新製品レビュー

カシオEXILIM EX-100

F2.8固定の高倍率ズームを搭載したハイスペックEXILIM

 昨年11月発売のEX-10と並んでEXILIMシリーズのツートップに位置づけられるハイパフォーマンスモデル。撮像素子には1/1.7型の裏面照射型CMOSセンサー、レンズは35mm判換算28-300mm相当、全域F2.8の明るさを持つ光学10.7倍ズームを搭載する。2つの要素を変化させる2軸ブラケットの「プレミアムブラケティング」や、レンズ基部にファンクションリングを備えた操作系などが特徴だ。EX-10同様、4枚羽根の自動開閉キャップが付属する。

 発売は3月20日。本稿執筆時点での実勢価格は8万9,800円前後。EX-10の発売当初よりも1万円高い。

より明るいズームのEX-10と、高倍率ズームのEX-100

 外観は既発売のEX-10と共通で、ボディの前後カバーはマグネシウム合金、トップパネルには2mm厚のアルミ合金を採用。EX-10は濃紺のサテン触感塗装だったのが、本機はブラックのレザートーン塗装で仕上げられている。上面もブラックのヘアライン仕上げだ。右手側前面の指がかりには滑り止め加工が施されたパーツが取り付けられていて、安定したホールディングが可能だ。

 重さはバッテリーとメモリーカード込みで389g。EX-10より5g増えている。パナソニックのミラーレスカメラ「LUMIX DMC-GM1」(24-64mm相当F3.5-5.6のキットレンズ込みで274g)あたりと比べると、かなり覚悟のいる重さだといえる。が、レンズのスペックを考えると、逆にこれぐらい重いほうが、安定感があっていいのもたしかで、使っていて苦になるようなことはなかった。

レンズ基部にファンクションリングを備えているのはEX-10と同じ。
ファンクションリングの機能は、背面の「RING」ボタンで切り替えられる。
選択肢は「ステップズーム」「EVシフト(露出補正)」「ISO感度」「ホワイトバランス」「マニュアルフォーカス」「メイクアップレベル」。
前面の指がかりは滑り止めの加工が施されたタイプ。レンズとのあいだに「フロントシャッター」ボタンがある。
「フロントシャッター」の機能設定画面。個人的には「2秒シャッター」がけっこう便利だと思う。

 撮像素子は1/1.7型裏面照射型CMOSセンサーで、有効画素数は1,210万画素。画像処理エンジンは、EX-10と同じ「EXILIMエンジンHS Ver.3 ADVANCE」。ISO感度の設定範囲はISO80からISO12800までとなっている。

ISO感度の設定範囲は、ISO80からISO12800まで。ISO80以外は1段刻みでの設定となる。常用、拡張の区別はない。
ISO感度をオートにしているときの、上限感度を設定できる。案外にありがたい機能。

 搭載レンズは35mm判換算28-300mm相当、全域F2.8の明るさを持つ。EX-10のF1.8-2.4にはおよばないものの、望遠端の焦点距離が3倍近いことを考えれば十分に誇れるスペックだ。レンズシフト式の手ブレ補正機構を内蔵していて、CIPA基準の補正効果は望遠端で約2.5段。実写では、スペック以上の粘り強さが感じられ、望遠端で1/20秒程度の低速シャッターを切ってもまずまずの結果が得られた。

 最短撮影距離は広角端がレンズ前10cm、望遠端が50cm。スーパーマクロモードに切り替えると、焦点距離は42mm相当固定となり、レンズ前5cmまで寄れる。最小撮影範囲は、スーパーマクロ時でおよそ60×45mm、望遠端でもおよそ80×60mmというクローズアップ撮影が楽しめる。マクロ好きにはうれしいスペックだ。

