気になるデジカメ長期リアルタイムレポート
キヤノンEOS M【第7回】
AF高速化の最新ファームウェアを試してみた
(2013/7/5 00:00)
かねてからウワサになっていたAF高速化のファームウェアが公開されたので、早速試してみた。キヤノンのWebサイトによると、新ファームの改善ポイントは「ワンショットAF(シングルAF)時の合焦速度の向上」、「EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMへの対応」、「外国語の誤記の修正」の3点だが、3番目のは筆者には関係ないし、EF-M 11-22mmもまだ発売前なので、実質、AF高速化オンリーである。
どれぐらい高速化されるのかというと、ライブ多点AF時に最大約2.3倍、ライブ1点AF時には約1.3倍とのこと(EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMの望遠端)。「サーボAF時の合焦速度は変更ありません」と書かれているのは、つまり、AF駆動のスピードが上がるのではなくて、制御の無駄を減らして時間短縮をはかるということなのだろう。
とは言え、もともとがとてもゆったりまったりなEOS Mのライブ多点AFを常用している人がそんなにいるとも思えない。ライブ1点AFのほうがずっと速いのが分かっているのに、わざわざ遅いほうを使いたがる人もいないだろう。となると、新ファームの効果は“従来比約1.3倍”。けっこう微妙である。
で、ファームアップ前とどれぐらい変わるのかを比べられるように動画を撮っておいたのだが、それを見てもやっぱり微妙である。
ライブ多点AF/ EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM(望遠端)
ライブ1点AF / EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM(望遠端)
たしかに、ライブ多点AFのほうは、劇的に速くなっている。旧ファームでは、シャッターボタンを半押ししてからレンズが2回うろうろしてからピントが合う。遠距離にピントが合っている状態から近距離にピントを合わせるときは1回ですむようだが、近距離から遠距離に振ると、必ず2回うろうろする。新ファームだと、それが減る。と言うか、うろうろはしているのだが、その振幅が狭くなっている。1回目の“うろ”の幅も小さいが、2回目の“うろ”は気をつけてみていないと見落としそうなぐらいに小さい。結果、ものすごく速くなっているように見えるが、もとが遅すぎただけとも言える。まあ、実用的なスピードになってくれたのだから、これはこれで良しとしましょうよって感じである。
一方、ライブ1点AFは、新旧の差があまりない。動画を見比べると、新ファームのほうがスムーズにピントが合っている。旧ファームのは「すー……ぅっ」みたいな感じなのに対して、新ファームのは「すうっ」と合う。そういう違いである。速くはなったけれど、先行他社のAFに追いつけたわけではない。不満は軽減されたけれど、解消されたわけではない。そういったあたりが微妙なのである。
こんなことを書くと、キヤノンの人に嫌な顔をされそうな気もしないではないが、3本目のEF-Mレンズ(EF-M 11-22mm)が広角ズームなのは、望遠ズームだとAFがきついからじゃないかって思っている。ほんとは望遠ズームを先に出したかったんだけれど、AFが速くないから後回しにしたんじゃないか、ってね。邪推ですけどね。筆者の脳内では、望遠ズームは、AFが強化された新型ボディといっしょに発表されて、ダブルズームキットなんかも登場する。EOS Mにも使えるが、AFは遅いので勘弁してね。みたいな話になるに違いない。ということになっている。ま、妄想ですけどね。
それはさておき、見逃せない点もしっかりある。マウントアダプター「EF-EOS M」を使ってEFレンズやEF-Sレンズを使用する場合の話で、こちらはちょっと感動できるかもしれない。
ライブ多点AF / EF-S 60mm F2.8 Macro USM
ライブ1点AF / EF-S 60mm F2.8 Macro USM
手もとにあるEF/EF-SレンズがEF-S 60mm F2.8 Macro USMだけなのでどのレンズでもばっちりかどうかは分からないが、少なくともEF-S 60mm F2.8 Macro USMにかぎっては、劇的どころではない改善ぶりである。これももちろん、旧ファームのがめちゃ遅なだけで、ライブ多点AFなんかは、まじめな話、シャッターボタンを半押ししてからピントが合うまでのあいだに寝そうになってしまうぐらいに時間がかかるのだが、新ファームにしたら、それこそ生まれ変わったように実用的なスピードになってくれた。
ライブ1点でも、旧ファームだと「よっ、こいっ、しょーっ」でようやくピントが合う感じなのに、新ファームは「よいしょ」ぐらいで終わる。すごいです。あまりの改善ぶりに、思わず「ををっ!?」と声を上げてしまって、動画を撮りなおしたのはここだけの話。EF-S 60mmは、インナーフォーカス方式を採用しているとは言え、マクロレンズなだけに、それほどAFは速くない。そのEF-S 60mmでそれなりのスピードアップが体感できるのだから、ほかのレンズはもっとすごい感動が待ち受けているかもしれない。もしかしたら、EOS Mを一眼レフのサブとして使っている人がいちばんおいしい思いをするファームアップだったんじゃないかって思う。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ただし、AF以上に気になるレスポンスについては、これも予想どおりではあるのだが、まるっきりそのまんまである。個人的には、シャッターを切ったあとのブラックアウトが長いのが嫌いで(JPEGよりもRAWのほうが長めだったりすることにさっき気づいた)、AFの問題よりもずっと重要だと思っているのだが、新ファームでも相変わらず長い。
RAW+JPEGで3コマまでしか連写できないのも気になるが、色収差補正をオンにすると2コマになっちゃうのもどうにかしてもらいたい。ニコンなんか色収差補正はオンオフの切り替えがないぐらいに当たり前に搭載してるんだから、「高度な演算処理が必要なので時間がかかるのです」なんて言い訳は通用しない。3コマのブラケット連写がすんなり撮れないというのはいただけない。
というあたりも含めて、もうちょっと頑張ってもらいたいと思うところではあるのだが、とりあえず、AFが速くなったEF-S 60mmでパチパチやってきたわけであります。
とか書いていたら、「EOS 70D」発表のニュース。デュアルピクセルCMOS AFというすんごいのが搭載されているらしいのだけれど、EOS Mの後継モデルにも搭載されるんでしょうかね。そのあたりもちと気になるところである。