新製品レビュー
カシオEXILIM EX-100
F2.8固定の高倍率ズームを搭載したハイスペックEXILIM
Reported by 北村智史(2014/3/19 12:00)
昨年11月発売のEX-10と並んでEXILIMシリーズのツートップに位置づけられるハイパフォーマンスモデル。撮像素子には1/1.7型の裏面照射型CMOSセンサー、レンズは35mm判換算28-300mm相当、全域F2.8の明るさを持つ光学10.7倍ズームを搭載する。2つの要素を変化させる2軸ブラケットの「プレミアムブラケティング」や、レンズ基部にファンクションリングを備えた操作系などが特徴だ。EX-10同様、4枚羽根の自動開閉キャップが付属する。
発売は3月20日。本稿執筆時点での実勢価格は8万9,800円前後。EX-10の発売当初よりも1万円高い。
より明るいズームのEX-10と、高倍率ズームのEX-100
外観は既発売のEX-10と共通で、ボディの前後カバーはマグネシウム合金、トップパネルには2mm厚のアルミ合金を採用。EX-10は濃紺のサテン触感塗装だったのが、本機はブラックのレザートーン塗装で仕上げられている。上面もブラックのヘアライン仕上げだ。右手側前面の指がかりには滑り止め加工が施されたパーツが取り付けられていて、安定したホールディングが可能だ。
重さはバッテリーとメモリーカード込みで389g。EX-10より5g増えている。パナソニックのミラーレスカメラ「LUMIX DMC-GM1」(24-64mm相当F3.5-5.6のキットレンズ込みで274g)あたりと比べると、かなり覚悟のいる重さだといえる。が、レンズのスペックを考えると、逆にこれぐらい重いほうが、安定感があっていいのもたしかで、使っていて苦になるようなことはなかった。
撮像素子は1/1.7型裏面照射型CMOSセンサーで、有効画素数は1,210万画素。画像処理エンジンは、EX-10と同じ「EXILIMエンジンHS Ver.3 ADVANCE」。ISO感度の設定範囲はISO80からISO12800までとなっている。
搭載レンズは35mm判換算28-300mm相当、全域F2.8の明るさを持つ。EX-10のF1.8-2.4にはおよばないものの、望遠端の焦点距離が3倍近いことを考えれば十分に誇れるスペックだ。レンズシフト式の手ブレ補正機構を内蔵していて、CIPA基準の補正効果は望遠端で約2.5段。実写では、スペック以上の粘り強さが感じられ、望遠端で1/20秒程度の低速シャッターを切ってもまずまずの結果が得られた。
最短撮影距離は広角端がレンズ前10cm、望遠端が50cm。スーパーマクロモードに切り替えると、焦点距離は42mm相当固定となり、レンズ前5cmまで寄れる。最小撮影範囲は、スーパーマクロ時でおよそ60×45mm、望遠端でもおよそ80×60mmというクローズアップ撮影が楽しめる。マクロ好きにはうれしいスペックだ。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I規格対応)のほか、48.9MBの内蔵メモリーを搭載している。JPEGの「高精細-F」でのファイルサイズは平均で約4.5MBだった。また、RAW形式(DNG)での撮影も可能だ。
電源は容量1,800mAhのリチウムイオン充電池「NP-130A」。CIPA基準の撮影可能枚数は約390枚。液晶モニターの輝度を下げるなどして節電する「エコモード」設定時は約465枚に伸びる。普通に使っている分には予備のバッテリーは用意しなくてもよさそうだ。
細かな機能向上が嬉しい
個人的にうれしかったのは、フォーカスエリアの任意選択が可能になったところ。REC MENUの「AFエリア」で「マルチ」を選んだときに、EX-10では9点の自動選択になるだけだったが、本機では25点(5×5)から1点ないし9点自動選択が選べるようになった。
フォーカスエリアの選択は、十字キーを兼ねたコントロールダイヤルの左右キーで設定画面に移行。上下左右キーで移動というオーソドックスなもの。1点測距と9点測距の切り替えはズームレバーで行なう。
手持ち撮影なら中央1点でフォーカスロック後にフレーミング調整という手順でもいいのだが、フレーミングを先に決めて撮りたいときには、測距点が自由に選べたほうが便利がいい。特に望遠域、マクロ域での撮影ではありがたい機能だ。
もうひとつ。新機能の「EXファインダー」もおもしろい。EXファインダーは、3.5型という大きな液晶モニターの画面を活用した表示手法で、映像表示を少し小さめにして(定規ではかったところ、約60×45mm=3.0型相当の大きさだった)、外周部に最大4つのインジケーター表示を行なうもの。上側がファンクションリング、左側がコントロールダイヤルのホイール部、右側がコントロールダイヤルの上下キー、下側が左右キーとなる。
それぞれの機能は、背面の「RING」ボタン押しで表示される設定画面や、REC MENUの「キーカスタマイズ」で、好みなどに合わせて設定を変更できる。筆者個人は、リングに「ステップズーム」、ホイールに「EVシフト(露出補正)」、上下キーに「ISO感度」という設定が使いやすいと感じた(「AFエリア」を「マルチ」にすると、左右キーはフォーカスエリアの設定画面に固定される)。
また、2軸ブラケットが可能な「プレミアムブラケット」機能も強化された。新しく追加されたのは1軸ブラケットの「ISO 2(絞り・シャッタースピード固定)」と、2軸の「ホワイトバランス×彩度」「ホワイトバランス×コントラスト」の3種類。
「ISO 1(明るさ固定)」は、感度の増減に対して絞りやシャッタースピードを変えて露出レベルを維持するのに対し、「ISO 2」は絞りやシャッタースピードを固定するので露出レベルが変化する。EX-10に搭載されていたのは前者で、後者は一眼カメラのISO感度ブラケットと同じ挙動になる。
各種ギミックと気軽さが楽しい1台
コンパクトカメラとしては大きくて重いが、一眼レフやミラーレス一眼ならそれなりにかさばってしまう高倍率ズームを、全域F2.8にして、それでこの大きさと重さなら納得できる。レンズ性能も上々だし、望遠端でも寄れるので花などを撮るのにも使いやすい。高感度の画質も悪くない。前面シャッターボタンだったり、液晶モニターの裏に自立スタンドが隠されていたりといったギミックもおもしろいし、スマートフォンやタブレット端末と連携できるWi-Fi機能、ハイスピードムービーや高速連写も備えている。気軽に気楽に高倍率ズームを楽しみたい方にはおすすめできる1台だ。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
画角変化
光学ズームは28-300mm相当の10.7倍で、超解像ズーム併用で21.4倍まで(600mm相当)まで、さらにデジタルズーム併用時は42.8倍(1,200mm相当)の超望遠撮影が可能となる。超解像ズーム時は画質劣化は比較的少ないので、あまり大きくプリントしないのであればそれなりに常用できるだろう。
感度
ベース感度のISO80からISO400までは、ピクセル等倍で見ても不満を感じない画質。ISO800から空の部分などにノイズが目立つようになり、ディテール再現も徐々につぶれはじめる。ISO3200でも、ディテールはわりと残っているので、小サイズのプリントなら使えそうな印象だ。