搭載レンズは28-300mm相当の光学10.7倍ズーム。全域F2.8の明るさは、オリンパスの「STYLUS 1」と同じスペックだ。
前玉径が大きいのでレンズバリアは内蔵していない。その代わりに、4枚羽根の自動開閉キャップが付属している。
手ブレ補正機構はレンズシフト式で、CIPA基準の補正能力は約2.5段分。「強」に切り替えるとシャッタースピードを速めにして、被写体ブレも防ぎやすい動作となる。
最短撮影距離は、焦点距離が42mm相当のときにもっとも短く、レンズ前5cmまで寄れる。ズーム操作時に撮影可能距離範囲も表示されるのが便利。
シャッタースピード3段分の減光効果を持つNDフィルターを内蔵。明るい場所でも絞りを開いて撮れる。
コントロールダイヤル中央の「SET」ボタン押しで表示される「表示パネル」はカシオならではのもの。上下キーで項目を選んで「SET」ボタン押しで設定を変更する画面に移行する。
これはホワイトバランスの設定画面。項目の選択操作は上下キーだけでなく、ホイールの回転でも可能だ。
EVシフトの設定範囲は±2段まで。個人的には±3段まであるとうれしいのだけれど。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I規格対応)のほか、48.9MBの内蔵メモリーを搭載している。JPEGの「高精細-F」でのファイルサイズは平均で約4.5MBだった。また、RAW形式(DNG)での撮影も可能だ。

 電源は容量1,800mAhのリチウムイオン充電池「NP-130A」。CIPA基準の撮影可能枚数は約390枚。液晶モニターの輝度を下げるなどして節電する「エコモード」設定時は約465枚に伸びる。普通に使っている分には予備のバッテリーは用意しなくてもよさそうだ。

電源のリチウムイオン電池NP-130Aは容量1,800mAh。CIPA基準で約390枚の撮影が可能だ。記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカードと48.9MBの内蔵メモリー。
上面右手側の操作部。高級機らしく、P/A/S/Mなどのモードも完備する。
液晶モニターは3.5型、92.16万ドット。上向き180度、下向き55度の範囲で向きを変えられるチルト式。自分撮りなどに便利な自立スタンドを内蔵している。

細かな機能向上が嬉しい

 個人的にうれしかったのは、フォーカスエリアの任意選択が可能になったところ。REC MENUの「AFエリア」で「マルチ」を選んだときに、EX-10では9点の自動選択になるだけだったが、本機では25点(5×5)から1点ないし9点自動選択が選べるようになった。

REC MENU(撮影メニュー)の「AFエリア」で「マルチ」を選ぶと、フォーカスエリアの任意選択が可能になった。
選択可能なフォーカスエリアは全部で25点。この状態だと9点の自動選択AFとなる。端に行くと6点に、四隅では4点になる。
こちらは1点のみのAFの状態。フレーミングを決めてからピントを合わせたいときには便利だ。

 フォーカスエリアの選択は、十字キーを兼ねたコントロールダイヤルの左右キーで設定画面に移行。上下左右キーで移動というオーソドックスなもの。1点測距と9点測距の切り替えはズームレバーで行なう。

 手持ち撮影なら中央1点でフォーカスロック後にフレーミング調整という手順でもいいのだが、フレーミングを先に決めて撮りたいときには、測距点が自由に選べたほうが便利がいい。特に望遠域、マクロ域での撮影ではありがたい機能だ。

 もうひとつ。新機能の「EXファインダー」もおもしろい。EXファインダーは、3.5型という大きな液晶モニターの画面を活用した表示手法で、映像表示を少し小さめにして(定規ではかったところ、約60×45mm=3.0型相当の大きさだった)、外周部に最大4つのインジケーター表示を行なうもの。上側がファンクションリング、左側がコントロールダイヤルのホイール部、右側がコントロールダイヤルの上下キー、下側が左右キーとなる。

新機能の「EXファインダー」は、REC MENU内でオンオフを切り替える。
「EXファインダー」の画面。画面外周部にファンクションリングやコントロールダイヤルのホイール部、十字キーの機能が分かりやすく表示される。

 それぞれの機能は、背面の「RING」ボタン押しで表示される設定画面や、REC MENUの「キーカスタマイズ」で、好みなどに合わせて設定を変更できる。筆者個人は、リングに「ステップズーム」、ホイールに「EVシフト(露出補正)」、上下キーに「ISO感度」という設定が使いやすいと感じた(「AFエリア」を「マルチ」にすると、左右キーはフォーカスエリアの設定画面に固定される)。

