ミニレポート
ハイレゾショットで夜景にチャレンジ!
(OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II)
Reported by 北村智史(2015/12/22 11:42)
画素数以上の高解像な描写が得られる「ハイレゾショット」は、E-M5 Mark IIの目玉機能のひとつである。一応、念のために書いておくと、ハイレゾショットとは、ボディ内手ブレ補正機構を使って半ピクセルずつ撮像センサーを移動させて8回の露光を行ない、それを合成して高精細な画像を生成する機能である。
似たような機能はPENTAX K-3 IIにも搭載されているが、あちらは4回露光で1画素単位の移動、仕上がり画像サイズは通常撮影時と同じで、解像感だけを向上させている。一方、E-M5 Mark IIのハイレゾショットは、JPEGで4,000万画素、RAWなら6,400万画素に画素数が増えるところが違っている。
が、実を言うと、個人的にはこの機能は数回試してみただけで、まじめに使ったことがない。三脚が必須で処理待ちのまどろっこしさがあるのはまだ我慢できるのだが、画面の中に動くものがあったときに、その部分の写りが好みに合わないからだ。
走る車のようなスピードのあるものがくっきりと八重に写るのはまあ仕方がないことだしあきらめもつくが、まるでスクリーントーンをへんてこに加工したかのようなパターンがあらわれるのは勘弁してもらいたい。動きのあった部分の解像が悪くなるならまだしも、こういう人工的な描写になるのは、正直なところ、気分がよくない。だから使っていないのである。
とは言え、動きのない被写体が相手であれば、目の覚めるような高画質が楽しめるのも事実であって、それを放っておくのももったいない。お安めの「M.ZUIKO DIGITAL」シリーズでも見違えるぐらいにシャープな描写が得られるし、ワンランク上の「M.ZUIKO DIGITAL PREMIUM」シリーズや、写り自慢の「M.ZUIKO DIGITAL PROシリーズなら、さらに見ごたえのある写りを披露してくれるのだ。使わないのは惜しい。
で、思い出したのが、「シャッタースピードをうんと遅くすると不自然さはなくなるよ」というようなことを、誰だったかが言ったか書いたかしていた記憶があったので、だったら年の瀬らしくイルミネーションでも撮ってみたらどうだろう、と思いいたった次第である。安直で申し訳ないが、しばらくお付き合いいただければと思う。
さて、撮った画像を見ての結論から書くと、やはり少々微妙、である。シャッタースピードが遅くなる分、通行人や自動車などの動くものが、エッジのくっきりした像になりにくいのはいい。いかにも合成しました的な連続した残像が出ないのはいいが、スクリーントーンのようなパターンは消えてくれない。これはたぶん、合成時の手法、アルゴリズムの問題だろうと思う。
それから、自動車のライトなどの光跡が淡くなるのもいまいちな点。もとがそういう機能ではないのだから、そちら寄りの仕上がりを期待するのが間違っているのだが、夜の街並みを撮るのに自動車のライトをまったく入れずに、というのは厳しい。このあたり、合成時のオプションが選べたらなぁ、と思ってしまう。
もちろん、メリットもある。ひとつは、邪魔ものが消えやすいこと。被写体周辺に人が多い場合、普通に一発撮りするのであれば、シャッタースピードを相当に遅くしないと、歩いている人がブレた像として写ってしまう。だから、通行人が途切れた瞬間を狙ってシャッターを切らないといけないわけだ。
これがハイレゾショットだと、8回シャッターを切って合成するので、撮影開始から終了までの時間が8倍に伸びる(例えば、シャッタースピードが3秒なら、露光時間の合計は「3秒×8回=24秒」になる)。つまり、シャッタースピードを3段遅くするのと同じブレ効果が得られるわけで、その分だけ残像が薄くなってくれるということである。
通常の一発撮りであれば、シャッタースピードを3段遅くするには3段よけいに絞らないといけないが(世の中にはフィルターが付けられないレンズもあるからね)、普段より3段も絞ったら回折の影響を避けるのは難しい。一方、ハイレゾショットを使えば、絞り込まずにシャッタースピードだけ遅くすることができるので、画質劣化を気にしなくていい。
ようするに、画質劣化なしで(むしろ向上する)、かつ通行人などをあまり気にせずに撮っても大丈夫。というのが、まあそれほど大きくはないが、メリットとしてあげられる。
また、高感度にちょっぴり強くなることもある。ワタシは「高感度ノイズ低減」をオフ(デフォルトの「標準」よりもノイズ量は多めになるが、ディテールのつぶれはずっと少ない)にしているので万人向けの情報ではないかもしれないが、ISO1600のディテール再現の悪くなり具合が、通常撮影よりも少ないように感じるのである。
もっとも、画質をよくするためのハイレゾショットを、わざわざノイズの増える高感度で撮るのもどうかと思うが、人どおりの多い場所で少しでも撮影時間を短くしたいようなときには活用できる。ファイルサイズが馬鹿でかいのを我慢してRAWで撮っておけば、撮影時にザラツキを減らすこともできるのだから、シーンに応じてうまく使い分ければいいだろう。
◇ ◇
1/4秒でのハイレゾショット。歩く人の足だけがスーパーナチュラルな感じで写っている。ピクセル等倍で見ると、いかにもな合成くさい規則的パターンもあらわれていて、それが気持ち悪くて使う気になれないのである。
こちらは1/1.3秒。画面右下の歩道の手前側には、もっと多くの人がいたはずだが、ほとんど消えてしまっている。規則的なパターンも少しは出ているが、これぐらいなら許容範囲に入れられる印象だ。
交差点で走る自動車のライトの光跡を狙ってみた。動くものの像が薄くなるせいで、ヘッドライトもテールライトも印象が弱い写り方になってしまっている。これもちょっと残念なところだ。
1回目の露光の分だけを抜き出して保存する「.ORI」ファイルを、純正のソフトOLYMPUS Viewer 3で現像だけしたもの。立ち止まっている人はしっかり残っている。
こちらはハイレゾショットのJPEG画像。左側の2人は見えなくなっているし、右側の3人もかなり目立たなくなっている。シャッタースピードは3秒だが、8回露光しているので、計24秒分のブレ効果が得られているわけだ。
通常撮影のISO1600。「高感度ノイズ低減」をオフにしているので、普通よりはディテールはよく出ているが、低感度で撮ったのと比べると、やはり解像の悪さは隠せない。
一方のハイレゾショット、ISO1600。それなりにノイズは出ているものの、解像感やディテールの再現は素晴らしい。風に揺れる旗に合成くささは感じるものの、これぐらいならもっと使い込んでみたいと感じられる写りだと思う。
ピクセル等倍で見ると、やはり部分部分に合成くさいパターンも見えるし、どことなくCGっぽい感じはあるものの、さすがPROシリーズという写り。
「M.ZUIKO DIGITAL PREMIUM」シリーズながら、純正レンズでは何番目かに安いM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8だが、画質はPROシリーズに迫る超お買い得品だ。
シンボルツリーの「LOVE Tree」を、テレビ塔をバックに狙ってみた。ロープが張られていて撮りやすかったけど、もっと近くから撮りたかった。
今年は雪が少なくて歩きやすいのだけれど、こんなふうにみっちり凍ってて怖い場所もあったりする。その氷のディテールもよく出ている。
冬場は休止する噴水のオブジェに電飾がほどこされている。45mm F1.8はそれにしても見事な写りである。
メインの会場から離れた場所で、街路樹の電飾をボケに使った。