新製品レビュー
パナソニックLUMIX G8(実写編)
解像感と動体追従性が向上。新機能も実写でチェック!
2016年11月22日 07:00
外観・機能編につづいて、パナソニックLUMIX G8の新製品レビュー実写編をお届けする。G8はこの10月に発売されたばかりのミラーレスカメラで、一眼レフスタイルのボディに5軸手ブレ補正機構を新しく搭載。画素数や画像処理エンジンは先代のLUMIX G7と同じだが、ローパスフィルターレス化しているのが違い。連写時のAF追従性やフォーカスブラケットなどの新機能についても実写で解説する。
遠景の解像感
キットレンズのLUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.の広角端での撮影。F8のカットを掲載する。
コンパクトでワイドレンジな標準ズームとあって、画面四隅は絞ってもアマさが残るが、ローパスフィルターレス化したことも手伝って、中央部は絞り開放から文句なしにシャープな描写がえられている。
画像仕上げ機能のフォトスタイルはスタンダード。天候がもうひとつだったせいで地味な仕上がりとなっているが、色のノリはいい印象だ。
高感度
ベース感度はISO200で、感度拡張によってISO100も利用できる。個人的には、塗り絵感があまり目立たないISO1600までがなんとか常用できそうな範囲で、それ以上になるとノイズ処理によるディテールのつぶれが気になってしまう。とは言え、小サイズのプリントユースであれば、掲載したISO6400程度でも使えそうだ。
ISO12800以上は拡張感度と同等に考えたほうがよさそうで、ISO6400までと違って、発色も悪くなるしノイズも多くなる(これは最高感度のISO25600で撮ったもの)。直接比較していないので厳密なことは言えないが、高感度性能については、おおざっぱにはG7とほぼ同等と考えていいと思う。
AF・連写
カーブを曲がる路面電車をAFが追従する6コマ/秒連写でねらってみた。スピードはそれほど速くないが、撮影距離が短い分、条件としてはそれなりにしんどいシーンで、まあこれならOKかなぁと思えるカットの率が7割近くと良好な成績だった。連写中にピントをはずすこともあったが、ボケてからの回復が早いのもいい点だ。
※共通設定:DMC-G8 / LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S. / 1/125秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO320 / 絞り優先AE / 60mm
フォーカスブラケット
フォーカスブラケット撮影した画像は、超高速連写で撮影した画像やインターバル撮影した画像などと同じく、グループとしてひとまとめにして表示される。
フォーカスブラケットしたグループ画像をサムネイル表示したところ。電子ダイヤル操作で1枚を全画面表示にできる。が、カメラのモニターで見ていると、ピントのズレ具合が微妙すぎて、違いはほとんど判別できない。
1コマ目のピント位置は金属の棒の根もとあたりだが、パソコンに取り込んでからピクセル等倍表示で見比べた結果、棒の先端部にピントが合っているカットをチョイスした。1コマ目から見ると、手前側にピントをずらしていった3番目となる。
絞りブラケット
フォーカスブラケットと違って絞りブラケットはグループではなく、ばらばらの画像として表示される。これは撮影枚数を「ALL」にして撮ったので、F3.5、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22の7枚。それを露出を変えて撮っているので、再生画面はこんなふうになる。
LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.の広角端の12mmで至近距離付近にピントを合わせている。ボケの大きさでは絞り開放がベストだが、ピント位置の解像のよさと背景のボケ具合、周辺光量のバランスを考えてF5.6のカットをチョイスした。
フォーカスセレクト
フォーカスセレクトモードで撮った画像は4Kフォトと同じく、音声なしの4K動画として保存される。再生時に測距点を選択することで、その測距点でピントが合った1枚を抜き出して保存することができる。これは画面左下の塔の部分にピントが合ったカットを抜き出したもの。
こちらは画面中央の測距点を選択したもの。絞りはF5.6に制御されており、左下の塔の部分はピントがはずれている。背景もそこそこにはボケてくれている。
フォーカス合成
フォーカス合成は、フォーカスセレクト撮影した画像から被写界深度の深い画像を合成するもの。本機では、ピントが合う範囲をカメラが自動で選んでくれる「自動合成」、任意の測距点を2点選び、その範囲すべてにピントが合う「指定範囲合成」から選択する。ここでは「指定範囲合成」で、画面左下の塔と画面中央部の2点を指定した。
絞り込めば被写界深度は深くできるが、そうすると背景までくっきりしてしまう。一方、フォーカス合成した画像は、指定した2点とそのあいだにはピントが合うものの、それ以外はボケている。乱暴に言うと、被写界深度を深くしつつ、背景はボケたままにできるわけで、その点がおもしろいところだ。
4Kフォト一括保存
4Kフォトで撮った画像を再生しているところ。なにしろ30コマ/秒の超高速でノンストップに近い長時間連写が可能なおかげで、画像をチェックするのは大変な作業となってしまう。4Kフォト一括保存は、その作業をいくぶん軽減できる新機能だ。
4Kフォト一括保存で切り出した5秒分の画像をパソコンに取り込んで閲覧している状態。5秒分でも150枚にもなるのでそれなりにチェックするのは大変だが、1枚ずつカメラで保存操作をするよりは格段にらくちんだ。
ここでは車両の前後が切れずに画面におさまったカットをチョイスした。
作品
LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.の広角端の絞り開放。0.2mの最短撮影距離付近まで寄って撮った(望遠端の最短撮影距離は0.25mとわずかに変化する)。ピントが合った部分はしっかりシャープで、ボケも神経質なところがない。コンパクトサイズながらレンジが広めで、使い勝手はすこぶるいい。
このカットだけオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮っている。明るさのわりに小型軽量なので、コンパクトタイプの標準ズームと組み合わせるにはちょうどいい1本だ(今なら純正のLUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH.もあるが)。これまでは手ブレ補正がなくなる関係でオリンパスのレンズとは組み合わせづらかったが、ボディ内手ブレ補正を備えた本機なら、安心してオリンパスのレンズも活用できる。
コンパクトタイプの標準ズームの多くは広角端が28mm相当だが、風景を撮るにはちょっと画角が物足りないときもある。その点、このLUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.は24mm相当スタート。28mm相当ではおさまりが悪いシーンでもフレーミングに苦労しない。望遠も120mm相当までカバーしているので、旅行用に1本だけ持っていくのにもぴったりだ。
開放F値がひかえめとは言え、5倍ズームで小型軽量(最大径66×長さ71mm、210g)。それでいてこの写りは見事。レンズ単体では税込実売5万4,600円ほどするが、本機とのキットなら2万8,800程度で手に入る。買っておいて損はない。
天候がいまいちだったのでホワイトバランスは「晴天」で固定(オートホワイトバランスだとかなり青みの強い仕上がりになっていただろう)。こってり目に色を乗せたかったので-1EV補正している。
秋が深まる公園の樹々を見下ろすアングルで。これぐらいの画角になると、画面の隅々まで良好な画質になる。G7の新製品レビューのときとはレンズが違うので断言はできないが、やはりローパスフィルターレス化したおかげだろうか、ディテールの再現性が向上しているように思う。
まとめ
現状、マイクロフォーサーズは主流が1,600万画素だが、新しめの上級機(パナソニックLUMIX GX8、OLYMPUS PEN-FとOM-D E-M1 Mark IIの3機種)から2,000万画素化がはじまっている。フォトキナでお目見えした新フラッグシップ機のLUMIX GH5も、おそらくは2,000万画素の撮像センサーを搭載してくるだろう。
と考えると、1,600万画素のままの本機の立ち位置が微妙な感じにはなってしまうが、画素数を据え置きにする代わりにローパスフィルターレス化しているところは見逃せない(これは同じ1,600万画素のLUMIX GX7 Mark IIも同じで、今のところ、パナソニックのローパスフィルターレス機はこの2機種のみだ)。
画素数よりもキレのよさを重視するならローパスフィルターレス仕様のほうをおすすめしたくなるし、その画質をめいっぱい楽しみたいなら、「Dual I.S.2」を搭載した本機はねらいめと言える。
ただ、現時点では本機よりも上位のLUMIX GH4とボディ単体での実売価格がほぼ同じなのが気になる点。手ブレ補正機構を内蔵したこともあって、先代のG7より95g増えて505gになっていて、GH4との差が55g(いずれもバッテリーとSDカードを含む)にまで縮まっているのだ。そのあたりがちょっと悩ましいところだ。