新製品レビュー

パナソニックLUMIX G8(外観・機能編)

ボディ内手ブレ補正機構も備えた一眼レフスタイルのミラーレスカメラ

装着レンズは、LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.

パナソニックLUMIX G8(DMC-G8)は、2015年6月発売のLUMIX G7の後継モデルで、レンズ光軸上に電子ビューファインダーを配置した一眼レフスタイルのミラーレスカメラだ。

レンズ側の手ブレ補正機構と連携して「Dual I.S.2」として動作するセンサーシフト式の手ブレ補正機構「B.I.S.」を新しく搭載。防塵・防滴性の獲得や縦位置グリップが用意されるなど、先代よりもワンランクアップした内容となっている。

ボディカラーはブラックのみ。原稿執筆時点での大手量販店の店頭価格は、ボディ単体が税込11万6,350円程度、G 12-60mm F3.5-5.6つきのレンズキットが税込14万5,190円程度となっている。

見やすくなったファインダー

直線的なデザインを採用した先代G7と、パッと見の印象はあまり替わらないが、ボディサイズは幅、高さ、奥行きともに3mm前後大きくなっていて、重さも95g増えている。これはフロントケース(とWebサイトには書かれているが、おおざっぱには前カバーだ)がマグネシウム合金製に変わったこと、防塵・防滴化したこと、ボディ内手ブレ補正機構の搭載などによる。

グリップの形状は握りやすいものだが、サイズ自体がコンパクトなため、小指があまる感は否めない。が、今回試用したキットレンズのG 12-60mm F3.5-5.6との組み合わせは軽快そのものだし、オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROのような重さのあるレンズを装着してみてもホールド性に不安を感じるようなことはなかった。

オーソドックスな形状のグリップでしっかり握れる。フロントケースがマグネシウム合金に変わり、剛性もアップしている。
キットレンズのG 12-60mm F3.5-5.6(フードつき)を装着したところ。
大きめ重めのオリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROを装着した状態。重量級の望遠ズームなどでなければバランス的には問題なさそうだ。

ただ、長さのある望遠レンズの場合は、別売のバッテリーグリップDMW-BGG1(実勢価格は税込3万6,300円程度)を装着したほうがバランスはいいかもしれない。

基本的な操作系もG7のものを踏襲している。上面右手側にはグリップ上部に2つの電子ダイヤル、モードダイヤルなど、左手側にドライブモードダイヤルがある。背面も含めて機能のカスタマイズが可能なFn(ファンクション)ボタンは6個あり、好みなどに合わせて自由に設定できる。カメラいじりが好きな人にはかなり楽しめるのではないかと思う。

上面右手側の操作部。グリップの前後に2つの電子ダイヤルを持つ。右手側に電源スイッチがあるのは個人的には好き。
上面左手側にはドライブモードダイヤルがある。4Kフォト、フォーカスセレクトなどが用意されている。
背面右手側の操作部。ボタン類は上面が平たくてストロークは浅め。素手での操作では気にならないが、手袋をした状態だとボタンの位置がわかりづらく感じた。
背面右手側上部にあるフォーカスモードレバーとAF/AE LOCKボタン。手が届きやすい位置にあるのはありがたい。
背面左手側はFn5ボタンのみ。ファインダーとモニターの切り替え操作などに利用する。

ファインダー(EVF)に236万ドットの有機ELパネルを採用している点はG7と同じだが、倍率が1.4倍から1.48倍に上がり、アイポイント長も17.5mmから20.0mmに伸びている。表示のタイムラグは短いし、背面モニターとの自動切り替えも十分に速いので、EVF特有のまどろっこしさはそれほど感じない。

液晶モニターは3.2型、104万ドット。横に開いて前後に回転するバリアングル式で、例によって静電容量方式のタッチパネルを内蔵する。パナソニック機では標準的な装備と言える。

記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。UHS-IIスピードクラス3に対応している。実写でのファイルサイズは、JPEG(Lサイズ、ファイン画質)で約6.85MB、RAWは約18.75MBだった。

内蔵ストロボをポップアップさせたところ。ガイドナンバーは9(ISO200・m)。撮影用としても、ワイヤレスストロボ用のコマンダーとしても活用できる。
左手側側面の端子カバーを開いたところ。撮影時に使用するマイクやリモート端子が、液晶モニターを開いたときに干渉しにくい場所にレイアウトされている。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。UHS-IIに対応している。4K動画などにはUHSスピードクラス3が求められる。

バッテリーは容量1,200mAhのリチウムイオン充電池DMW-BLC12(実勢価格は税込5,810円程度)。CIPA規格の撮影可能枚数は、液晶モニター撮影時で約330枚、ファインダー撮影時で約320枚となっている。省電力ファインダー撮影設定時には約800枚の撮影が可能という。付属の充電器はコンセント直差しタイプで、サイズも比較的コンパクト。空の状態からフル充電まで約140分かかる。

底面のバッテリー室。

ライバルに引けをとらないAFスピード

撮像センサーは4/3型で有効1,600万画素。数字的には少々物足りなさもあるが、LUMIX GX7 Mark II(2016年5月発売)につづいて、本機もローパスフィルターレス仕様を採用しており、キレのいい描写が楽しめる。

ゴミ取り効果の高さで定評のあるSSWFを備えている。
最大記録画素数は4,592×3,448ピクセル。設定時に撮影可能な枚数が表示されるのは便利。

画像処理を受け持つヴィーナスエンジンは、代が替わっても名称が変わらないのではっきりしたことはわからないが、Webサイトに「NEW」の表記はない。

ISO感度の設定範囲はベース感度のISO200から最高ISO25600まで。撮影メニューの「拡張ISO感度」を「ON」にすると、ISO100が利用可能となる。

ISO感度はベース感度がISO200、最高でISO25600までだ。
撮影メニューの「拡張ISO感度」を「ON」にすると、ISO100も利用できる。
拡張感度のISO100は「L」つきで表示される。ハイライト側のダイナミックレンジがやや狭くなるので白飛びには注意が必要となる。

AFは独自の空間認識技術を応用したコントラスト検出方式。理屈の上では位相差検出方式よりもスピード面で不利とされるが、パナソニックの空間認識AFは特別という印象で、ハイブリッドAFを搭載したライバル機種にも引けを取らないAFスピードを実現している。

カーソルボタン(十字キー)で選択できる測距点は7×7の49点。タッチ操作ではもっと細かく設定できる。

最高連写速度はメカシャッターおよび電子先幕シャッター時でAFS(シングルAF)モード時は最高9コマ/秒。AFC(コンティニュアスAF)モード時は最高6コマ/秒となる。スピードは決してすごくはないが、JPEGなら300枚以上、RAWやRAW+JPEGでも45枚まで連続で撮れる。動く被写体へのピントの追従性も良好だ。本格的なスポーツ撮影には物足りないかもしれないが、子どもの運動会などなら不満は感じないだろう。

連写速度の設定画面。「SH」は電子シャッター、Sサイズ固定で最高40コマ/秒。「H」は、メカシャッター/電子先幕シャッターでAF追従(AFCモード)時は6コマ/秒、ピント固定では9コマ/秒となる。
カスタムメニューに新設された「AF追従感度」の設定画面。プラス側にすると動きに対して俊敏に反応する。マイナス側にすると画面を横切る障害物に強くなる。

手ブレ補正が大幅に進化

ボディ内手ブレ補正機構の搭載も注目のポイント。補正効果は、同じ5軸補正のGX7 Mark IIのシャッター速度4段分から5段分に向上。さらにレンズ側の手ブレ補正との組み合わせで可能となる「Dual I.S.2」では、中望遠から望遠域でもシャッター速度5段分の補正効果が得られるようになったという。

なお、現時点でDual I.S.2に対応するレンズは「LUMIX G VARIO 14-140mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.」と「LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.」の2本。また、「LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.」は2017年春に対応するとアナウンスされている。

手ブレ補正の設定画面。「通常」と「流し撮り」の切り替えのみで、レンズ側またはボディ型だけオンにするといった選択はできない(レンズ側にスイッチのあるものは切り替え可能)。
動画撮影時は光学式に加えて電子式の手ブレ補正も併用することができる。ただし、「ON」時はやや画角が狭くなる。

今回試用したG 12-60mm F3.5-5.6では、望遠側がそれほど長くないこともあって劇的な変化は感じられなかったが、ファインダー像の安定感や実写画像での性能は満足できるものだった。

フォーカスブラケットや絞りブラケットを新搭載

あまり派手さはないが、ちょっとおもしろそうなのが、フォーカスブラケットやフォーカスセレクトだ。

フォーカスブラケットは、ピント位置を少しずつ変えながら複数枚撮影し、その中からもっともピントのいい1枚を選んでもらおうという機能で、ブラケット撮影の選択肢のひとつとして追加されている。

ブラケット機能の選択肢に「FOCUS」が加わり、フォーカスブラケット撮影が可能になった。
詳細設定画面では、ピントをずらす幅、撮影する枚数、ブラケットの順序を設定できる。

画素数が増えるにつれて、撮影時には気づかなかったピントのアマさがあとで問題になるケースも出てきているだけに、こういう機能も欠かせないものになっていくのかもしれない。