どこにどの機能を割り当てるかはREC MENUの「キーカスタマイズ」で設定する。ただし、「AFエリア」を「マルチ」にしているときは、「左右キー」は「AFエリア位置」で固定される。
「ダイヤル(ホイール部)」に割り当てられる項目。すでにほかで割当済みの機能はグレー文字表示となって選択できなくなる。
「上下キー」に割り当てられる項目。「AFエリア」が「マルチ」以外のときに「左右キー」に割り当てられる項目もこれと同じだ。

 また、2軸ブラケットが可能な「プレミアムブラケット」機能も強化された。新しく追加されたのは1軸ブラケットの「ISO 2(絞り・シャッタースピード固定)」と、2軸の「ホワイトバランス×彩度」「ホワイトバランス×コントラスト」の3種類。

「ISO 1(明るさ固定)」は、感度の増減に対して絞りやシャッタースピードを変えて露出レベルを維持するのに対し、「ISO 2」は絞りやシャッタースピードを固定するので露出レベルが変化する。EX-10に搭載されていたのは前者で、後者は一眼カメラのISO感度ブラケットと同じ挙動になる。

「プレミアムブラケティング」の選択画面。2ページ目には「コントラスト」「フォーカス×絞り」「ホワイトバランス×明るさ」「ホワイトバランス×彩度」「ホワイトバランス×コントラスト」「コントラスト×彩度」「彩度×明るさ」「コントラスト×明るさ」がある。
2軸ブラケットの「コントラスト×彩度」で撮った画像を再生している状態。少しずつ写りの違う9枚が一覧できるのがおもしろい。
「撮影レビュー(ポストビュー)」の表示方法は4種類。「タイプ1」は全画面に画像が表示されるスタンダードなもの。
「タイプ2」は画面右下に小さくポストビューが表示される。「タイプ3」は、このサムネイルがぴょんっと跳ね上がってくる。
こちらは「タイプ4」。撮った画像のサムネイルが、ライブビュー映像を囲むように並んでいく。
再生時の画面。「DISP(上キー)」を押すと情報表示をすべて消すこともできる。
新しく追加された表示モード。前後の計7コマのサムネイルが画面下部に表示される。
インデックス表示は、「4画像」「25画像」「100画像」の3種類。

各種ギミックと気軽さが楽しい1台

 コンパクトカメラとしては大きくて重いが、一眼レフやミラーレス一眼ならそれなりにかさばってしまう高倍率ズームを、全域F2.8にして、それでこの大きさと重さなら納得できる。レンズ性能も上々だし、望遠端でも寄れるので花などを撮るのにも使いやすい。高感度の画質も悪くない。前面シャッターボタンだったり、液晶モニターの裏に自立スタンドが隠されていたりといったギミックもおもしろいし、スマートフォンやタブレット端末と連携できるWi-Fi機能、ハイスピードムービーや高速連写も備えている。気軽に気楽に高倍率ズームを楽しみたい方にはおすすめできる1台だ。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

画角変化

 光学ズームは28-300mm相当の10.7倍で、超解像ズーム併用で21.4倍まで(600mm相当)まで、さらにデジタルズーム併用時は42.8倍(1,200mm相当)の超望遠撮影が可能となる。超解像ズーム時は画質劣化は比較的少ないので、あまり大きくプリントしないのであればそれなりに常用できるだろう。

28mm相当
35mm相当
50mm相当
75mm相当
100mm相当
135mm相当
200mm相当
300mm相当
超解像ズーム併用(600mm相当)
デジタルズーム併用(1,200mm相当)

感度

 ベース感度のISO80からISO400までは、ピクセル等倍で見ても不満を感じない画質。ISO800から空の部分などにノイズが目立つようになり、ディテール再現も徐々につぶれはじめる。ISO3200でも、ディテールはわりと残っているので、小サイズのプリントなら使えそうな印象だ。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

アートショット

通常撮影(Pモード)
HDRアート:エクストラ1
トイカメラ:タイプ3
ソフトフォーカス:レベル2
ライトトーン:イエロー
ポップ:レベル2
セピア:レベル2
モノクロ:レベル3
ミニチュア:位置6
フィッシュアイ:レベル1
トゥインクルショット:タイプ2
宙玉:タイプ1

プレミアムブラケティング

オート:ホワイトバランス×明るさ

ホワイトバランス:寒色寄り、明るさ:+0.7EV
ホワイトバランス:中庸、明るさ:+0.7EV
ホワイトバランス:暖色寄り、明るさ:+0.7EV
ホワイトバランス:寒色寄り、明るさ:0.0EV
ホワイトバランス:中庸、明るさ:0.0EV
ホワイトバランス:暖色寄り、明るさ:0.0EV
ホワイトバランス:寒色寄り、明るさ:-0.7EV
ホワイトバランス:中庸、明るさ:-0.7EV
ホワイトバランス:暖色寄り、明るさ:-0.7EV

マニュアル:ホワイトバランス×彩度

ホワイトバランス-2.0、彩度+2.0
ホワイトバランス0.0、彩度+2.0
ホワイトバランス+2.0、彩度+2.0
ホワイトバランス-2.0、彩度0.0
ホワイトバランス0.0、彩度0.0
ホワイトバランス+2.0、彩度0.0
ホワイトバランス-2.0、彩度-2.0
ホワイトバランス0.0、彩度-2.0
ホワイトバランス+2.0、彩度-2.0

ホワイトバランス×コントラスト

ホワイトバランス-2.0、コントラスト+2.0
ホワイトバランス0.0、コントラスト+2.0
ホワイトバランス+2.0、コントラスト+2.0
ホワイトバランス-2.0、コントラスト0.0
ホワイトバランス0.0、コントラスト0.0
ホワイトバランス+2.0、コントラスト0.0
ホワイトバランス-2.0、コントラスト-2.0
ホワイトバランス0.0、コントラスト-2.0
ホワイトバランス+2.0、コントラスト-2.0

作例

バイクのマフラーを200mm相当で。ガラス越しなので少し写り込みがあるのと、解像力もちょっと落ちてるはず。ISO80 / F4 / 1/400秒 / 42.5mm(200mm相当)
赤信号で停車中の市電を歩道橋の上からねらってみた。ISO80 / F4 / 1/640秒 / 14.5mm(68mm相当)
300mm相当といっても実焦点距離が短いので、ボケはあまり大きくならない。が、コンパクトカメラとしてはよくボケてくれるほうだ。ISO80 / F4 / 1/125秒 / 64.2mm(300mm相当)
時計台を撮っていると、3回に1回は「すいません。シャッター押してくださぁい」と頼まれるのである。仕事中なんですけどね。ISO80 / F4 / 1/800秒 / 10.8mm(50mm相当)
時計台の中。窓から入る光のおかげでベンチの木目がきれいに浮かび上がっていた。ISO80 / F3.2 / 1/100秒 / 35mm(165mm相当)
時計台の仕組みを説明するための時計(ちょっとややこしい)。いかにもな年代物感がいい。ISO400ぐらいまでなら安心して使える。ISO400 / F3.2 / 1/80秒 / 21.2mm(100mm相当)
赤れんが庁舎を望遠端で。3月になると晴れる日も多くなるものの、こんな雪に見舞われることもある。この圧縮効果も望遠の醍醐味。ISO80 / F4 / 1/640秒 / 64.2mm(300mm相当)
望遠端で1/20秒。微妙にブレているが、慎重に撮ればこれぐらいはなんとかいけそうな感じ。ISO800 / F2.8 / 1/20秒 / 64.2mm(300mm相当)
窓から強い外光が入るような条件だと、こんなふうにハレーションが出やすい。ISO400 / F2.8 / 1/20秒 / 6mm(28mm相当)
この画像ではあまり目立たないが、広角端のタル型の歪曲収差はそれなりにある。建築物とかを撮る際には気になる場合がある。ISO80 / F4 / 1/160秒 / 6mm(28mm相当)
今回はほとんどをPモードで撮影したが、絞りF4になっているカットが多かった。ISO80 / F4 / 1/800秒 / 10.8mm(50mm相当)
望遠端の最短撮影距離付近。ここまで寄ると背景がだいぶボケてくれる。クセのないタイプなので使いやすいと思う。ISO80 / F4 / 1/1,000秒 / 64.2mm(300mm相当)

動画

 撮影中のズーミングが可能。あまり動きが速くない被写体ならピントも追従してくれる。1,920×1,080 / H.264 / 約63MB(サムネイルをクリックすると元ファイルをダウンロードします)。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら