新製品レビュー
FUJIFILM X100T(実写編)
心地よい色合いのクラシッククローム
澤村徹(2014/11/6 07:00)
富士フイルムのX100TはAPS-Cサイズ有効1,630万画素のX-Trans CMOS IIセンサーを搭載し、画像エンジンはEXR Processor IIを採用している。レンズは単焦点のフジノン23mm F2(35mm判換算約35mm相当)だ。これらは従来機のFUJIFILM X100Sと同様で、画質面で大きな相違はない。ローパスレスと点像復元技術による高解像な写真が撮れる。
解像力
遠くの木々を絞りを変えながら撮影し、解像力をチェックしてみた。開放ではいくぶん軟らかい描写だが、一段絞るごとに鋭さが増す。ローパスレスモデルだけあって、申し分のないシャープさだ。また、点像復元技術が功を奏し、F8以降でも回折現象によるシャープネスの低下があまり見られない。過度に絞り込んでもシャープな描写だ。開放近辺では若干周辺減光を感じるが、F4~F5.6あたりで隅々まで明るい描写になる。
高感度撮影
X100TはISO200~6400が標準出力感度で、ISO100/12800/25600/51200が拡張モードとして用意されている。ここではISO200~6400をテストしてみた。ISO200~3200はほぼノイズを感じることなく、ISO6400で若干ノイジーな印象を受ける程度だ。
本機のISOオートは最大感度がISO6400になっているが、このノイズレスな画質なら意図せず高感度になってしまったとしても、画質面で不満を感じることはないだろう。ISOオートで開放寄りにしておけば、暗所撮影も難なくこなしてくれるはずだ。
近接撮影
最短撮影距離は標準時で50cm、マクロモードでは10cmまで寄れる。開放F2と明るいレンズを搭載しているだけあって、近接で開放撮影すると大きなボケを稼げる。前ボケ、後ボケともに滑らかで、うっとりするようなボケ味だ。大きなAPS-Cイメージセンサーの採用もプラスに働いている。なお、マクロモードは10cmから2mまでなので、遠景撮影する際は標準モードに戻さなくてはならない。
フィルムシミュレーション
X100Tは新たなフィルムシミュレーションが加わった。これはクラシッククロームと名付けられ、往年のリバーサルフィルムをシミュレーションしたものだ。褪せた色合いが特徴で、シックな雰囲気が魅力である。
このクラシッククロームの追加により、X100Tはカラー、モノクロを合わせ、合計11種類のフィルムシミュレーションを搭載することになった。これまで以上の柔軟な表現を楽しめるだろう。
まとめ
デジタルカメラにとって、画質や操作性はむろん重要なことだ。そしてそれと同等以上に、撮影自体を楽しめることも大切である。富士フイルムX100Tは、その撮影の楽しさと真剣に向き合った稀有なカメラだ。光学ファインダーがAF、MFを問わず使えるようになり、常時快適な視野で撮影できる。光学ファインダーの抜けのよい画面は、ファインダーの見え方にこだわりを持つ人はもちろん、ライブビューしか知らない層にとっても新鮮な体験となるだろう。X100Tは写真を撮ること自体が楽しくなるカメラだ。
一方、クラシッククロームの追加もX100Tの魅力を下支えしている。X100Tのトラディッショナルな外観、クラシッククロームの懐古調の描写。両者はどこか通底したものがあり、「このカメラからこの絵が出てくる」という部分に一貫性が感じられる。使い勝手の向上した光学ファインダーも含め、クラシックテイストを存分に満喫できるカメラである。