ただし、撮影効率は悪くなるし(三脚に固定していないとあまり意味はないこともある)、セレクトの手間もいちじるしく増えるので、常用はおすすめできない(初期設定の撮影枚数は11枚。プラスとマイナスに露出をバラすと、それだけで33枚になってしまうのだ)。と考えると、これは絶対に撮り逃したくないという限られたシーンでだけ活用するのがいいだろう。

ブラケット機能には、絞りブラケットいう項目も追加されている。これは絞り値の異なる複数枚の画像を自動的に撮影できる機能で、設定した絞り値を中心に1段ずつ変えた3枚ないし5枚、あるいはそのレンズの全絞り値(1段刻み)の撮影が可能だ。

被写界深度を変えて連続で撮れる絞りブラケットも追加された。
撮影枚数は、3枚、5枚のほか、全絞り値(1段刻み)で撮る「ALL」が選べる。

目の前のシーンに対して、どれぐらいの絞り値、ボケ具合がベストなのかを見きわめるのはとてもむずかしいので、段階撮影したものを見比べて選べるのは便利だと思う。

一方のフォーカスセレクト機能は、絞り込まずに深い被写界深度が得られることから注目されつつある機能だ。4Kフォトと同じく4K動画機能を応用したもので、ピントを移動させながら4K連写を行ない、その中から任意のピント位置の1枚を抜き出して保存したり、ピントを合わせるエリアを指定してフォーカス合成したりできる。

これはフォーカスセレクトモードでシャッターボタンを半押しした状態の画面。
フォーカスセレクトモードで撮影中の画面。ピント位置が近いほうから遠いほうに向かってピントをずらしながら連写していく。
フォーカスセレクトで撮影した画像の再生画面。カメラに近いパンダの顔に重なる測距点を選択した状態。

撮影時は、モードダイヤルをフォーカスセレクトに合わせるだけで、あとは全部カメラまかせとなる。再生時に測距点を選択することで、その部分にピントが合った画像を抜き出して保存できるほか、指定範囲合成では、ピントを合わせる範囲の両端の画像を選択することで、その2点間にピントが合った画像を合成できる。

至近距離から遠距離までピントが合った写真にできたり、被写界深度は深くしつつ背景だけはぼかすこともできるのがおもしろい。

カメラから遠いカエルの顔に重なる測距点を選択すると、その測距点でピントが合っている画像が表示される。
フォーカス合成するには「Fn1」ボタンを押して「指定範囲合成」を選び、パンダの顔で「Fn2」ボタンを押し――
次いでカエルの顔でもう一度「Fn2」ボタンを押すと――
こんな表示に変わる。緑色で表示された測距点でピントが合っている画像をすべて合成する仕組みだ。

4Kフォトもより使いやすく

30コマ/秒の高速連写が楽しめる4Kフォトの新しいオプションとして一括保存機能が加わった。従来は4K連写したシーケンス(音声なし動画として記録されている)から1枚ずつ選んで保存する必要があったが、一括保存では、指定した位置から5秒分の画像をまとめて保存することができる。

長いシーケンスの中の大事な部分を抜き出せるので、PCの大きな画面で見ながら瞬間を選びたいときなどに便利だ。個人的には、開始点と終了点を選んでその範囲を一括保存したり、あるいは指定秒数分だけ一括保存できるともっといいと思う。

新機能の4Kフォト一括保存は再生メニューから。
4Kフォト一括保存は、4Kフォト撮影したシーケンスの中から指定した位置から5秒分の画像をまとめて保存する。
一括保存したいシーンを選んで「MENU/OK」ボタンを押して――
ダイアログで「はい」を選ぶと5秒分の150枚が保存できる。
動画メニューの「記録方式」の設定画面。4K動画が撮れる「MP4」とテレビでの再生に適した「AVCHD」から選択する。
「記録方式」で「MP4」を選ぶと、30pまたは24pの4K動画が撮影できる。

まとめ

いちばんの売りはボディ内手ブレ補正機構を搭載しているところだろう。パナソニック純正でも標準から広角系の単焦点レンズは手ブレ補正機構を内蔵していない。オリンパスはボディ内手ブレ補正派だし、MFのフォクトレンダーやコーワ製のレンズは言わずもがな。それだけに、ボディ内手ブレ補正機構の魅力は大きい。フォーカスブラケットや絞りブラケット、フォーカスセレクトなどの新機能が追加されたことや、ファインダーのスペックがわずかながらアップしていることもある。

実売価格はG7の発売当初よりも数万円上がっているが、新しく追加された機能、性能を見れば納得できる。と言うより、お得感さえあると思う(現状では上位モデルのLUMIX GH4のほうが安かったりするので目移りしそうだが)。防塵・防滴性の追加やバッテリーグリップが用意されたなどもあって、ターゲットをこれまでよりも上級者にシフトしてきた感が強まっている。

気になる描写性能については、近日公開予定の実写編にてお伝えしたい。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら