横のシャッターボタンを押せば、撮影可能。これならば普通のカメラとほぼ同様のレスポンスで撮影を楽しめる。デフォルトではONのレビュー画像転送もなくなり、なにより構図確認がないぶん、スピーディだ(笑)。
このときのレンズは望遠では構図やピントに不安が残るので選択肢から外し、ズームレンズも画角の見当をつけにくく、あまり適切でない。特にキットレンズの「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」は外観から焦点距離がわからず、パワーズーム用レバーの誤操作も多くて扱いづらい。
そこで、ここぞとばかりに単焦点のワイド系レンズ、「E 16mm F2.8」を多用した。これなら薄くコンパクトでかさばらず、画角の見当もつけやすい。さらに被写界深度も深く、ピンぼけのリスク軽減にもなる。
余談ながら、その昔、フィルムカメラの広角レンズはアクセサリーシューなどに専用の外付け光学式ファインダーを装着して、おおまかな構図を確認。それで当時のベテランたちは、経験と勘も駆使して撮り続けてきた。まさにそれをデジタルで楽しもうというわけだ。
思いの外おもしろいノーファインダー撮影
当然、厳密な構図構成は難しく、筒状の本機の場合、その形状から水平を合わせるのも困難。あえて言うなら底面の三脚穴周辺が平らだが、そもそもホールディングに優れた形状でなく、諦めるほうが精神衛生上良い。
また基本的に測距点は自動選択のため、遠近混在の光景では手前の被写体にピントが合うのがネックだが、いちいち細かいことを考えても仕方なく、中景から遠景で偶発的な構図や、写る内容などの面白さに賭けて、ギャンブルのごとく楽しむのが正解。もちろん几帳面な人は正統派のスマホ経由での操作がいいだろう。
前述のとおり、ワンテンポ操作が遅れるのさえ我慢できれば、タッチパネルタイプのサイバーショットで日常的に撮影するのと、さほど変わらず扱える。
また本体の軽さを活かして、アクションカメラふうにおもしろいアングルを探して固定するのも簡単。数メートル程度のリモート撮影で、フルHD動画を撮るのもいいだろう。
とにかく、QX1は既存のカメラの尺度で価値を決めてはダメ。興味が湧いて購入に迷ったら、酒の勢いを借りてでもホットな精神状態のまま買うこと。――理詰めの冷静な判断ではまず買わない(笑)。
撮って楽しいのは間違いなく、使ったものでないとわからない楽しさを秘めた製品だ。先に使った人から、不便の先にある楽しさがきっと見えてくるはずだ。
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- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。