【新製品レビュー】ソニーNEX-5
ソニーのレンズ交換式ミラーレス機「“α” NEX」の上位モデル。下位モデルのNEX-3よりもさらに絞り込んだデザインのボディに、AVCHD形式のフルHD動画機能を搭載している。前カバーにはマグネシウム合金が採用されており、この点と動画のスペックの違いがNEX-3と異なる点だ。
カラーバリエーションはブラックとシルバー。NEX-3同様、レンズ付きキットのみでの販売で、大手量販店の店頭価格は、E 18-55mm F3.5-5.6 OSS付きキットが8万4,800円、E 16mm F2.8付きキットが7万9,800円、2本のレンズが同梱されたダブルレンズキットは9万4,800円。NEX-3よりもおよそ1万5,000円高い設定となっている。
■ほかのカメラにないユニークな外観
マウント部の外径とボディの高さがほぼ同じNEX-3に対して、本機はさらに高さを抑えたフォルムを採用。間違いなく好みは分かれるだろうが、ボディからレンズをはみ出させようと考えたデザイナーの勇気はかなりのものだと思う。
NEX-3がプラスティック外装であるのに対して、本機は前カバーのみだがマグネシウム合金を採用している(このパーツは単なるカバーではなくて、撮像素子ユニットなどを支える役割も持っている)。ボディ剛性の面ではNEX-3よりも上だと考えてよく、特に重量級のαレンズを使いたいと考えているユーザーには本機のほうが有利といえる。
バッテリー室の配置も異なっており、NEX-3はボディと平行方向、本機は垂直方向となっている。その分、グリップの幅が狭くなっているので指を回り込ませてホールドできる。手の大きな筆者の場合、くすり指と小指がボディの下側のくぼみにちょうど入り込むこともあって、思いのほか持ちやすく感じた。
反面、三脚の雲台と接する面がとても狭いので、三脚撮影時の安定感については少々難ありといわざるをえない。カメラネジの位置が固定されているもの(雲台面に丸い穴が開いているだけのタイプ)はまだしも、カメラネジの位置が変えられるもの(ネジが移動できるように溝状の穴が開いているタイプ)の場合、カメラと雲台が接する面がさらに狭くなる。そのせいで、撮影中にカメラに触った拍子に滑って回ってしまうことがあった。どちらかといえば、三脚に載せたくないカメラだとは思うが、ちょっと気になった点ではある。
それ以外の部分は基本的にNEX-3とほぼ同じ。撮像素子は有効1,420万画素のCMOSセンサーExmor。画像処理エンジンはBIONZ。液晶モニターは3型のワイドタイプ、解像度は92.16万ドット。可動範囲は上向き80度、下向き45度となっている。記録メディアがシングルスロットでSDカードとメモリースティックデュオの2種類に対応しているのも共通だ。センサーシフト方式の手ブレ補正機構は備えていない。
なお、基本的な操作、メニューの内容もNEX-3とほぼ同じである。
バッテリーはNEX-3と同じリチウムイオン電池のNP-FW50。容量は1,080mAh。CIPA基準で330コマの撮影が可能となっている | 底面の三脚ネジ穴部分。雲台と接触する面がかなり狭いので、きちんとネジを締めたつもりでもくるんと回ってしまう可能性がある |
有効1420万画素のCMOSセンサーExmor。ローパスフィルターを振動させるゴミ取り機能は電源オフ時にのみ作動する仕様だ | 3型ワイドのエクストラファイン液晶モニターユニットはかなり薄型。これで左右方向にも動くともっとうれしいんですけど |
シングルスロットでSDカードとメモリースティックデュオの2メディアに対応するのもNEX-3と同じ | 十字キーを兼ねたコントロールホイールと3つのソフトキーによる操作系も同じだが、ボディの幅が6.4mm狭い分、ちょっと窮屈な感じ |
標準ズームのE 18-55mm F3.5-5.6 OSS装着状態。決して大きなレンズではないが、ボディが小さい分ごつく見えてしまう | パンケーキタイプのE 16mm F2.8。前面に魚眼と超広角のコンバージョンレンズが装着できるようバヨネット爪がある |
■AVCHD動画記録が可能
さて、NEX-3との機能面での違いは、動画だけといえる。NEX-3は動画記録方式がMP4で、記録画素数とフレームレートは1,280×720ピクセル、29.97fps。本機はAVCHDとMP4が選べて、AVCHD時には1,920×1,080ピクセル。センサー出力が29.97fpsで、59.94i記録となっている。MP4時は1,440×1,080ピクセルまたは640×480ピクセルで、29.97fps。1,280×720ピクセルのモードは搭載していない。
動画は専用の「MOVIE」ボタンでスタートとストップが可能だが、撮影モードはプログラムAEのみ。自由にできるのはホワイトバランスや露出補正くらいのようで、APS-Cサイズらしいボケを楽しみたいという人には物足りないかもしれない。
NEX-3のレビューでも書いたとおり、動画撮影時は画角が若干狭くなる。基本のアスペクト比が、静止画は3:2比率で、動画は16:9比率なので、上下が狭くなるのは当然だが、左右も狭くなってしまう(回転方向の電子手ブレ補正のためのマージンとしてキープしてあるのかもとか思っていたりするのだが、実際のところはわからない)。動画の撮影範囲を事前に把握するにはグリッドラインを表示しておけばいいが、カギ括弧状の細い十字線だけなので、あまり視認性はいいとはいえない。
動画撮影中にもAFは可能だし、MFでフォーカスリングを回してピントを移動させても、ほとんど作動音はしない。これはいいところ。ただし、内蔵マイクは風切り音対策はないので(メニューにも特に設定はない)、そのあたりを気にする方は外部マイクは必須アイテムだろう。
スナップ的に動画を楽しみたいのであれば、画質も音質も大きな不満は感じないだろうが、本格的に動画に取り組みたい人にとっては、マニュアル露出とマニュアル感度設定が使えないのはうれしくない。この秋に予定されているE 18-200mm F3.5-6.3 OSSの発売までに、対応してくれることを期待したい。
NEX-3ではシャッターボタンの外周にあった電源スイッチが独立している。右下の銀に赤丸のボタンが動画専用の「MOVIE」ボタン |
動画の記録方式はAVCHDとMP4の2種類。ここがNEX-3と違っているポイントだ | AVCHDは1,920×1,080ピクセルのみだが、MP4は1,440×1,080ピクセルと640×480ピクセルが選べる。1,280×720ピクセルも欲しかった |
「撮影アドバイス」は「00 撮影アドバイスについて」からはじまって「01 目次」……「80 安定した映像にするコツ」と行った具合に詳細まである | 「フレキシブルスポット」にすると「撮影アドバイス」は非表示になる(不要な人にはおすすめ)。これは測距点をめいっぱい端に寄せた状態 |
こちらはヒストグラムも表示した状態。動画の撮影範囲を示すラインがWebサイトの画像と違っているような気がする | 動画再生時の画面。ワイド画像をフル表示する設定にしておくと、3型液晶モニターいっぱいに表示する |
こちらはスイングパノラマの画像。全体表示だとかなりさびしい状態 | ホイールの中央ボタンを押すと、スクロール再生してくれる。これが結構楽しい |
「MFアシスト」をオンにしておいて、MFでフォーカスリングを回すと拡大表示になる。十字キーでスクロール、下ボタンで倍率切り替えが可能 | こちらは再生時の拡大表示(めいっぱい倍率を上げた状態)。倍率の変更はホイールを回すだけの簡単操作 |
■高い質感を望むなら“5”を
さて、3、5と来たら、つづきがあると考えるのが人情というもの。来るべきNEX-7やNEX-9(いずれも筆者の想像)は上級者向けのモデルになってくれるのではないかと期待したいし、そのころには交換レンズも少しは増えているだろう。
とまあ、妄想しはじめたらキリがない。現状、NEXは3と5の2モデルがあるわけだが、静止画中心で考えれば両者の差はないに等しい。動画スペックの違いのほかは、赤外線リモコンに対応しているかどうかくらいのもので、そのあたりを気にしないなら実売価格が1万5,000円ほど安いNEX-3のほうが魅力的だ。
が、手に持った感覚は、NEX-5の方がやっぱり上。グリップの形との相性もあるのだろうが、持ち心地は本機のほうが個人的には好きである。それに、前カバーだけではあっても金属素材ならではの剛性感、安心感もある。筆者個人としては、予算に問題がないなら本機を選ぶし、他人にもすすめるだろう。NEX-3よりもデザインのアグレッシブなところが面白いと思えるからだ。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
・ノイズ軽減機能
高速連写機能を利用したノイズ軽減機能は本機の特徴のひとつ。6コマ連写した画像を合成して低ノイズな写真に仕上げる「人物ブレ軽減」や「手持ち夜景」は、高感度と高画質が両立できるすごい機能だ。相応に動きの少ない被写体でないと対応は難しいが、ISO800で通常撮影を行なうのと同レベルのノイズの少なさで、2〜3段速いシャッターが切れるメリットは大きい。
