ミニレポート
進化したSRを流し撮りで試す
(PENTAX K-3 II)
Reported by 大高隆(2015/9/3 05:55)
K-3 IIの新しいSRは「流し撮り対応のSR」と言われる。SRというのはPENTAXのボディ内手ブレ補正のことだ。
従来モデルのSRは被写体が静止していることを前提に設計されており、動く被写体を流し撮りすると、被写体をフォローするカメラの動きを手ブレとみなして誤動作を起こし、かえってブレ状態を作ってしまう欠点があった。
あらかじめ流し撮りをするとわかっている場合は、SRオフにしておけば問題ない。しかし、例えば子供やペットなどを撮ろうと狙っている時、突然相手が動き出すと先に述べた誤動作が起こり、とんでもないブレ写真になってしまう。
新しいSRは、ボディ内蔵の加速度センサーでヨー/ピッチ/ロールの3軸の動きを捉え、カメラの一定方向の動きを検知すると「流し撮り状態に入った」と判定し、作動モードを瞬時に切り替える。手持ち撮影である限り、被写体の動きに関わらず、常にSRオンのままで使えるわけだ。
本来は、一番の苦手である静止状態から突然動き出す子供のようなケースでテストすべきなのだが諸事情によりかなわず、ここでは高速動体の流し撮りで従来のSRとの違いを見ていただくことにする。
テストは、都心部を走行中の新幹線を、軌道に沿った側道からK-3 IIとK-3で撮影する方法で行なった。低速区間であり速度は100km/h程度のはずだが、1コマ目の100mくらいの距離から、急速に50m以内まで近づき、再び遠ざかって行くという動きになるので、SRにくわえてAFの追従性能も問われる。流し撮りのテストとしては、かなり難しい被写体だろう。
カメラのAF設定は、「AF.Cの1コマ目の動作」および「AF.C連続撮影中の動作」を、いずれもフォーカス優先にセットした。この設定の場合、フォーカス追従を重視するので、ドライブ設定がC-H(最高速:8.3コマ/秒)にセットされていても実際のコマ速度は低下する。
◇ ◇
K-3 IIによる流し撮り
※共通設定:smc PENTAX-DA* 60-250mm F4 [IF] SDM / 1/60秒 / F11 / ISO320 / 80mm
K-3 IIとK-3で交互に撮影していると、K-3 IIのほうがAFの追従性がよく、結果として、撮影される実効コマ速度が高いことに気づく。撮影のフィーリングも、テンポよくシャッターが切れるK-3 IIの方が、被写体の動きに合わせてフォローパンするのも楽だ。
K-3 IIと比較すると、AF追従が遅いK-3はシャッターが切れるタイミングが乱れがちになる。また、K-3ではフォローパンが乱れるとSRの不正動作が始まり、ブレの収束が遅れるのに対し、K-3 IIは収束がわずかながら早いようだ。
流し撮りの成功率は撮影者の技量の問題があるので、参考程度に見てもらうしかないが、手ブレ補正の動作という視点では、K-3で撮ったものは上下と進行方向いずれも同程度にブレているのに対し、K-3 IIの結果は、進行方向にブレることはあっても、上下はほぼ安定している。
一番難しいのは、先頭が通過して走行方向が接近から離脱に変化し、カメラを振るスピードも変わるところだ。そこでも、K-3 IIのSRは一瞬動作が乱れるものの、K-3のSRよりもはるかに早く正常に復帰して、手ブレを有効に抑えている。
この例だけで判断するのは拙速だろうが、少なくとも、お世辞にも流し撮りが上手とはいえない私でもこの程度には撮れるくらい、K-3 IIのSRは従来より進化している。
まとめ
光学式手ブレ補正を採用するメーカーのシステムは、レンズ鏡筒に手ブレ補正のオン/オフを行なうスイッチがあるのが普通で、結果的に、撮影中にオンオフすることも容易だ。対するPENTAXのSRは、コントロールパネルあるいはメニューからオン/オフを行なうのが基本で、カメラを構えたままの操作はできない。K-3以降は、この機能をRaw/fxのボタンに割り当てればワンプッシュでオン/オフも可能だが、自動で対応してくれる上に手ブレ補正も有効な新しいSRのメリットは、やはり計り知れないものがある。
加速度センサーを利用した手ブレ補正モードの自動切換自体は他社にもあるので新しいとは言えない。しかし、従来のSRで貴重なチャンスを捉えたつもりが酷いブレ写真になってしまい残念な経験したことがあるPENTAXユーザーにとって、この新しいSRは、これだけのためにK-3からK-3 IIに買い替えを検討しても不思議ではないくらい、とても重要な進歩だ。