ミニレポート
シグマDNレンズをコンプリートしてしまったのである
(ソニーα6000)
Reported by 北村智史(2014/8/6 08:00)
どうせそうなるだろうと予想していた方も多そうな気もするが、すみません、そのとおりです。60mmと19mmにつづいて、30mmもやってきたのである。もちろん、シグマの「30mm F2.8 DN」のことである。
最初は、広角と中望遠だけあればいいかなぁと思っていたのだが、その2本を使ってみたら、やっぱりこれはそろえなきゃダメだなぁと思えてしまって、結果、こういうことになった。
もっとも、3本の実売価格を足しても5万円代の前半である。ほんとにこれで儲かるの? と聞きたくなってしまうぐらいに安い。30mmだけなら税込で1万7,000円ちょっとである。手を出すのが簡単、というか、手を出さずにすませるほうが難しい。そのぐらいのお値段なのである。
見た目はほかの2本と共通。最大径は3本ともほぼ同じで、長さは3本のうちでいちばん短い。といっても、パンケーキといえるほどには薄くない。APS-Cサイズのα6000に付けると、35mmフルサイズ換算で45mm相当となる。一般的な標準レンズよりも少し広めの画角で(以前は「準標準レンズ」などという呼び方があった)、開放F値は、単焦点レンズとしては暗めのF2.8である。
フォーカス駆動にリニアモーターを使っている関係で、電源がオフの状態(カメラから取り外した状態を含む)では、振るとカタカタ音がする。最初のうちは、なんとなく落ち着かない感じがしたが、慣れてしまえばどうということはない。
ファインダーをのぞいた印象(どちらかというと「ライブビュー映像を見た印象」のほうが正しいかも)は、ほどよくボケるレンズ、である。外に出て、離れて絞れば画面全体をシャープに撮れる。が、踏み込んで、寄って開ければほどほどに背景がボケてくれる。
そのボケの、どんなものがボケているのかが分かりやすいボケ感が、ちょうどいい。そういう感じである。F1.4だとかF1.8だとかの明るいレンズだと、背景がボケきって、何がボケているんだか分からない状態になってしまうのが、F2.8だと何となくわかる。まあ、そういう感じである。
写りはといえば、絞り開放から素晴らしくシャープである。画面の四隅は少し落ちるが、しょぼいズームのように像が崩れたり流れたりしない。見苦しさのない落ち方なので、落ちていることに気付きにくいかもしれない。1段絞ると四隅の映像がぐっと締まるので、それでようやく、絞り開放だと四隅が少しアマいのだと気付く。
歪曲収差は弱いタル形で、ほぼ無視できるレベル。単焦点レンズはこうであって欲しいと思う。周辺光量の低下もあまり多くない。1段絞れば目立たなくなる程度だ。ついでに書くと、電子先幕シャッターがらみの露出ムラは、このレンズでも発生しないようだ。これもうれしいポイントである。
まあ、優等生的すぎて面白みには欠けるかもしれないが、2万円を切る価格でこの写りはすごい。素直によく写るレンズを探しているひとにはおすすめしたい1本だ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
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ところで、この30mmのように、ほどよくボケを楽しめるレンズで起きがちなのが、AF撮影時にピントが抜けてしまう現象だ。これは、ピントを合わせたい被写体よりも測距点の枠が大きい場合によく起きる。
おおざっぱには、カメラは、測距点の枠の中で、ピントを合わせやすい部分にピントを合わせるだけなので、それがユーザーがピントを合わせたい場所なのかどうかについては、実はどうでもいい。主要被写体だろうが背景だろうが、とにかくピントが合ってればいいのである。
だから、被写体がある程度小さい条件では、主要被写体ではなしに、背景にピントが合ってしまうことがあるのだ。この問題は、一眼レフの位相差検出AFでも起こりうるのだが(実際のところは、測距点が十分に小さいので、問題になりにくい)、ミラーレスカメラの測距点はそれよりはるかに大きいために要注意ポイントになっている。
で、これを防ぐのに効果的なのが、測距点のサイズを小さくすることだ。測距点を小さくすれば、測距点の枠の中に背景が入り込みにくくなる。その分、狙った被写体にちゃんとピントが合う確率がアップするわけだ。
α6000の場合、フレキシブルスポットAF(自由に位置を変えられる1点測距AF)時に、測距点のサイズを「S」「M」「L」の3サイズから選択できる(従来は「L」サイズで固定だった)。「S」サイズと「L」サイズとで使い比べてみると、「S」サイズは小さな被写体のときに、ピントが背景に抜ける現象が明らかに少なくなった。反面、ピント合わせで迷うような動作が多くなる。スピード重視なら「L」サイズが有利で、そのあたりもうまく使い分けるのがよさそうだ。