新製品レビュー
パナソニックLUMIX DMC-G7(実写編)
4Kフォトで瞬間を切り取る
Reported by 北村智史(2015/6/23 07:00)
世界初のミラーレスカメラとして歴史に名を刻んだパナソニックLUMIX DMC-G1から数えて6代目となるシリーズ最新モデルがDMC-G7だ。従来の丸みを帯びたデザインを一新しただけでなく、2電子ダイヤル化するなど、操作系の大幅な向上もはかっている。フルHDの4倍の画素数を持つ4K動画や、改良された4Kフォトの搭載も注目したいポイントだ。
前回の「外観・機能編」につづいて、G7の実力をチェックする「実写編」をお届けする。
遠景の描写
レンズ付きキットは、マットブラック仕様のG 14-140mm F3.5-5.6が同梱された高倍率ズームキットのみ用意される。10倍ズームの広角端と望遠端で、遠景の描写をチェックしてみた。絞りすぎによる解像感の低下を抑える「回折補正」は「AUTO」、周辺光量低下を補正する「シェーディング補正」は「オフ」にしている(いずれも初期設定)。
広角端の画面中心部は絞り開放でも十分にシャープ。周辺部はF5.6まで絞ったほうがいい印象だ。絞り開放での周辺光量低下はあまり大きくない。絞っていくとF8から回折の影響が見えはじめるが、F11までなら不満のない画質が得られる。F16まで絞ると回折による小絞りボケが顕著になる。
望遠端のほうが周辺光量低下はやや目立つ。1段絞ったF8でまずまずのレベルにまで回復するが、完全にフラットな明るさにするにはF16まで絞る必要がある。画面中心部は絞り開放でもまずまずの解像感があるが、F8に絞ったほうが若干いいように感じる。F11に絞ると回折の影響で解像感はやや落ちるが、周辺部の画質はこのようがいい。
ISO感度
ベース感度はISO200。拡張設定でISO100も設定できるようになる。初期設定では1EVステップだが、静止画撮影メニューの「ISO感度ステップ」で1/3EVステップに変更できる。最高感度はISO25600だ。
ほかの多くのカメラと同様、低輝度側の拡張感度であるISO100は、高輝度側のダイナミックレンジがやや狭く、ISO200のカットと見比べると、白飛びが起きやすい。それ以外はISO200とほとんど変わらない印象なので、日中に明るいレンズの絞りを開いて撮るとき用と考えたほうがよさそうだ。
高感度ノイズ低減処理にともなう解像感の劣化はISO400からあらわれる。反面、白飛びはISO200よりも若干改善される。筆者個人の感覚では、ISO800までは画質劣化を気にせずに使える範囲となる。
ISO1600、3200でも、少々人工的な描写のように感じられるものの、塗り絵調になる手前で踏ん張ってくれている印象。細かいディテールをつぶさずに残しつつ、空などの平坦な部分のザラツキはしっかり抑えられている。暗いシーンで速いシャッターを切らなくてはならないような条件では使えるだろう。
4Kフォト
ハイエンドのプロ用一眼レフをはるかに上まわる30コマ/秒連写を実現する「4K」フォトは、本機の目玉となる機能だ。最新ファームウェアを適用したGH4と同様、アスペクト比が変えられるようになったほか、シャッターボタンを押しているあいだ撮影する「4K連写」、シャッターボタンを押すことで撮影開始と停止が行なえる「4K連写(S/S)」、シャッターボタンを押した1秒前から60コマ(2秒分)を記録できる「4Kプリ連写」の3モードが選択できるようになった。
60コマ/秒のNikon 1シリーズに比べると、連写スピードが半分で、フル画素で撮れないのが弱点だが、最長29分59秒まで連写しつづけられるのは大きなアドバンテージといえる。
「4Kプリ連写」モードは、動きものを撮り慣れていない人でもシャッターチャンスを逃がしにくいのが強みだが、撮像センサーを連続駆動する必要がある関係で、カメラ内の温度が上がりすぎると自動的に通常の「4K連写」に切り替わる仕様となっている(バッテリーの消耗が激しいことも予想できる)。こまめに電源を切るなり、ドライブモードを変えるなりして撮像素子を休ませてやるといいだろう。
「4Kフォト」で撮影されるのは、音声なしの4K動画で、カメラ内で任意のフレーム(コマ)を静止画として切り出す作業が必要となる。ここでは、「4Kプリ連写」で記録された動画と、切り出した60コマを掲載する(動画に記録されているよりも、切り出せる範囲のほうが狭い)。
気をつけないといけないのは、AFの動作が動画用のモードに切り替わることで、一度ピントをはずしてしまうと回復するまでに時間がかかってしまう。シーンによってはMFに切り替えたほうがストレスは少ないだろう。
・記録された動画
・切り出した静止画
4K動画
ひとつ前のモデルのDMC-G6は、動画記録が最大1,920×1,080ピクセル、60pのAVCHD Progressiveだったが、本機は3,840×2,160ピクセル/30pの4K動画に対応している。
クリエイティブ動画モード時は、露出モードやISO感度が自由に選べる。また、画づくりモードのフォトスタイルには、ダイナミックレンジを優先する「シネライクD」と、コントラストを重視したガンマ補正がはたらく「シネライクV」が用意されている。
ただし、ファイルサイズが相応に大きいので(20秒ちょっとのクリップが250MB近かったりするのだ)、記録メディアも高速かつ大容量のものを用意する必要がある。
クリエイティブコントロール
さまざまなフィルター効果が楽しめるクリエイティブコントロールは、新しく「モノクローム」「ラフモノクローム」「シルキーモノクローム」が追加されて全22種類となった。従来は、クリエイティブコントロールモードでしか利用できなかったが、本機ではP、A、S、Mモード時にも適用できるようになった。また、RAW同時記録も可能なほか、フィルター効果を適用しない画像を同時記録することもできる。
まとめ
いちばんにあげたいのは、「4Kフォト」の楽しさだ。GH4に搭載されたときには「動画のオマケ機能」だと甘く見ていたが、動きの中の一瞬をとらえる能力はものすごい。動く被写体をメインにしている人が手に入れたら、それこそ笑いが止まらなくなるのではないかと思う。フル画素で撮れないのは残念だが、800万画素あればそれなりに大きくプリントすることもできるので、作品づくりにも活用できるだろう。
操作性やAF性能が向上しているのも見逃せない。G6もファンクションレバーで露出補正ができたが、個人的には、親指側で露出補正の操作ができるのが好み(シャッターボタンから人さし指を離したくないのだ)ということもあって、2ダイヤル化は大歓迎である。フォーカスモードレバーの装備のおかげで、AFとMFを素早く切り替えられるのもありがたく感じた点。ただし、ドライブモードダイヤルのローレットについては、もう少し指が痛くない形状にして欲しいと思う。
欲をいえば、もう少し外観にコストをかけてもらいたかったところだが(強度や耐久性、防塵・防滴性の問題もあるし、見た目も大事だと思うのだ)、そこを別にすれば、メインカメラとして活躍できる実力を十分に備えている。おすすめ度は高い。
6月23日18時30分追記:記事初出時に「本機は3,840×2,160ピクセル/60pの4K動画に対応している」と記載していましたが、30pの誤りでした。該当部分を修正しました。