「人物ブレ軽減」モードは感度がかなり高くなる設定。ホワイトバランスも選べるし、露出補正も可能だ | 一方の「手持ち夜景」は画質重視なのか感度は少し控えめとなる。シーンモードなのでオートホワイトバランスのみ、露出補正もできない |
iAUTO NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 55mm | 人物ブレ軽減 NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO6400 / WB:オート / 55mm |
手持ち夜景 NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO3200 / WB:オート / 55mm | ISO800(Aモード) NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/25秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 55mm |
・ダイナミックレンジ関連
NEX-3同様、「Dレンジオプティマイザー」と「オートHDR」機能を装備。今回はHDRの露出差をマニュアル設定して撮り比べたのも掲載する。最大幅の6.0EVにすると、さすがに不自然すぎる仕上がりになるが、普通なら黒つぶれしてしまう部分まで明るく出るのはすごい。
「Dレンジオプティマイザー」の設定画面。「オート」と「Lv 1」から「Lv 5」までの範囲で補正効果を選べる | 「オートHDR」の設定画面。撮影する3コマの露出の差を「オート」または「1.0EV」から「6.0EV」の範囲で設定できる |
通常撮影 NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 18mm | Dレンジオプティマイザー:オート NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 18mm |
オートHDR:オート NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 18mm |
・感度
ベース感度はISO200で、オートでは最高ISO1600、マニュアルではISO12800まで。昼間の撮影であれば、ISO3200でも十分常用できるだろう。空などのグラデーション部分の滑らかさを重視するならISO1600までのほうがいい結果が得られるかもしれない。
「高感度ノイズリダクション」の設定は「オート」または「弱」の2段階だが、両者の違いはそれほどない。ISO1600までなら「弱」のほうが若干きれいに見える気もするが、撮影条件によっても変わってきそうにも思える。
感度の設定範囲はオート時はISO200からISO1600まで。マニュアル設定時はISO12800まで。 | 高感度ノイズリダクションの設定 |
高感度ノイズリダクション:オート
ISO200 | ISO400 | ISO800 |
ISO1600 | ISO3200 | ISO6400 |
ISO12800 |
高感度ノイズリダクション:弱
ISO200 | ISO400 | ISO800 |
ISO1600 | ISO3200 | ISO6400 |
ISO12800 |
・動画
※共通設定:NEX-5 / 1,920×1,080 / AVCHDパソコンのモニターで見ると輪郭強調も発色も抑えめな感じだが、テレビの画面ではちょうどいい感じ。ちょっと風切り音が気になる |
MFでピンボケ状態からフォーカスリングを回してピントを合わせてみた。操作音は気にならないが、終了1秒前くらいに「チッ」と音が入る |
AFモードでパンニング(滑らかでないのはごめんなさい)。静止画とはAFの動作が違っていて、すうっとピントが合う |
・そのほか
横位置のワイドで横振りのパノラマ。きちんとつながっていないところさえ気にしなければ、間違いなく楽しめる機能だ NEX-5 / E 16mm F2.8 / 12,416×1,856 / 1/500秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO200 / WB:晴天 / 16mm |
MFでピントを最短撮影距離にセット。カメラを前後に動かしてピントを合わせて10コマくらい撮った中の1コマ NEX-5 / E 18-55mm F3.5-5.6 OSS / 4,592×3,056 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 55mm |
2010/6/16 00:00