ミニレポート

シグマDNレンズをコンプリートしてしまったのである

(ソニーα6000)

 どうせそうなるだろうと予想していた方も多そうな気もするが、すみません、そのとおりです。60mm19mmにつづいて、30mmもやってきたのである。もちろん、シグマの「30mm F2.8 DN」のことである。

 最初は、広角と中望遠だけあればいいかなぁと思っていたのだが、その2本を使ってみたら、やっぱりこれはそろえなきゃダメだなぁと思えてしまって、結果、こういうことになった。

 もっとも、3本の実売価格を足しても5万円代の前半である。ほんとにこれで儲かるの? と聞きたくなってしまうぐらいに安い。30mmだけなら税込で1万7,000円ちょっとである。手を出すのが簡単、というか、手を出さずにすませるほうが難しい。そのぐらいのお値段なのである。

 見た目はほかの2本と共通。最大径は3本ともほぼ同じで、長さは3本のうちでいちばん短い。といっても、パンケーキといえるほどには薄くない。APS-Cサイズのα6000に付けると、35mmフルサイズ換算で45mm相当となる。一般的な標準レンズよりも少し広めの画角で(以前は「準標準レンズ」などという呼び方があった)、開放F値は、単焦点レンズとしては暗めのF2.8である。

コンプリートしたシグマDNシリーズ。30mm F2.8 DN(手前)、19mm F2.8 DN(右)、60mm F2.8 DN(奥)

 フォーカス駆動にリニアモーターを使っている関係で、電源がオフの状態(カメラから取り外した状態を含む)では、振るとカタカタ音がする。最初のうちは、なんとなく落ち着かない感じがしたが、慣れてしまえばどうということはない。

 ファインダーをのぞいた印象(どちらかというと「ライブビュー映像を見た印象」のほうが正しいかも)は、ほどよくボケるレンズ、である。外に出て、離れて絞れば画面全体をシャープに撮れる。が、踏み込んで、寄って開ければほどほどに背景がボケてくれる。

 そのボケの、どんなものがボケているのかが分かりやすいボケ感が、ちょうどいい。そういう感じである。F1.4だとかF1.8だとかの明るいレンズだと、背景がボケきって、何がボケているんだか分からない状態になってしまうのが、F2.8だと何となくわかる。まあ、そういう感じである。

 写りはといえば、絞り開放から素晴らしくシャープである。画面の四隅は少し落ちるが、しょぼいズームのように像が崩れたり流れたりしない。見苦しさのない落ち方なので、落ちていることに気付きにくいかもしれない。1段絞ると四隅の映像がぐっと締まるので、それでようやく、絞り開放だと四隅が少しアマいのだと気付く。

 歪曲収差は弱いタル形で、ほぼ無視できるレベル。単焦点レンズはこうであって欲しいと思う。周辺光量の低下もあまり多くない。1段絞れば目立たなくなる程度だ。ついでに書くと、電子先幕シャッターがらみの露出ムラは、このレンズでも発生しないようだ。これもうれしいポイントである。

 まあ、優等生的すぎて面白みには欠けるかもしれないが、2万円を切る価格でこの写りはすごい。素直によく写るレンズを探しているひとにはおすすめしたい1本だ。

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7枚羽根の円形絞りを採用していて、1段絞ったあたりでは、きれいに丸い点光源ボケが楽しめる。30mm F2.8 DN / 1/100秒 / F4 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
絞りは開放だが、ピントが合った部分だけはやたらとシャープ。周辺光量もあまり落ちてない。30mm F2.8 DN / 1/640秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
歪曲収差を見ようと思って撮ったカット。わずかにタル形だが、気になるほどの量ではない。30mm F2.8 DN / 1/125秒 / F5.6 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
何がボケているのかが分かりやすいボケ方。素直であつかいやすい。30mm F2.8 DN / 1/200秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
ちょっと絞り気味のF7.1。四隅までばっちりシャープである。30mm F2.8 DN / 1/640秒 / F7 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
チルトモニターを利用して、地面すれすれから。奥行き感が自然。30mm F2.8 DN / 1/160秒 / F3.2 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
買ったばかりのころは、水準器がないのが気に食わなかったが、ないのに慣れると意外に困らないものだったりする。30mm F2.8 DN / 1/200秒 / F4 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
絞りを開けても絞っても描写のクセが変わらない優等生的な写りなので、味を求める人には物足りないんじゃないかと思う。30mm F2.8 DN / 1/320秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm
画面中心部は絞り開放から十分にシャープだけれど、隅々まできっちり撮りたければF5.6あたりがベターだ。30mm F2.8 DN / 1/640秒 / F5.6 / ISO100 / 絞り優先AE / 30mm

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 ところで、この30mmのように、ほどよくボケを楽しめるレンズで起きがちなのが、AF撮影時にピントが抜けてしまう現象だ。これは、ピントを合わせたい被写体よりも測距点の枠が大きい場合によく起きる。

 おおざっぱには、カメラは、測距点の枠の中で、ピントを合わせやすい部分にピントを合わせるだけなので、それがユーザーがピントを合わせたい場所なのかどうかについては、実はどうでもいい。主要被写体だろうが背景だろうが、とにかくピントが合ってればいいのである。

 だから、被写体がある程度小さい条件では、主要被写体ではなしに、背景にピントが合ってしまうことがあるのだ。この問題は、一眼レフの位相差検出AFでも起こりうるのだが(実際のところは、測距点が十分に小さいので、問題になりにくい)、ミラーレスカメラの測距点はそれよりはるかに大きいために要注意ポイントになっている。

 で、これを防ぐのに効果的なのが、測距点のサイズを小さくすることだ。測距点を小さくすれば、測距点の枠の中に背景が入り込みにくくなる。その分、狙った被写体にちゃんとピントが合う確率がアップするわけだ。

 α6000の場合、フレキシブルスポットAF(自由に位置を変えられる1点測距AF)時に、測距点のサイズを「S」「M」「L」の3サイズから選択できる(従来は「L」サイズで固定だった)。「S」サイズと「L」サイズとで使い比べてみると、「S」サイズは小さな被写体のときに、ピントが背景に抜ける現象が明らかに少なくなった。反面、ピント合わせで迷うような動作が多くなる。スピード重視なら「L」サイズが有利で、そのあたりもうまく使い分けるのがよさそうだ。

1点測距のフレキシブルスポットAFモードでは、測距点の枠のサイズを3段階に変えられる
「L」サイズの枠はこの大きさ。ピント合わせは速いが、被写体が小さいと背景にピントが抜けてしまうことがある
こちらは「M」サイズ。AFスピードも、ピントの抜けにくさも「L」と「S」の中間
「S」サイズだとかなりピンポイント的。小さな被写体にも対応可能で、ピントが背景に合ってしまう現象に悩んでいる人は試してみて欲しい

(北村智史)