【新製品レビュー】ペンタックスOptio I-10

マニアも唸る粋なスタイリングのコンパクトデジカメ
Reported by 中村文夫

 ペンタックスから送られてきた新製品案内の写真を見たとき、思わず片頬が弛んでしまった。ペンタプリズムを彷彿させる山形フォルム、その真下に撮影用レンズを配したデザイン。まさにペンタックスが1979年に発売したオート110そのものだったからだ。

ペンタックスオート110の最終バージョンであるオート110スーパー(右)とOptio I-10。オート110スーパーでセルフタイマーのLED表示があった位置にストロボ発光部、ファインダーアイピースの位置にスピーカーがレイアウトされている
フィルムカートリッジを装填する必要がないI-10はボディが薄いオート110スーパーはレンズ交換式。これに対しOpito I-10はズームレンズを内蔵
レンズを外したオート110スーパー(右)と電源をオフにしたI-10

 ここでオート110を知らない読者のために説明しておこう。このカメラは110フィルムを使う世界初&唯一のレンズ交換式一眼レフカメラで、35mm一眼レフをそのままぎゅっと縮めたようなデザインを採用。全部で6本の交換レンズのほかワインダーや専用ストロボ、クローズアップレンズなども用意。35mm一眼レフ顔負けのシステムカメラだった。

 今回紹介する製品の商品名はOptio I-10。数字の1をアルファベットのIに置き換え110に見せようとするところなど、もう完全に確信犯だ。またオート110を知らない若い世代でも、一眼レフをモチーフにしていることが一目瞭然。「レトロでカワイイ」印象を与えることに見事に成功している。

 発売は2月25日。価格はオープンプライス。実勢価格は2万8,000前後。カラーバリエーションは、パールホワイトとクラシックブラック。


特徴的なスタイリングに過不足ない機能

 実物を目の当たりにし、さらに驚いた。想像していたよりはるかに小さく、ボディサイズはオリジナルのオート110に肉薄。正直なところ、「デザインは似せたけど、所詮、デジカメ」と高をくくっていたが、ズームレバーの位置やペンタプリズム正面にあるストロボなど、オリジナルの部材レイアウトを巧みに利用。ここまでみごとにオート110のイメージを再現するとは、まさに脱帽である。

 
 撮像素子は、有効1,210万画素の1/2.3型CCDで、レンズは35mm換算で28〜140mmに相当する5倍ズーム。スペック的に突出した機能はなく、CCDシフト方式の手ブレ補正、1,280×720ピクセルのHD動画機能、ペットの顔認識やISO6400の高感度、デジタルフィルターやフレーム合成など、このクラスとして過不足ない機能を備えている。液晶モニターは2.7型ワイド。

 最近このクラスのカメラはドングリの背比べで、購入する側としても選ぶのに困るといった状況が続いている。そんな中、このカメラはデザインを前面に打ち出し差別化を図っている。そういう意味では、携帯電話や家電製品によく見られるスタイリッシュモデルに近いのかも知れない。

記録メディアとしてSDHC/SDメモリーカードを採用。Eye-Fiカードにも対応するバッテリーと充電池。撮影可能コマ数は約250コマ
メニューは従来のペンタックス機を踏襲したデザインボディ背面の操作部の数は少ないが、使用頻度の高い機能をグリーンボタンに割り当てることができる
ペット撮影モードでは、登録したペットの顔を検出できるようになった

 またこのような製品は、使いやすさよりデザインを優先するケースが多いが、Optio I-10の場合は、もともとカメラとしてデザインされた製品をベースにしているのでホールディング感も良好。デザインと使いやすさが調和したバランスの良い製品と言えるだろう。

 ここまでオート110に似ていると、光学ファインダーが欲しかったとか、レンズ交換ができればなどと言いたくなるが、実際にこのカメラを首からぶら下げて歩くと、野暮なことはもう言うまいという気持ちになる。とにかくこのカメラには、ディテールにこだわるコアなカメラファンをも黙らせる不思議な説得力がある。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

広角端
Optio I-10 / 約3.7MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
望遠端
Optio I-10 / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25.2mm

・高感度撮影

 ISO800までは、それほどノイズは気にならず十分実用の範囲。ISO1600になると暗部にノイズが目立ち出す。ISO3200以上では500万画素記録になると同時にノイズが増加。ISO6400だとかなり粗い画になる。

Optio I-10 / 約3.5MB / 4,000×3,000 / 1/4秒 / F3.5 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 5mmOptio I-10 / 約1.1MB / 2,592×1,944 / 1/13秒 / F3.9 / 0EV / ISO3200 / WB:オート / 6.4mm
Optio I-10 / 約1.1MB / 2,592×1,944 / 1/80秒 / F3.5 / 0EV / ISO6400 / WB:オート / 5mm

・シーンモード

夜景モード。露出が適正でイメージ通りの画が撮れた
Optio I-10 / 約3.7MB / 3,000×4,000 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 5mm
オートピクチャーモード。露出が適正でイメージ通りの画が撮れた
Optio I-10 / 約3.6MB / 4,000×3,000 / 1/40秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
花モード
Optio I-10 / 約3.5MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F5.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12.8mm

・アスペクト比

16:9で撮影
Optio I-10 / 約1.5MB / 4,000×2,256 / 1/400秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 5mm
16:9で撮影
Optio I-10 / 約1.6MB / 4,000×2,256 / 1/500秒 / F4.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18.3mm

・パノラマ

 3カットの画像を合成。近づいて来る水上バスにタイミングを合わせて撮影し、3隻が合成後の画面に収まるようにした。

・そのほか

夕陽を浴びた橋の欄干の色再現性がよい
Optio I-10 / 約3.8MB / 3,000×4,000 / 1/500秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 16mm
明暗差の激しい条件で撮影。ハイライトはややとびぎみだが、シャドー部のツブレは少ない
Optio I-10 / 約3.5MB / 3,000×4,000 / 1/800秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25.2mm
太陽が画面の中に入っているが、ゴーストやフレアによる画質の低下は、ほとんどない
Optio I-10 / 約3.1MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F7.8 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 5mm
デジタルフィルターのトゥインクル・ハートを利用
Optio I-10 / 約2.0MB / 4,000×3,000 / 4秒 / F5.7 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 227.3mm




中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。

2010/3/18 00:00